プン助が交通事故…その時私は卓球に夢中だった

 

 

プン助が交通事故に遭った。

 

私は、何も知らずに近所の体育館で卓球をしていた。

 

私の、カットやツッツキが下手くそだと、心配してくださった、素晴らしく卓球が上手なご夫婦が、アドバイスをしてくれ、とても充実した練習をしていたのだった。

さあ、帰るぞと、身支度を整え、卓球のお仲間の一人と話しながら、チラっとスマホを見ると、旦那さんから数件の着信とLINE

何事か?とギョッとする。

 

その時点で、最後の連絡から30分以上経っていた。

 

「プン助」「救急車」「事故」「病院」

 

などという文字が目に飛び込んできて、読み進めるのも恐ろしく、すぐに旦那さんに電話をかけた。

 

「〇〇病院にいるけれど、今からタクシーでもいいから来られる?保健証持って来られる?」

 

出た途端に、切迫した口調で話す旦那さん。

 

病院に行くことも、保険証を持って行くことも全然可能だ。だが、それよりも容体が気になる。プン助は無事なのか?

「足が痛いって言ってるけど、大丈夫。骨は折れてるかもしれないから、これから調べる…」

 

状況がよく飲み込めない。

 

旦那さんは昼頃、仕事へ行ったはずだった。私が卓球へ出かけた14時半ころにはまだ、プン助は家にいた。「もうちょっとしたら遊びに行く~」と言っていたが、身じろぎもせずに動画鑑賞に耽っていたので、このまま見続けて遊びに行けないのではないか?と、思っていたくらいだった。

そうか、あれから遊びに出たのか・・・。

え?でも何故、旦那さんは今、プン助と一緒なのだろう?事故に遭った時は既に一緒にいたのか?それとも、事故に遭った後、誰かが旦那さんに連絡して駆けつけたのか?事故に遭った場所は、プン助の友達の住んでいるマンション前だった。そのマンションには、保育園や学校が一緒の友達が沢山住んでいるし、役員などで一緒だったママ友っぽい人も沢山住んでいる。

事故を目撃して、誰かが連絡をくれるとしたら、どう考えても私に来るのが普通なのではなかろうか・・・。何故旦那さんに?

いや、そんなことはどうでもいい。

骨折してるとかしてないとかの方が心配だ。頭だって打っているかもしれない。

 

「とにかくすぐ行くよ」

 

と、伝えると、

「あ、やっぱ来なくていいや。交通事故だから、保険証は今はいいって。家で待ってて。充電切れそうだから、切るね」

と、電話を切られてしまった。

 

気になる。気になるが、私が病院に行くと、今塾に行っているはずのニンタマが家へ入れなくなる。ニンタマに晩御飯を食べさせたりもしないといけない。

 

呆然としながら、とりあえず八百屋へ食材を買いに行く。

適当な野菜を買って、帰宅。

帰って野菜を冷蔵庫へ入れようとしたら、私は干しイモを3パックも買っていた。スティックタイプの干し芋。ケーキのようにおいしいと書いてある干し芋。当店お勧め品!!!と、書かれた干し芋。

干し芋は好きだが、いくらなんでも買いすぎだろう。

 

ご飯を作らなければと思いながらも、心配で作る気にならず、帰って来たニンタマと、干し芋を食べながら、プン助、大丈夫かなぁ?などと話をした。

 

すると、旦那さんからLINE

 

「加害者の人が、明日上司と家へお詫びに行きたいって言っているのだけど、俺は手続きで忙しいから、その人に電話してくれないかな?」

 

加害者の方の電話番号が書いてあった。

 

困惑。

 

プン助の状況がわからないまま、こちらから加害者の人に電話をかけて、一体どんなスタンスで何を話せばいいのか?しかも上司って?

あくまでも勝手な推測だが、

「お宅のお子さんが突然飛び出してきて、避けようがなくて…。でも、いくら飛び出しだとは言え、お怪我をさせてしまったのは、本当に申し訳ありません」

 

みたいな事を言われるのではないだろうか?はっきりはわからないが、プン助が飛び出した可能性は極めて高い。

 

だからと言って、プン助の話も聞かずに、飛び出し前提で話をするのは、イヤだった。

こちらの応対次第では事実の確認もないまま、飛び出したということが既成事実になってしまうかもしれない。

大体、プン助が飛び出しであったとしても、何故こちらから電話をしなければならないのだ…。そして、家に来るとは?菓子折り等を持って、挨拶に来るつもりかもしれないが、玄関先で挨拶だけして返って貰う訳にも行かないだろう。

家へ入れて、少なくとも30分くらいは話をしなければならないだろう・・・。

お茶とか、お菓子とか、出すのか?

出すのも変な気がするが、出さないで、出した方がいいのかな?いや、出さなくていいよね…などとモヤモヤしながら、30分くらい通すのも精神的にキツい。

 

そして、プン助が元気そうだったら、「良かった、大したことなくて」とか、言われてしまうかもしれない。

とても気が進まない。

 

とりあえず、母に電話。

私が小学1年生の時に交通事故に遭ったこともあり、当時の母は、まだ30代前半でちゃんとした対応が出来なかった・・・と、今でも悔いているのだ。まず、母の意見を聞こう。

 

「まず、相手が言ったことすべてに、ちゃんとした返事をしてはダメだよ」

 

とのことだった。

 

「飛び出しでした」と、言われたとして、「そうだったんですね」とか、答えてはならず、「はぁ」「ああ」みたいな感じで、相手の言ったことに納得した態度を取るなということなのかな?

「お茶なんか出さなくていい」

とも、言っていた。

言われていることは分かるが、基本へこへこして愛想がよくなってしまうタイプの私は、会って話してしまったが最後、相手の言ったことを納得したような対応をしてしまい、仲の良い雰囲気まで漂わせてしまう可能性がある。毅然として、相手の言う事すべてに、納得した返事をしない…なんてできるのだろうか。

私が自信なさそうにしていると、「Mちゃんに電話して聞いてみるといいよ」と、母。

 

母の従妹の娘であり、私の双従妹のMちゃんは、3人子供がいて、子育ての大先輩。しかも息子のR君は保険の仕事をしている。Mちゃんに電話をすると、すぐにR君に連絡を取ってくれて、返事をくれた。

事故証明などが取れていれば、加害者の人には会わなくていいとのことだった。

「こんな時期ですし、わざわざお時間取って頂かなくても、後は保険会社の方とやりとりをします…で大丈夫だよ」

とのことだった。

「相手に家に来られたって、友香だって時間とられて大変じゃん。それに、上司と来るって、きっと配送とかの仕事で車乗ってて、その上司が来るってことでしょ?事故起こすと保険料が上がるの嫌がって、治療費自費で出しますからって保険でやらないように頼みに来る可能性もあるかもしれないよ!」

 

実は、私の子供時代の事故の時にも、加害者のおじさんが、保険料が高くなるから、と言って、保険を使わない交渉をしてきたらしい。私は3か月後、急な頭痛と首に異変が起きて、むち打ちと診断され、5日程入院したのだが、その際、加害者の方に事故との因果関係はわからない…と、言い張られて、自腹で入院費用を払うハメになったと、母に聞いた。あの時、世間知らずだったから、全部加害者の言い分を「はいはい」と聞いてしまって、本当にバカだった、と、母。

 

そうか、そんな海千山千の交渉とかやられたら、私なんて、一溜りもないやもしれん。

いよいよ会う訳にはいかん。

 

と、知らない番号から着信が来た。

 

旦那さんのLINEを確認してみると、加害者の方の電話番号と同じだった。

とりあえず、その時には出ず、心の準備が出来るまで待って、こちらからかけ直す。

 

「この度は大切な息子さんに怪我をさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

 

加害者という認識が無ければ、いかにも人のよいおばちゃんと言った感じ。

母のアドバイスに従って、「はぁ」「ええ」「ああ」という曖昧な返事を返しながら、会話。

「いえね、やっぱり男のお子さんだから、わーって飛び出してきちゃうんですよね」

 

出た…!

「飛び出し」というwordが。

緊張が走る。

「はぁ」

「ブロック塀のところから、急にわーって飛び出してきたから、ゆっくり走ってたんですけど、20キロくらいは出てたかな…さすがによけきれなくて…」

 

「急にわーっと飛び出し」「20キロ」「よけきれなくて」

 

本当にそうかもしれないけれど、これらの言葉は全て、「自分は悪くないんです。悪い

のは、そちらのお子さんなんです」と、伝えようとするword。危険だ・・・。加害者の方が実際にそう思っていたとしても、このシチュエーションで、やりとりの序章に、被害者の親に、こういう事をわーっとまくし立てるように言う・・・というのは、どうなのだろう。

 

この人とは、会ってはいけない気がする。きっと、プン助には違う言い分があったとしても、自分の感じたことだけで押し通すタイプ…なのでは?

実際に対面なんかしたら、これらの言葉を連発して、それを既成事実にされてしまう。

 

「明日の午後、上司が、一緒に挨拶に行きたいって言ってるんですけど、いいでしょうか?」

 

一人来るだけでも、気が重いのに、上司も一緒?

明日は一日旦那さんは稽古で不在。

旦那さんのいない状況で、家という密室で、加害者のおばさんとその上司という二人に、飛び出し前提で話をされるのは、きつい気がする。

そんな不安とは別に、どんな人なのか確認したい気持ちもあった。ちゃんと対応できる自信があれば、加害者の方には、やはり会ったほうがいいには違いない。

「今は、まだ息子の顔も見てないですし、私としても状況が把握できていないので、まずは息子の様子を見てから、考えたいです」

と、電話を切った。

 

夕食を終えてしばらくしたら、プン助と旦那さんが戻って来た。

旦那さんとは、何度かLINEで連絡を取っていたが、充電が切れることを恐れて、プン助の状況は殆ど伝えられていなかった。

ニヤニヤしながらも決まり悪そうなプン助の様子を見て、一安心したが、腕やら肘やら足の小指を負傷していて、頭頂部からも血が滲んでいた。比較的綺麗だった服は汚れていて、衿は裂け目が入り、靴下には穴だらけになっていた。

 

ぶつかった衝撃で靴が脱げたらしい。

「バーンって当たって、ポーンと飛んでゴロゴロって転がった」

 

と、言っていたが、ボロボロの姿を見て、かなりの衝撃が合った事を実感した。

 

ポーンと飛んだ時に当たり所が悪かったら・・・もしくは、飛ばないで車輪に巻き込まれたら・・・!

大分ボロボロだけど、よくこれで済んだな…と、思ったら急に恐ろしさがこみあげてきて、とりあえずプン助の実体を確かめるように抱きしめた。

 

「もう~~~~!気を付けてよ~~~~~!よかったね~、無事で~~~~」

 

急に泣けてきて、自分でもびっくりした。

 

プン助に話を聞くと、やはり、飛び出しと思われても仕方がない事はしていたようだ。

 

「一台車が来たから、それを待って、一台行ったからもう、来ないだろうって、渡ろうとしたら、二台目が来てびっくりした。普通あそこは、一台来たら、二台目は来ないんだよ」

 

一台来たら、二台目が来ないという説に何の根拠もないのだが、プン助の経験値ではもう渡ってヨシ!と、思ったようだ。

元々、思い込みが強いところがある。

「二台目来ないって思っても、ちゃんと見て確認して!」

 

いつもはこういう注意に対して、一切聞く耳を持たないプン助だが、さすがに今回は「わかったよ」

と、素直だった。

 

加害者の人は、警察と救急車を呼んでから、プン助に、

「もう飛び出しちゃダメだよ」

と、言ったという。

 

子どもの頃、少しでも車にぶつかりそうになると、いつも車に乗っている大人に

「どこ見てるんだ!」「危ないじゃないか」

と、怒られ、自分の命の危険よりも、怒られることの方が怖かった。

だから、自分が小学校1年生で交通事故に遭った時にも、また怒られる!という恐ろしさから、「ごめんなさい!」

と、謝ってしまったことを思い出した。

だが、車から出て来た加害者のおじさんは、私に向かって怒ることはなかった。ホッとした。とはいえ、その後、事故で集まって来た人や、警察や救急の人に対して、おじさんは「飛び出しです!」と、何度も何度も話していたのだった。

 

「そうか・・・今のコレが、飛び出しってヤツなのか・・・」

 

と、思いつつもなんとなく、違和感を覚えた。

私が謝ったのは、怒られる・・・という反射的な恐怖心からであり、自分が飛び出したから・・・という意識ではなかったのだ。

誰も私に、事情を聞いたりはしなかった。

事故に遭う前、私はポリバルーンという、ストローの先にセメダインみたいなものを付けて風船のように膨らます代物にハマっていて、近所のお店に買いに行こうと、手に300円を握りしめて、信号のない二車線の道路を渡ろうとしていたのだった。

右見て、左見て、右見て・・・ヨシ!大丈夫…!と、判断して道を渡ったのだが、半分渡り切ったところで、左から車が走って来たのだった。

車も走っていたが、私も走っていた。止まるか、なんとか車にぶつかる前に、走り抜けるか・・・走り抜けられるのか?無理か…?いや、頑張ればなんとか走り抜けられるかも…!

瞬時に色々な考えが頭を巡ったが、私は車より先に走り抜けることを選択したのだった。そして、ものすごい頑張って走ったが、走り抜けることはできずに車にぶつかった。膝にものすごい衝撃があり、そのまま宙に浮かんだ。

 

なんとなく交通事故=死みたいなイメージがあり、

 

「ああ、この世とおさらばなんだな…」

 

と、思いながら、飛んでいる時間がゆっくりに感じられた。

 

当時、「宇宙戦艦ヤマト」のアニメが放送されていたので、その影響なのか、私の頭の中で、

「さらばじゃ・・・」

 

という言葉が浮かんだ。

 

だが、この世とおさらばにはならず、膝から落下した。生きていることに驚いたが、手に握りしめていた300円は、全てなくなっていた。

 

後で救急車で病院に運ばれて検査したら、私の頭には三つのコブが出来ていた。

打った記憶は一つもないのだが、落下した時に転がったりして、ぶつけたようだ。

 

そんな風に記憶は曖昧だが、車にぶつかる前に走り抜けられるかもしれない・・・と、懸命に走ったことは加害者から見れば、飛び出しかもしれないが、私にとっては、なんとか生き伸びようとした選択だった。そもそも「飛び出し」という言葉は、車側から見た言葉でしかない。6年しか生きていない浅い経験値で、生き伸びようと自分なりに頑張ったつもりなのだが、「この子は飛び出しだから、この子が悪いんだ」と、鬼の首を取ったみたいに言われたことに関しては、今でも釈然としない気持ちが残っている。

 

プン助だって、明らかに不注意なタイプかもしれないが、あの道は、マンションが沢山建っている道沿いで、仕事などでよく通るのであれば、子ども通りが多く、あそこが危ないという事は分かっているはずだ。

 

「もう飛び出しちゃダメだよ」と言ったのが、おまわりさんや、救急隊員だったら、別に気にならないが、加害者の人が跳ねた直後に言うべきではないのではないか?

 

私が、感じた思いを旦那さんに話すと、

 

「そうかぁ~、俺達、帰りに明日、加害者の人が来たら、飛び出してごめんなさいって謝らないとな~、なんて話してたんだよ。そうかぁ、それ、ヤバかったかのかぁ~。聞いといてよかったなぁ~」

 

と、プン助と驚いたように笑い合っていた。

 

困惑。

 

え?なんだろう、そのやたらと無垢な反応は・・・。

 

いや、もしかしたら、私が根性悪すぎるのか?いやいやいや、私だって十分世間的には御しやすい部類の人間なのだ・・・。

それにしても、旦那さんとプン助は呑気すぎるのではないだろうか?

いや、本当はこの呑気さは素晴らしいのかもしれない。

世の中の人が皆、こんなに呑気だったら、それに越したことはないのだ。

だが・・・世の中には、隙あらば自分は悪くない、相手が悪い・・・と、あの手この手を使って、呑気な人をいいようにする人達が山ほどいるのだ。

 

わからないが、あのおばさんの「形式上、自分は加害者だけど、本当は被害者なの」みたいな謎の押しの強さに押し切られでもしたら・・・。

 

ダメだ・・・!プン助が、「飛び出しちゃってごめんなさい」なんて、言ってしまったら、私は一体どう対応すればいいのだ。

その上、お菓子なんか頂いてしまったりしたら・・・。

 

「やった、車にぶつかったお陰で儲けた!」などと、喜ぶプン助の姿が目に浮かぶ。

そんなプン助をみて、加害者のおばさんと上司の人達も、和やかに笑ったりする光景も容易に想像できてしまう。

 

無理だ…!加害者の人と上司の人の訪問はやはり、断らねば・・・。

 

再び電話をかける。

「色々考えたのですが、こんなご時世ですし、お詫びをしたい・・・というお気持ちだけで、十分なので、わざわざ来ていただかなくても大丈夫です」

と、訪問を断った。すると・・・

「ああ・・・私はいいんですけど、上司が・・・上司がどうしても、お詫びに行きたいって言っていて・・・あの・・・私が言ってもだめなんで、直接上司に電話して、そう言ってもらえませんか?」

最初、何を言われているのかちょっと意味がわからなかった。

 

「え?私が直接電話をするんですか?」

 

「いえね、ほら、私が伝えても、お詫びに行かないとって聞いてくれないと思うんですよ~」

スーパーの買った商品を詰める台の隣などで「今日、寒くなるって聞いてたけど、暑いわよね~」と、いきなり天気の話などをしてくる気さくなおばさんがよくいるのだが、そんな距離感だ。

やっぱり、この人、ちょっと変わっているのではないだろうか・・・?それとも、直接上司に話しても聞いて貰えない程、ブラックな会社なのだろうか・・・?

「上司の連絡先教えるんで、お宅さまから、連絡して貰えませんか?」

私が連絡するのか…え?この人にも上司にも会ったことないのに?この人は上司とはよく顔を合わせているだろうに?変な気がする。変な気がするが・・・この人とやりとりをしている方が精神的にちょっとキツイ。

「わかりました。私の方から上司の方に電話します」

 

速攻上司に電話を掛ける。

課長さん・・・ということで、応対も先ほどのおばさんよりも、社会的にきちんとしていた。実際のことはわからないが、人間的にも誠意がある感じの応対。

「ウチの社員が大切なお子様を怪我させてしまいまして、誠に申し訳ありませんでした。直接出向いて、お詫びに伺いだいのですが・・・」

こちらが恐縮するぐらい、心のこもった口調で、訪問したい旨をつげられたのだが、

「こんなご時世ですし・・・」

と、先ほど加害者のおばさんに話したのと同じことを告げ、訪問を断ると、「それはコロナで・・・ってことですか?」

と聞かれた。

「はい。あまり、色々な人に会わないようにもしてるんです。本当、お気持ちだけで、後は保険会社と直接やりとりをしますので…」

と、伝えると、課長さんは少しの間、粘っていたが、なんとか訪問の方は諦めてくれた。

血液検査の検査キットなどの運搬をしている業者らしく、事故のあった通りは、いつも使う道だったという。

「飛び出してきたので、よけきれなかった」と言われたことを話すと、

「いや、それは運転側の責任です」

と、課長さん。

現金なもので、そんな風に言われると、避けるのも中々難しいよな・・・自分が運転している側だったら、絶対無理かも?などと、思えたりするのだった。

今後は保険会社を通して、やりとりをしていくということになり、示談に持って行かれるような気配もなく、とりあえずひと段落。

 

頭を打ったことで、急な異変が無いかしばらく様子を見守る必要はあるが、ホッとした。

肉が見えているような傷もあるので、毎日水洗いして、ワセリンを塗って、傷が乾かないタイプの絆創膏を張る手当が必要とのことで、そちらもちょっと不安が残る。

 

落ち着いてから、仕事に出かけていたはずの旦那さんが、事故現場からプン助の載せられた救急車に付き添うことになった経緯を聞いた。

仕事が終わってもうすぐ家に着く・・・という時に、プン助のキッズ携帯を使って警察の人から連絡が来た・・・とのことだった。警察の人が、キッズ携帯で「パパ」という名前を見つけ、かけて来たらしい。

 

雪が降った後だったので、骨折の人などが多く、中々搬送先が見つからず、30分くらい事故現場にとどまっていた間、旦那さんは車中から私に電話をかけたり、LINEを送ったりしてしたらしい。

救急隊員が、「お母さんは・・・いらっしゃらないのですか?」と、聞いた時、やっと搬送先が決まり、私が卓球をしていた体育館前を通っていたらしい。

「多分、あそこで卓球してると思うんですよ~」

と、体育館を指すと、救急隊員の人は

「あ…そうなんですか~」

と、遠ざかって行く体育館を見ながら、微妙な顔をしていたという。

 

きっと、その時は夢中になって素敵なご夫婦にレッスンを受けている最中だったのだろう。

スマホは、卓球をしている時も、短パンのポケットに入れていたのに・・・。

太腿あたりで、ブルブルしたであろうに・・・。

 

卓球に夢中で、微塵も気付かなかった。

 

ああ・・・

本当に、本当に無事でよかった。

とにかく、ありがとうございます。なんだかわからないけれど、ありがとうございます・・・と、色々なことすべてに感謝したのだった。

こんな殊勝な気持ちは、数日経ったら、消え失せるだろうことは、わかっていたが、せめて数日間は、世の中に感謝しておこう。

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ルーティンと化した学校行く行かないの騒動と、謎の背面の痛み②

「プン助!ごはん!とりあえず、ごはん食べな。行く行かないは食べてからにしよう」

気持ちの切り替えが難しいプン助だが、水を飲ませたり、食い物を与えたり、10分離れるなどでパっと切り替えられる時がある。

 

今日は親戚が送ってくれた大層おいしいメロンがある!朝食に食べさせてみよう!

プン助はのそのそ、布団から出てきた。

 

もそもそメロンを食べ始め、そのまま味噌汁もごはんも食べた。

 

元気が出て気分が変わると良いのだが…。

 

心なしか顔つきが柔らかくなって来た。

「居残りが嫌ならさ、先生に言ったら?家でやってくるから、居残りは嫌だって」

「ママ、言ってくれる?」

「自分で言いなよ」

「ママが言ってよ~」

「言う隙があれば、言うけどさ、授業中断してまで先生にそれ、話せないもん。ママが言えなかったら、先生に言うんだよ」

しめしめ、行く前提に話が進んでいる。

 

ちょっと休んで、11時頃、学校に行く雰囲気を作り出すことに成功。

私もプン助に付き添うつもりで一緒に玄関へ。

だが、その時、つい余計なことを言ってしまった。

「プン助もさ、毎日毎日遅刻してるのに、友達とプールはちゃんと毎日行くんだもんね」

「まあ、プールはね」

「それも変だよね。これからさ、あんま8時半までとかだったらいいけどさ、それ以上遅刻したら、プール無しにしよう」

軽い気持ちで言ったのだが、これがマズかった。

 

プン助は、履いていた靴を脱いで、部屋へ逆戻り。

「やっぱ行かない」

 

ああ、私のバカ!何故、行きそうになっていたというのに、プール無しとか持ち出してしまったのだろう…!

「ちょっと待って!プールの話したからって行かないっていうのはおかしくない?大体、ママが気に入らないことを言ったとしても、それと学校行く行かないは関係ないじゃん!」

ソファに寝そべり、むくれているプン助。

「理由なんてどうでもいいんだよ。コイツは学校へ行きたくないんだよ」

と、旦那さん。

「学校はママの為に行くわけじゃないでしょ?どうしても行きたくない理由があるなら、それを言えばいいじゃん。それを言わないで、ママのせいにして行かないのは、おかしいよ!なんで行きたくないの?」

「理由なんかない!ママ、嫌い!あっちへ行け」
「人が真面目に話してるのに、あっちに行けとか失礼だよ!好きな時だけ水持ってこいとか、ママをこき使って、あっちへ行けとかひどくない。」

「ひどいのはママだ!」

「ひどのはプンだ」

「行かないなら、ちゃんとママを説得してよ!」

「それは僕が決める!ママに言う必要なんかない!」

「必要はある!水一つ自分で持って来ない癖に、権利ばっかり言うのはさぁ」

「うるさい!」

プン助は私を遮り、私の顔めがけて勢いよくクッションを投げつけて来た。

 

その途端、私はブチ切れてしまった。

 

「ふざけてんじゃねーぞ!下手に出てたら付けあがりやがって!もういいよ!学校なんてやめればいいじゃねーか!!!やめるって言ってきてやんよ!その替わり、偉そうにぐうたらしねーで、役に立つことしやがれってんだよ!自分で飲む水も、自分で持って来ねーで、人にさせやがって偉そうにすんじゃね-ぞ!15、6歳までは家においてやっから、その後はてめーでなんとかしろや!」

 

マンション中に響くような野太い自分の声を人の声のように聴いていた。

近所の人はこの声を誰の声だと思っているのだろうな。いつも気弱にへらへら笑っている印象に違いない私の声だとわかるのだろうか?

いくら野太いとは言え、旦那さんの声には聞こえないだろうし、子供の声にも聞こえないだろう。消去法で、やっぱり私だと思われるのだろうか・・・?

 

「おめーは、自分のことを頭いいとか思ってるかもしれないけど、結局、何もやらないで、いやだいやだっていっているウチに、時間が過ぎて一番無駄な時間を過ごしてんだぞ!」

「頭いいとか思ってないよ!」

「動けるのに、理由つけて動かないのは頭いいんじゃなくて、怠け者なんだよ!怠けている間に、一生終わるぞ!こらぁぁあ!」

プン助にそう言いつつ、このセリフは正に私が自分に思っていることだった。プン助はまだ9歳だけど、私は51歳。うかうかしていると本当に一生が終わる。

だが、不思議なことに怒鳴っている時には、血の巡りでも良くなるのか、背面の痛みを感じなかった。特殊なアドレナリンでも出ているのだろうか?

旦那さん、ドン引きしているだろうな・・・。100年の恋も冷めるような感じじゃないかしら?100年の恋をしていたらの話だが・・・。

旦那さんはともかく、今怒鳴られているこの状況、プン助の記憶として一生残るだろう。

いつかあの時のことは一生許せないと思った…とか言われてしまうのだろうか?

怒鳴りながらも、どうしてこんな怒鳴るハメになってしまったのだろう・・・と、早くも途方に暮れる。

キレる時は、ちょっと幽体離脱をしているような感じで、自分が他人みたいに感じられる。

 

段々怒鳴るネタが無くなってきて、離脱していた私の何かと怒鳴っていた体が一緒になってきて、今起きている事態を持て余す感じになって来た。

プン助の顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。

やっぱり、傷ついているのだろうか?

俄かに罪悪感を覚える。

とりあえず、ティッシュで鼻水と涙を拭いて、水を飲ませると、私もどっと疲れが出てきて、頭と背中の痛みが酷くなって来た。

自分の気持ちも切り替える為に、学校へ電話する。

「宿題をやってこなかった人が居残りになることになって、それが嫌で行かないって言っているんです。今、説得中ですが、後で行くかもしれませんし、行かないかもしれないです…すみません」

学校側も、プン助のことはなんとなく承知しているので、担任に伝えます・・・と、あっさり終わった。

ロキソニンを口に放りこみ、畳の部屋へ倒れこむ。

最初は全然効かないと思ったが、30分ほどすると、嘘のように痛みが引いて来た。

痛みが引くと、気持ちも落ち着いて来た。

 

1時間後、何事もなかったかのように二人で昼ご飯を食べる。

 

「さっきママが怒鳴ってるの見て、どう思った?」

「俺の方が正しいと思った」

「何言ってるんだろう、この人とか思った?」

「うん」

「ちょっとは悲しい気持ちになった?」

「そりゃーね」

「怒りすぎて、ごめんね」

「まあ、俺も、ごめんね」

 

喧嘩を長く続ける根性は私にもプン助にもなかった。

結局プン助は6時間目に登校した。

6時間目なら、行かない方がいいのでは?と思ったりもするが、学校に顔だけでも出しておかないと、放課後友達とも遊びにくいので、そのためだけに登校したのだろう。

プン助は、元気に帰ってきて、「遊びに行ってきまーす」と、プールの支度を持って、飛び出して行った。

「宿題をしてなかった人は居残らないといけないせいで、学校へ行きたくない」

 

、と言っていたことが先生に伝わったからか、結局居残りはしないでいいと言われたらしい。

 

平和に暮らすのってどうしてこんなに難しいのだろう…。

キレてしまうのは、自分にとって難しすぎる問題が次から次へと振ってきて、それに対処できないのに、対処できているふりをしようとしたり、子育ての道として正しいと言われている寄せ集めの知識を駆使して、遠隔操作のような感覚で勝負をしているからなのかなぁ…と、ぼんやり思った。

 

 

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ルーティンと化した学校行く行かないの騒動と、謎の背面の痛み

体調不良。

 

数年間さぼっていたヨガを再開させたり、無理に早起きをしたりせずに眠るようにしたことの好転反応とやらか?と思ったが、寝ていても、のたうち回るほどの腰から下の痛み前日から続いていた。

一晩寝たら治まるかと思ったが治まらず、朝食を取っている最中から、ヤバイ感じになってきた。

そんな日にもプン助の登校の行き渋り。

宿題をやれていない・・・というのが、理由だった。

 

既に何日も宿題を溜めていたプン助。

 

「今度から宿題をやらないと、居残りになることになっちゃったの。居残りは絶対やなんだ…だから、宿題は絶対やる!」

と、前日から言っていた。

だが、「チョコレート工場の秘密」を読みふけっていて、中々やる気になれず、22時になってしまった。

 

個人的には、宿題よりも夢中になれる読書の方が為になるのでは?と、思っていて、学校に行かない日は本を読むように言ってもいた。

「坊ちゃん」は、あまり乗れなかったみたいで、15分くらいで挫折していたのだが、偶々買っていた「チョコレート工場の秘密」はお気に召したらしく、集中して読みふけっていた。

そのまま読ませてやりたかったが、既にもう寝たほうがいい時間。

「宿題やらないでもいいから、もう寝たほうがいいよ」

と、伝えると

「とりあえず、風呂入る」

と、入浴。

(この時点でニンタマも私も入浴はとっくに済ませていた。

私が入浴する時も誘っていたが、「わかった、入る」と、言って本から目を離さず、本を取り上げようとしたニンタマと殴り合い、蹴り合いになったりもしていた。

風呂から出て来たプン助が

「ジンジャーエールで乾杯しよう」と、言うので乾杯もした。

それを飲んでから、テーブルで宿題を始めたが、すぐに床に寝そべりながらに方針転換。

眠いのだな・・・と思いつつ、私は腰の痛みが辛かったので、隣の畳の部屋に布団をしいてそこで横たわりながら、プン助の様子を見ていた。

そこへ旦那さんが帰宅。

「おい!お前、今日も学校行くの遅かったんだってな(14時15分)。ちょっと話合おう」

と、宿題をやっているプン助に、演説を始めた。

「…今、プン助宿題やってるんだよ」

と、暗に、話し合うのは今じゃない、と伝えようとしたが、旦那さんは気付かず、しばし演説。

「学校に行きたくないなら、行かなくていい。でも、その間は本を読んだり、ドリルやったりしろ。あと、お母さんを困らせるなよ」

「今、宿題やってるんだよ、プン助」(私)

「お前は凄い集中力あるんだから、やっちゃえばすぐなんだけど、中々やりたくならないんだよな。やりたくないって言ってる時間にやっちゃえば、すぐなのにな~」

演説を続けている旦那さんの側を離れて、プン助は布団にいる私の隣に潜り込んで来た。

「集中できない」

 

あのまま、あそこで宿題をやっていても、旦那さんの演説も止まらないであろう。

既に、11時半近かった。

「眠かったら寝て、朝やったら?」

11時を過ぎると、八割方、7時前に起きるのは無理だ。

だが、このまま起きていて、演説の嵐の中、宿題をするのも難しいだろう。

プン助はもう、目を瞑っている。

 

そして、今日の朝、6時半から10分置きに声をかけた。身体をゆさぶったり、背中をバチバチ叩いたり、お尻をバチバチ叩いたり、鼻をつまんだり、耳元で大きな「起きて起きて起きて!」と、叫んだり。

だが、顔をしかめて怒ったり、逃げたりするばかりで起きられず、私も宿題をやらせることを断念。

7時半に、優しい声で声をかけると、目をパチっと開けて、ニッコリ起きた。

 

これは当たりの日の顔だ!

 

と、思ったのもつかの間、居間に出てきて、時計を見た途端、険しい顔になり、そのまま布団へ逆戻り。

 

「わープン助!もう、さすがに起きないと遅刻する!」

 

慌てて、抱き起こすが、激しく抵抗して、布団へもぐる。

かなりお怒りモード。

まさか、私が起こさなかったことで怒っているのか?(起こしたけど)

 

「ママが起こさなかったって思って怒ってんの?」

涙を目に一杯溜めて、頷くプン助。

 

「起こしたよ!」

「起こしてない!」

「めっちゃ起こしたよ!」

「起きるまで起こしてよ!」

「いやいや、6時半から、7時まで何度も何度も起こしたよ!声も掛けたし、背中もバンバン叩いたよ!覚えてない?」

「覚えてない!」

「起こしたのに!」

「ママが、朝起きて、宿題やればって言ったから、寝たのに、宿題やれなかった!」

「だから起こしたってば!」

「もう、学校行かない」

 

だめだ・・・この繰り返しはエンドレスになる。違う風を吹かせなければ。

違う風と言えば…。

 

②続く。

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カレーパンで早起きしたけれど②

カレーパン食べたさに折角早起きしたのに、いつの間にか、9時になってしまった。

学校へ電話するにも、いつ学校へ行くのかもわからない。

 

遅刻をすると、登校に付き添わないといけない。仕事が溜まっているので、登校に付き添うのは結構負担。

 

「ああ、付き添わないといけないし、ママも疲れるんだよ」

「付き添わなくてもいいよ!一人で行くよ」

「一人で行かせると、ママが学校に怒られるんだよ!」

 

電話をすると、「登校する時は、付き添ってくださいね」と言われてしまうので、それがストレスで電話をしたくない。一人で登校して、何かあった時に困る・・・ということは理解している。なるべく付き添うようにもしている。だが、ノルマのように言われるのが、どうにも苦手なのだ。

 

昔は遅刻くらいで、付き添うなんてなかった。不審者がいたり、酷い犯罪も起きたりするので、そういう世の中になってしまったのだが、付き添え付き添えと言われる窮屈な感じが苦手。遅刻の付き添いだけではなく、宿題や忘れ物なども、必ず親に連絡や指導が来る。自分たちが子供の頃は、私が忘れものをしようが、親は何も知らされたりしていなかった。そもそも、親が子供をしっかり管理できると思っていることにも、疑問を感じる。しっかりしている人もいるけれど、しっかりしていない人間もいるのだ。

しっかりしていないまま親になった私が、学校的にみるとしっかりしていない子供をそっち方向にしっかりさせる、しかもそのことにそれほど価値を見出していないまま、義務感だけでやらねばならないことが、苦痛。

そこに価値を見出したとしても、自分がしっかりしていない分には、精一杯頑張る意志はあるのだが、それだけでいっぱいいっぱいで、子供の分まで分量が増えると、ちょっとお手上げだったりする。

プン助が、なんとなく学校へ行きたくない・・・イヤだというのも、きっと窮屈感を感じるのだろう。

だが、家に置いておいたところで、きちんと学習させたりできる自信もない。お仕事しているから、邪魔しないでね…と放置することしかできない。

学校へ行って欲しいと思っているのは、学校がいいと思っているわけでもなく、自分の都合なのだ。

 

昨日は、「俺は来年までに公文で高校レベルまで進むんだ」などと、演説していたプン助だが、学校を休んで、何時間もトレーディングカードをいじっている。

 

「学校行ってないんだったら、今、皆勉強してるんだし、何か勉強っぽいことしたら?」

 

と声をかけてみるが、私の声は何も聞こえていない様子。

旦那さんが、舞台の場当たりへ出かけようとしたら、プン助が行ってらっしゃいといいながら、

「パパが出かけたら、ママ、キレるよ。自分だけ行っちゃって、全部ママに押し付けたって。おい!行くのかよ!って思ってるよ。ね、ママ!」

と、無邪気に話していて、いささかギョッとする。

 

これは先日、まだ行くか行かないか分からない様子のプン助に、旦那さんが、

「そうか、お前は学校嫌いか!行きたくなかったら行かなくたっていいんだぞ」

と、言ったその30分後くらいに

「じゃ、仕事行ってくる」

と、出かけてしまった日に、私がプン助にボヤいた故の発言だった。

結局給食直前になって登校するプン助と手をつないで歩きながら、

「パパ、行かなくていいんだぞ!って言ってたじゃん。てっきりその後、責任持ってプン助の相手するのかなって思ったら、さっさと行っちゃったじゃない?!あれ、マジかって思ったよ。え?この状態で置いてくの?って。あんな事言わなかったら、プンはもっと早く気になったかもしれないじゃん!あれは正直ムカついた」

と、言うと

「そうだよね~、あれで行かなくてもいいのかな?っていう気持ちにはなったよ」

「だよね~。でもさ、ママがパパの愚痴とか言うのはやだ?」

「別に全然。」

「あのさ、これ、陰口じゃないからね。別に今、ママが言ってた事、パパに言っても全然いいからね」

 

というやりとりがあったのだ。

言っていいよとは言ったのだが、やはりちょっと気まずい。

「そうね、ちょっとそんなこと言ったかな」

と、気弱に言いつつ、恐る恐る旦那さんを見る。

旦那さんはしばらく黙っていたが、困ったような済まなさそうな様子で、

 

「学校には俺が電話しておくよ」

と、言ってくれたのだった。

 

私が電話すると、「遅刻して登校する時には、付き添うように」と、言われるのだが、旦那さんが電話をする時は、言われたことが無いらしい。

それも不思議。

 

いつの間にか11時近くなっていた。

 

「ママ、今太ってるし、忙しいからごはん食べるつもりはないんだ。だから、プン助はお昼ご飯食べたかったら学校で給食食べないとだよ」

「わかってる」

 

11時半になった。

「あのさぁ、給食食べに行かないの?」

「今行こうと思ってた!」

 

12時過ぎた。

「あのさぁ、ママ本当にごはんつくらないよ。」

「いい!」

 

プン助はどんぶりにご飯をついで、冷蔵庫にあるベーコンをレンチンし、もしゃもしゃ食べ始めた。

 

13時過ぎ。

「あのさぁ、学校行こうと思う」

「そう」

「でさぁ、やっぱり、付いてきて欲しい」

「校門まで?」

「教室まで」

「わかった」

 

二人で、学校へ向かうと、黄色い帽子をかぶった一年生達が、下校するところとすれ違う。

「1年生なんか、もう帰る時間だよ」

と、ギャハハ!と、笑っているプン助。

近所の中学生も下校して来た。

横に広がって友達としゃべりながら歩いていた。まるでこちらに気付かない様子で、こちらが避けないと、ぶつかりそうだった。

「前全く見てないなぁ、危ないじゃん」

 

と、私がぼやくと、

「中学生もさ、勉強とか難しくなるからさ、疲れてんだね~。だらだらもしたくなるよ」

ど、通り過ぎたシーズンを優しく見守るおやじのような発言。

 

教室へ着くと、

「あ、プンだ、プンだ!」

と、クラスメートに言われて、堂々とした様子で入って行った。

先日は、教室に入りづらそうだったのだが、今日は全くそんな様子もない。

昼も過ぎると、開き直るのだろうか?

 

プン助を送った後、銀行へ行ったり、スーパーで買い物をして帰宅。

冷蔵庫に肉やら、野菜やらをしまって一息ついた途端、インターフォンの音。

モニターを見ると、プン助だった。

 

もう学校終わったのか・・・。

5時間目の途中から行って、6時間目が終わるのって早いんだな。。。

その後、2分もしないで遊びに出かけて行った。

学校へは5時間も行き渋っていたのに、遊びに行くのは2分。

毎日こんなことになったら、恐ろしいが、今から先のことを心配しないようにしよう。

元気なのは、ありがたい。

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カレーパンで早起きしたけれど①

セブンイレブンのカレーパンがおいしい。

 

カレーパンのおいしさに魅せられた旦那さんが、子供らに

朝6時40分までに起きたら、近所のセブンイレブンでカレーパン、もしくは他に好きなパンを買って朝ごはんにしていい」

と言う御触れを出した。

 

子供らは早く起きたら、好きなパンを買える。

大人は、朝ごはんの支度をしなくていい。

そして、パンにつられてプン助は、早めに起きて、学校へ行ける。

 

そういう効果を狙ったらしい。

 

昨晩は絶対に起きる!と、はしゃいていたプン助だったが、6時40分に起こされた時、寝ぼけてパンはいらないから寝かせて欲しい・・・という感じで、布団にしがみついていた。ニンタマにいたっては、宿題がおわらないからいらない・・・とのこと。

折角の旦那さんの企画、初日にしてポシャったかと思われたが、再度プン助の耳元で、

「カレーパンいらないのかなぁ~、カレーパン、パパが食べちゃおうかなぁ」

などと、つぶやいていたら、プン助は突然ガバっと起き上がって、カレーパンを買いに行った。

 

朝ごはんの支度もしないでよくて、子供らが早く起きてくれるなんて、なんて楽なんだ…!

毎晩12時近くまで、起きていることもあり、どんなに頑張って起こしても7時半くらいまで、ピクリとも動かないプン助が、早々に食事を終えている。

久々に遅刻をしないで、学校へ行けるかも・・・!

昨日学校へ行ったのは、10時半過ぎだった。

8時半前後に行く微妙な遅刻が多かったのだが、ここ最近エスカレートして来て、行くか行かないか分からず、やっと10時頃に行く・・・という、いつ不登校になっておかしくない感じになっていた。

カレーパンで、8時に行けるなら、こんなに素晴らしいことはない。

 

だが、8時になってもソファに寝転がっていて、靴下も履かない。

あれ?こんなに時間があるのに、何故行かないのだろう?

折角遅刻をしないで行けそうなチャンスだったのに・・・。これでは、また遅刻をしてしまう。

遅刻をしてもいいけど、たまには遅刻しない日もあって欲しい。

歯磨き粉を歯ブラシにつけて、持って行ってやっても、ソファの下にもぐったり、ぐにゃぐにゃしてまともに立ち上がろうともしない。

久しぶりに遅刻をしないで登校という夢が、またとないチャンスが潰えてしまう。

何度か玄関まで連れて行ったが、とんぼ返りして、ソファの足元に顔を埋めたりしながら、ニヤニヤしている。

行きたくないというより、焦る私をからかっているようにも思える。8時15分になって、やっと靴を履いた。

 

「やった!行く気になった!」

 

だが、ランドセルも鞄も持たずに、スタスタ出ていってしまった。

追いかけようにも、私はまだブラトップのタンクトップと、寝間着のズボンいう状態。

しかも忘れたワケではなく、

「ほら、忘れてるよ~」

と、私が慌てて追いかけて来るのを、どこかで隠れて見たりするプレイをやりたがっているに違いない。

無性に腹が立って来た。

PTAの議事録を今日中に終わらせたいし、他の作業も溜まっている。プン助が学校へ行ってくれないと、何も捗らない。

そんなプレイに付き合える心の余裕がなくなっていた。

 

もういいや!

 

と、ランドセルとカバンを玄関の外へ出して置いておいた。

室内へ入れると、またソファへトンボ帰りをしてしまったり、ろくなことがない。プレイには付き合わず、無視だ!無視!

 

だが、恐らくいつまでも追いかけてこない私に痺れをきらして、戻って来たプン助が、ドアの外に置かれていたランドセルとカバンを見て、激怒。

 

「ママ、ひどい!僕のランドセルを地べたにおいた!」

 

と、玄関を開け放って怒鳴り込んで来た。

まだブラトップに寝間着姿なので、慌てて

「しめて!しめて!」

と言うと、

 

「しめない!」

と、一層ドアを大きく開ける。

散らかっている部屋が見えるのが困るのと、ブラトップ姿が見られるのが困るのだが、それを言うと、余計に見えるようにドアを開くと思ったので、

「蚊が入るでしょ!」

と、苦し紛れの言い訳をしたが、全く効果はなかった。

 

玄関で大騒ぎをするのも嫌だったので、もう部屋が見えるのは仕方がないことにして、家の奥へ避難した。

 

結局、プン助は靴を脱いで、ソファへ逆戻りしてしまった。

ああ、6時40分に起きて爽やかな朝を迎えたというのに、何にもならなかった。

昨日、明日は8時に行くっていたのになぁ…。

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七夕のことなんかすっかり忘れていた。 PTA 運動会 オリンピックについてのあれこれ

七夕のことはすっかり忘れていた。

 

PTAの定例会。

色々な議題が上がったが、校長先生やクラス委員の保護者の話ぶりから、生徒のオリンピック観戦を楽しみにしていた人がいたらしいことが分かった。

「残念ながら、子供達のオリンピック参加は中止になってしまいしたが…」

「市の方針で仕方がない面もわかるのですが、是非実施して欲しい・・・」

等々。

 

私個人としては、小学校の年鑑行事日程表にシレってオリンピック観戦…と載っているのに気が付いた時、このコロナ禍に…!と、信じられない気持ちになり、頭に血が上って、どういうことか問い合わせたい気持ちになった。すぐそうしなかったのは、中止になる可能性を信じていたからだ。

7月に入っても中止にならなかったら、個人的に校長先生に、どんな状況でも実施するのか?どういう状況になったら、中止にするのか、その基準は設けているのか?行きたくない人は参加しなくても、欠席扱いにならないのか?行かないことで何らかの不利益を被らないか?もしも明らかに観戦したことによる、感染者が出たら、どうするつもりなのか?などを聞きに行こうと思っていた。  

なので、7月を待たずして、中止になった時には、小躍りして喜んだくらいだった。少なからずそういう気持ちの保護者はいるはず・・・と、思っていたのだが、そうなのか・・・未だに、こちらは少数派なのか・・・と、軽くショックを受けた。

 旦那さんにその報告をしたら、

「観戦を楽しみにしている人がいる前提で、その人達に配慮してそういう言い方をしただけかもしれないよ?」

と言っていた。

それもあるかもしれないが、だったら

「中止になって安心した方もいるでしょうし、残念に思ってる方もいらっしゃるでしょう」

でもよいのではないだろうか?

 

秋の運動会の話でも、校長先生は

「生徒を昨年と同じような形で並ばせられない。もっと間隔を開けないと」

「ウチの小学校で感染者が出ていないのは、たまたまだと思っております」

というような話もしていた。

そこまで、考えているのであれば、オリンピック観戦なんて、危険極まりないと思うのが、当然だと思うのだが・・・。モヤモヤが残る。

 

 

 話は変わるが、運動会に関して、校長先生は慎重派だった。

子供達の為にも運動会は是非実施したいけれど、感染症対策を考えると、できる競技は、徒競走やゲーム性のある団体競技に限られてしまう、今までやっていた学年単位でやる表現運動(ダンスや組体操)みたいなものは、体育館で練習する時に蜜になってしまうのと、校庭で間隔をあけて生徒達を座らせると、140人が一斉に演技するようなスペースを作れない、観戦する親も子供一人につき、一人が精いっぱい・・・という旨を話した上で、保護者の意見を求めた。

だが、保護者からは

「5,6年生の表現運動や、組体操は観たいです。かけっこなどという人と争う競技ばかりではなく、団結して協力しあう組体操や、表現運動を是非やって欲しい」

「子供一人につき、保護者が一人しか観戦できないのであれば、ライブビューで配信などで、パソコンで観られる形があったらいいと思う」

…という、どちらかというと、意見というよりは要望に近いものが多かった。

気持ちはわかるが・・・先生の話している内容をきちんと聞いていたら、無理でしょ・・・と思った。

案の定校長先生は、

「まずライブビュー配信は人手と予算の関係で無理です。教員は総出でやってますし、感染症対策でいっぱいいっぱいです。そこに人手をさく余裕はないです。学校はサービス業ではないです」

と、述べていた。個人的には最もだと感じた。

競技に関しても、「最低限これはやります・・・ということで、状況が良くなれば、もちろん表現運動などもやらせてあげいたです・・・」

とのことだった。

校長先生は「子供達が楽しみにしている運動会をなんとか実施したい…」と、何度も繰り返していた。

保護者の気持ちも分かるけれど、現実的では無いし、校長先生の誠意にもジーンとしたなぁ…などと思いながら、家に帰った。

 

帰宅後、家でその話をしたら、

「え~、何、それ。まず、運動会なんて、全然楽しみになんかしてない。毎年暑い中、練習させられて、面倒くさいなぁって思ってるよ。一部の体育得意な人だけじゃない、楽しみにしてるの。皆嫌がってるよ~。中止になればいいのに、運動会。親の為にやってんのかって思ってたよ!」

と、ニンタマが力説。

そうだった!そういえば、昨年も子供らは、運動会、面倒くさい・・・と、ぶつくさ文句ばかりを言っていた。コロナで観られない・・・ということに気を取られてうっかり、忘れていたが、私自身、毎年運動会を面倒くさいなと思っていたのだった。

 

我が家の子供達は、全く運動会で活躍するタイプでもない。

ここ数年、徒競走でやっとビリじゃなくなったくらいで、それまでは、輝く笑顔で活躍する子供達と自分の子供の落差を見せつけられるだけで、親としても全く楽しくないのに、行かないとなんとなく顰蹙を買いそうな気がする辛い行事だったのだ。

親バカかもしれないが、子供ら二人の運動神経が鈍いとは思っていない。

ウチの子供らは無目的にまっすぐ早く走る・・・ということに本気になれないタイプで、鬼ごっこなどでは、チョコマカと俊敏だし、プン助などは徒歩17分の駅まで、ダッシュで走り続ける体力もある。

運動会が向いていないタイプなだけなのだと思っている。運動会にいい思い出は皆無で、ウチにとっては、親も子も無駄に卑屈な気持ちにさせられる苦痛な行事だったのだ。

その事をすっかり忘れていた。

雰囲気に飲まれるということはあるのだな・・・と、久々に感じた。昨年から続くコロナ騒動で頭が凝り固まっていて、コロナ以前に自分たちがどういう風に感じていたか・・・という前提事態も分からなくなっていた。

運動やスポーツは嫌いではないけれども、押し付けられて競わされるものは嫌い。

だから、運動会も好きではない。昨今の無理やりお祭り騒ぎにしているオリンピックも、全然乗れない。いわんや、こんなコロナ禍でやるなんて・・・。そもそも乗れないものに、乗ったふりをしないと、浮いて見えるかも・・・と心配しながら暮らす事の、なんとバカらしいことか・・・。

 

楽しむ人は楽しむのかもしれないが、乗れないものはしょうがない。

つい、気が付くと色々洗脳されてしまうけれど、嫌なものは嫌だと、思う事だけは大事にしようと改めて思ったのだった。

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行き渋りはタブレット弱者のせい?

昨晩8時には学校へ行く!と、豪語していたプン助だったが、8時過ぎても、全く行く気配がない。

社会の調べものの宿題をやらなければ…と、木曜日から言っていたのだが、土曜日、日曜日と、全くやらず、昨晩に

「明日、朝早くやるから起こして」

と、頼まれていた。

6時から30分おきに声をかけたが、

「わかってるから大きな声出さないで」

と言うので、

「起きられなかったんだから、社会の調べものの宿題、やらなくても行くんだよね」

と、確認すると頷いていた。

だが、8時になっても、全く行く気がなさそうだ。

だ何で行かないのかを聞いてみると、

 

「社会の調べものが・・・」

 

と、モゴモゴ言うのだった。

 

「じゃあ、もう今からやればいいじゃん。どのくらいでやれそう?」

 

と、聞くが、床に寝そべって消しゴムを転がすばかりで全く答えない。

そこから、30分ほど、怒鳴ったり泣いたり、宥めたり、抱きしめたり・・・を経て、少しだけやる気になったプン助。

テーブルに筆箱など出して、お膳立てしてやるが、タブレットを出し始めた。

タブレットでやる宿題だったのか…?

 

タブレットで、パラリンピックの選手や競技などを調べ始めたので、

「パラリンピックの何かを纏める宿題なの?」

と、聞くも「教えない」と、秘密主義。

 

その間、洗濯物などを干していたら、起きて来た旦那さん相手にプン助が何やら訴えていた。

「背景がこの色じゃ嫌だ」

とかなんとか。

最初、宿題と背景の関係が分からず、何をやっているのだろう?と思っていたが、どうやら、タブレットでレポートらしきものを作成する宿題だったらしい。

 

いつも、何が宿題か聞いても教えてくれないので、分かっていなかったが、慣れていない人にとっては、30分やそこらでやれることではなさそうだ。

 

やろうとしては苛々して、寝転がって

 

「できない~~~」

 

と、癇癪を起していた。

旦那さんが、やってあげても気に入らないらしく、怒っている。

 

「先週の木曜日に、社会の調べものは早くやるって言ってたよね。先生にやっていくって約束したんでしょ?約束したから、やらないままでは学校いけないって思ってるんでしょ?やった自分じゃないと学校へ行けないって思ってるんでしょ?」

 

コクリと頷くプン助。

 

「それは見栄だよ。できないのに、できた自分じゃなきゃ行けないのは、実際の自分よりよく見せたい見栄だよ。見栄を張りたいなら、パパにやって貰ったっていいじゃない」

「違う!見栄じゃない!」

「いいや、見栄だね。見栄じゃないなら、できなかったからパパにやって貰ったって言えばいいじゃん」

 

何か腑に落ちない感じで心を閉ざすプン助。

 

「見栄を張るのは悪いことじゃないよ。ママだって、できないかもって思う事、できますって顔をして、引き受けてパニックになることはよくあるよ!でも、パニックになったら、パパに相談したり、泣きついたり、案を聞いたりしてそこは恥も外聞もなく頼るよ。学生の時は、書けないレポートとか、親切な人に頼んだり、お金払ったりして書いて貰ったりもしたよ!見栄を張ってその無理を通したいなら、そこはカッコつけてらんないよ!それでもできないときは、そこは無理だって言うんだよ!」

 

私が、全く自慢にならない演説をしている脇で、黙々とプン助の宿題をやっている旦那さん。

 

「はい、プン助。これでいい?」

 

タブレットで、パラリンピックの競技についてのレポートが出来上がっていた。

書いてある文面が、明らかに子供のものはない。

「パパにやってもらったって言えばいい」

と、旦那さんは、身支度を整えて買い物へ行ってしまった。

 

「こんなんだったら、やってもらわない方がよかった」

「パパにやって貰ったって言えばいいじゃない」

「それも言いたくない」

「じゃあ、全部消せばいいじゃない」

「それも嫌だ」

と、プン助は寝転がって漫画を読み始めた。

 

「ちょっと、人が真剣に話しているのに失礼じゃない?」

無視。

「あのさぁ、自分のことを何かやれる人間だ、頭がいいって思ってるかもしれないけど、それだって、何もやらなかったら、何にもならないよ!」

やはり、無視。

「ママが怒っているのは、ちゃんとやるから!と言って、YouTubeとか漫画みたり、とか、お菓子とかジュースとかねだったりして、無理やりにでも思いを通して、報酬だけ先に取るくせに、その後対価を払わないことなんだよ。それは詐欺だ!おうちだから、警察とか呼ばないけれど、犯罪だよ?いいのか?そんな人間になって」

ああ、ヤバイ。段々止まらなくなって来た。酷い事を言い始めている。しかし、やはり無視される。

「やるやるって言って、やらない癖がついたらダメだよ。この人って自分でやるって言ってた事、全然やらないんだな・・・って思われたら、こっちが本気のつもりで話しても、皆、どうせまた、言ってるだけでしょ?って信じてくれないよ?!親子だけどさ、やっぱり信用って大事なんだよ。貯金と一緒でさ、小さな信用をコツコツ積み重ねていくもんなんだよ?自分にだってそうだよ。やるって言ってやらない自分が当たり前になっちゃダメなんだよ!」

ああ、辛い。私も、20才の頃から、小説家になりたい…、書かなければ死ぬに死ねないテーマがあるとか言っていたのに、もう50歳超えている。プン助より、余程終わっているではないか。もう、プン助の目は何か別のモノを見ているようだった。

「ママの言葉聞いてる?理解している?」

ガラス玉のような瞳で、私の顔を見ている。

 

「ママの顔に、目ヤニがついてるな?とかそんなことを思いながら聞いてた?何か叫んでるけど、シミがあるな…とか思ってた?」

 

と、プン助、プっと笑った。

「目ヤニある?」

首を振るプン助。

「ママさ、顔を洗う間もなかったから、目ヤニでもあるかと思ったよ」

 

プン助の顔は涙で濡れていたが、噴き出したせいか、ガラス球のようではなくなっていた。とりあえず、その隙を狙って

「まあさ、とりあえず、ちょっと泣いたり、ギュっとしたりして、気を取り直してから、学校行くか」

と、言うと、頷いたので、それから暫く抱擁した。

「泣き虫プン助」

と、言いながら頭を撫でてると、プン助は涙と鼻水を私のTシャツで拭いていた。

 

10時半過ぎていたので、教室まで付き添う為に一緒に登校した。学校に近づくにつれ、「もっとゆっくり歩いて」

と、普段の三分の一くらいの速度で歩くプン助。

学校へ入っても、階段を足で登らず、手すりにしがみついて、腕力で雲梯のようにして上る。教室へ入るのに、プレッシャーを感じている様子。

不登校の時期には、よく見られていた行動なのだけれど、5月くらいまでは遅刻をしてもスタスタ入っていた。6月に入ってから、学校へ行ったり、教室に入るのに、何某かストレスを感じている様子。

先生が、プン助を発見して、「おいで」と、誘導してくれるのだが中々入らない。他の生徒達も気付いて、「プンちゃん来たよ~」と、迎え入れているのだが、モジモジしている。PTA室に用事があったので、すぐ教室を後にしたのだが、プン助の手提げを私が持ったままだったことに気付き、届けに戻る。

プン助は、まだ荷物の整理をするふりをして、教室の後ろで座り込んでいて、私が手提げを渡しても、反応しなかった。

以前は、来てくれるだけでいいんです・・・という感じだった先生も、「あ、はい、座ってください」という感じの対応になっている。

 

まあ、これは仕方がない。いつまでも、来るだの来ないだの・・・とよくわからない態度でもモジモジしている人を構うのも面倒臭くなるのも当たり前だ。

だが、プン助としては、ちょっと居づらくなっているのかもしれない。

などと思いながら、他の生徒の様子を見た。

 

タブレットを出して、授業を受けていた。

 

生徒達のタブレットを見て、ビックリした。

 

どうやらプン助がやっていたらしい社会の調べものの宿題、パラリンピックの競技についてのレポートを、皆、開いていた。

 

どこかのホームページか?というくらい、綺麗な色を使ったレイアウトで、作成されたレポート。

え?これ、今の小学校4年生は、皆こんなことができるの?

私は、PCを20年くらいになるが、こんなことやったこともない。

 

ニンタマは、よくタブレットをいじって色々やっているがプン助は、ちょっとしたゲームっぽいことをする以外、全く弄っていない。

親のスマホでYouTubeを見たり、好きな漫画を調べたりはするけれども、それ以外で学校から配られたタブレットをいじっているのは見たこともない。

そうか・・・これなのだろうか?

 

最近、行きしぶりが出始めたのは、タブレット教育が本格化してきたのに、全くその流れについて行けていないことも原因だったのだろうか?

 

私自身PC、スマホ、タブレットが苦手な方ではあるけれど、同世代には一定数そういう人間はいる。でも、今の子供だと、それが苦手なことは、結構大変なことなのかもしれない。

色々悩ましい。

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自宅お化け屋敷

家で、PC作業をしていると、インターフォンの音。モニターを見ると、プン助の姿。エントランスのドアを解錠をした後、玄関ドアの鍵も開けて、プン助の死角に当たるところにはいつくばって待機。

「ただいま~」

と、という声と共に、プン助が入って来た。

息を潜めて、プン助が通り過ぎるタイミングで、「フッフッフ」と、低い声で笑ってみる。

プン助は和室の襖の側を通り抜けた途端に足もとにいた私に驚き、

 

「うわ~~~~!!!」

 

と叫んだ後、飛び上がった後、へたりこんでいた。

 

「びっくりしたなぁ~~~!何やってんの?」

 

 

と、言っていたが、喜んでいた様子。

 

以後、数日の間、プン助の帰宅時に私が家にいる時は、廊下であったり、洗面所の床であったり、浴室であったり、色々な箇所で這いつくばって待機していた。

 

ちょっとした自宅お化け屋敷状態。

 

でも、回を追うごとに、段々ネタ切れになって来た。もうどこに這いつくばったらいいか、分からなくなって来た。

 

帰って来るたびに、どこに隠れたらいいんだろう・・・面倒臭いなとさえ、感じるようになって来た。

 

ちょっとネタ切れになり、這いつくばるのをやめて、壁から手だけを出して、不気味な動きをしてみた事もあった。

だが、プン助が全く気付かず、通り過ぎて行ったので、努力が無駄になると、

 

「折角ママが隠れていたのに、気付いてくれなかった~~~」

 

と、追いかけたら、その声にビビって腰を抜かしていた。

 

とはいえ、本当に本当にネタ切れになって来た。

 

ある日、プン助が帰宅した時、つい忙しくて、脅かし忘れてしまった。

 

用心しながら、入って来たプン助をみて、

 

「あ、ごめん。這いつくばるの忘れちゃった~~~!」

 

と、謝ると、

「別に謝らなくていいよ。正直、面倒になって来ていたから」

 

と言われた。

「本当?本当?楽しみにしてたんじゃないの?」

「まあ、楽しみにはしてたけど、やっぱ、飽きるでしょ?普通に帰って来たいし」

 

なんと…!

軽くショックを受けたが、内心ホッともした。

ここで、何でやめちゃったんだよ~~~なんて、責められたら、まだまだ続けなければならないところだった。

 

同じようなタイミングで、面倒だな・・・と思うようになったというか、まあ、潮時だったのだろう。

頼まれてもいないことをやって、勝手にネタ切れになったて、負担に感じたりするのは愚かなことだ。

 

きっと、毎日が良くなかったのだ。

自宅お化け屋敷は、月1くらいにしよう。

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私が触れると調子を崩す機械たち…PTA活動はまだ始まったばかりだけど、息切れ

午前中、病院でPCR検査。

31日から、昨年骨折した鎖骨のプレートを抜く為の手術をするのだが、入院、手術する為には検査を受ける必要があるとのこと。

PCR検査だけだと思っていたら、血液検査、尿検査、心電図測定など他にも沢山の検査があった。午後から、PTA通信の印刷配布作業があるので、間に合うかヒヤヒヤしたが、ギリギリ間に合った。

14時に、手伝ってくれる他の役員の人が来てくれることになっていたので、私は13時に入って、印刷の準備をすることにした。

会長が校正し終わった原稿はPTA室のパソコンに入っているとのことだったので出力して、製版くらいまではしておきたかった。

だが、PTA室へ入ると、テーブルに既に出力した原稿が置いてあった。

会長が出力しておいてくれたようだ。

助かった。ひと手間減った。

よし、これを製版しよう!

ところが、製版した途端、エラーが出てしまう。

画面の指示に従うように、トレーを開けたり中に巻き付いているインクまみれの薄い紙を引っ張り出したりしているウチに、手は真っ黒になってしまった。

普段は小汚い服を着ているのだが、PTAらしく・・・ということで着て来てしまった白シャツにもインクが付いてしまった。

色々努力をしてみたものの、何度製版しても半分は印刷されなかったり、印刷にムラが出たり・・・。

最初から調子が悪かったのは確かだが、なんとなく私が触ったせいでどんどん機械の調子が悪くなっているようにも思えた。

そうこうするうちに、手伝ってくれる他の役員の方々がやって来た。

「これ、業者に電話しよう!」

 

ということになり、リコーに電話をかけ、一時間後位に来てもらえることになった。

その間、不安定ながらも、印刷濃度を一番濃くしたりしながら、騙し騙し製版をして、作業を進めた。

やっと業者の人が来て機械を見てれたのだが、どこもおかしくない…と言われてしまう。

その業者さんが製版すると、何の問題もなく綺麗に製版できてしまったのだ。

 

「バカな・・・!」

 

と、驚きつつも直ったのなら、それはそれでよかった。

「僕、何もしてませんよ」

と、業者さん。

 

それでも直ったのならよかった。

 

だが、私が再び新しい原稿を製版すると、また色ムラだらけになってしまう。

 

「やっぱりおかしいです!ほら!」

 

と、何故か勝ち誇ったように業者さんに見せる。首をかしげる業者さん。

再び業者さんが、製版すると、またもやクリアーに製版されている。

 

「これね・・・ロールにインクが染みてないこともあって、そういう時は何度か製版すると、大丈夫だったりしますよ」

 

だが、私が触れる前は、そんなことをしないでもクリアーに製版されていたのだ。

私も、今まで何度も製版していて、その時は何の問題も起きたことはなかった。

 

ただ、今日の配布印刷業務は、私の仕切りで4人も手伝いの人を呼んで、8ページにわたる印刷物を800部印刷するという、プレッシャーに満ちたミッションだった。

 

失敗したら時間を調整して来てくれた人へも迷惑をかけてしまう。

 

そのプレッシャーにドキドキしながら、印刷機に触った途端のエラー&印刷機の不調。

 

何かの呪いのような気がする。

 

業者さんは、来た手前何か手伝わなければ・・・という感じで謎に、製版、印刷作業を小一時間手伝っている。

 

こちらはなんとなかなりそうだ。今度は紙折り機だ。

 

先に紙折り機を使って作業をしていた人と交替して、私も紙折り機の使い方を教えて貰いに行く。

だが・・・私が行った途端、紙折り機の調子も悪くなったのだった。

 

何枚紙を置いても紙をカウントしてくれなくなった。

試行錯誤の末、印刷していない紙で印刷した紙を挟んで紙折り機を作動させたら、やっとカウントしてくれた。

印刷してある紙は滑りやすいのかもしれない・・・という結果に落ち着いたのだが、これだって私が来る前には起きなかった現象だ。

 

私のせいなのでは?

よくわからないが、私は機械の神様に呪われているのかもしれない。

 

皆は、今のところ、私のせいで印刷機や紙折り機が不調になったとは思っていないらしい。だが、このような事が度々続くと、

 

あれ?この人が触るといつも、機械の調子が悪くなるな・・・・

 

と、バレてしまうかもしれない。

 

バレるもバレないも、全て私の気のせいなのかもしれないのだが、最早既成事実のように思えてしまい、後ろめたい気持ちでいっぱいになる。

 

なんとか紙折り作業も終え、今度は折り込み作業だ。

 

当たり前ながら、業者さんはもう帰っていた。

 

後から、折り込み作業に参加する。

既に効率のいい塩梅でローテーションが出来上がっていた。

スペース的にも私が入り込むと邪魔な感じ。

だが、一人だけダラダラ怠けている訳にもいかない。

しかも、一応この作業の一番の責任者は私だ。

 

何とか端っこに紛れ込み作業に加わる。

皆は楽し気に会話をしている。

 

私も、会話に加わってみたい。

 

そう思う者の、会話の内容がさっぱりわからない。

 

「●●さんが、こう言ってね~」「あはは、言いそう」「で、私もびっくりして、◎◎さんに言ったんだけど、あの人ってそうだよね~って話になって・・・」

 

皆が知っているらしい◎◎さんも●●さんもわからない。

話が合わない・・・というより、転校生みたいな感じで、同じ共通認識がない感じだ。

 

一人で黙々と作業していると気を遣わせそうだし、薄ら笑いを浮かべる努力をするが、マスクをしているので、薄ら笑いには何の意味もないことに気付き、やめる。

 

習いごと事情の話になり、金のかからない習いごとは送り迎えやお手伝いが大変で、金のかかる習い事はそういうのが無い分楽・・・という話になり、そうなのか・・・!と、マメ知識を得た気分になった。

お手伝いには公園や施設の場所取りがあったり、何年もやっている保護者はコーチ達やイベントや発表会に関しても意見を言えるけれども、始めたばかりの人は意見も言えないしコーチ達と口もきけない・・・という保護者カーストらしきものがある習い事の話なども盗み聞きできた。

それは面白かったのだが、皆どんなに近い場所でも習い事の送迎をしているらしい事に仰天した。

明らかに難易度の高い場所や危険そうだと判断した時は、送迎しているし、危ないと思った時にどうすればいいか・・・という話はしていたが、そんなマメなことは全くやっていない。ウチの杜撰さがバレてしまったら、呆れられてしまうかもしれない。黙っておこう。

 

会話の流れで誰かが来週私が鎖骨のプレート除去手術をすることに触れ、

 

「そもそも何で怪我したんですか?」

 

と、聞かれたので、初めて盗み聞きから、会話に参加する立場へ格上げされた気持ちになり、緊張したしながらもおずおずと答えた。

「ああ、スキーで・・・」

 

「ああ、スキーなんだ」

 

なんとなく、皆のテンションが下がっているように感じた。

 

あくまでも私の想像だけれど、やむを得ない事故なら仕方がないけれど、このご時世に好き好んで頼まれてもいないスポーツをやって怪我したんだ・・・それじゃああんまり同情できないな・・・という感じの気配を感じた。

 

そこで止めておけばよかったのだが、自分でもよくわからない衝動に駆られて続けてしまった。

 

「いやぁ~、霧も凄い中、アイスバーンで・・・ホントは私なんかよりも子供達の方がよっぽどスキー上手なんですけど、『ママ、怖い~~』なんて言われちゃって、いいとこ見せたくて張り切っちゃったんですよ~!『大丈夫だよ!ママについておいで!』って、颯爽と滑り出したら、転んじゃって・・・ポキって!。子供たちは、骨折したなんてわからないから、蹲ってる私に『ママ、頑張れ~~~』って声かけるんだけど、骨折れちゃってるからね~~~」

 

そこまで言い終わって、何かの違和感を感じて続けるのを止めた。

なんか変だな。私が今まで仲良くして来た人達は、こういう話をしている途中に、もうちょっと何某か食い気味に反応をしてくれていた。

そして、最終的には社交辞令かもしれないが、笑ってくれていた。

でも、今回は違う。

何か違う。

なんだろう・・・これ。

 

もしや・・・ドン引きのされている気配?

 

シーンと静まり返っている役員の方達の中、かろうじて一人の人が、反応してくれた。

 

「それって・・・子供トラウマ・・・」

 

 

確かにそうかもしれない・・・。

 

瞬時にこの話を聞かされた立場に思いを馳せてみた。

楽しいスキーをしていた最中、「ついて来な」と、言っていた母親が転んで骨折。ショックかもしれない。話として聞くと、そんな気もする。

でも、あの時の子供達の様子を考えると、そんな大げさなものでもなかった。

こちらがもっと心配してくれよ・・・という程、能天気な感じだった。

あと数時間滑れたはずなのに、残念。面倒くさいなぁとは思ったと思うが、トラウマ・・・という程ではなく、食べられると思っていたケーキが食べられなくて残念・・・程度の感じだった。こちらもそれに関して、失望もしていないし、そんなもんだという認識しかない。

 

だが、これ以上説明するのは得策ではなさそうだった。

説明しても、子供のトラウマに思いもよせず、へらへらしゃべる能天気な親・・・という評価のダメ押しをしてしまうだけだろう。

 

折り込み作業を終え、お手伝いへのお礼を言い、配布作業は一人で出来ます・・・と、プリント類を入れるクラスのポストに向かった。

だが、クラスのポストは他の配布物で満杯で、PTA通信の入る余地はなかった。

月曜日の午後から入院するので、午前中に再度学校へ来て、配布できれば良いのだが・・・。

すると、

 

「入院する日は大変でしょ?配布は無理だったら私達やっておきますよ」

 

と、皆さん、優しく声をかけてくれた。

今まで仲良くしてきた人達と種類は違うようだけれど、皆とてもいい人達なのだった。

仲良くなれたらなれた、なれなかったらなれないで、いいのだ。

焦らずに、腐らずに、とりあえず嫌われないように頑張ろう。

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ウチの荒ぶる神プン助②

ニンタマとのんびり過ごしていると、奥の部屋のドアがバタン!と、鳴った。

 

プン助、起きた?

 

ドン、ドタドタドタ!・・・バーン!

と、激しい音を立てながら、プン助がリビングへ入って来た。

 

「ママ、ひどい!」

 

ニンタマの予想が当たった。起きて来ちゃった・・・。

鬼の形相・・・。

ヤバい、これはアカン奴だ・・・。

寝起きの時の最悪のパターン。

 

そうだった。疲れて寝落ちした後に目を覚ますと、スッキリして機嫌が良くなるどころか、悪霊に憑りつかれたように、不機嫌で周囲に当たり散らすことが多々あったのだ。

幼少時から今まで、何度もその事態にぶちのめされて来た。

何故、忘れていたのだろう・・・。

 

「起こしてくれなかった!!!ママ、ひどい~~~!」

「いや、気持ちよさそうに寝てたからさ・・・」

「ひどい!!!もう、こんな時間だよ!!!」

 

21時だった。

 

一時間半寝ていたことになる。

 

「もう、何もできないよ~~~~~~」

「そ、そんなことないよ!今からだって動画観たり宿題やったりできるって。一時間半寝ちゃったってことは、いつもより一時間半遅く寝ても大丈夫ってことだし」

「何もできない、やりたいこと一杯あったのに~~~~!」

「だからできるって…」

 

プン助の顔はいつの間にか涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。

あまりの剣幕に、何故か言い訳がましくなるダメ親の私。

 

「大丈夫だよ、プン助。どうしたい?今、どうしたい?」

何故か、私よりも母親らしい感じで優しくプン助を宥めるニンタマ。

だが、プン助の泣き声はどんどん大きくなる。

「水飲むか!プン助」

 

こういう時には水を飲ませるのが一番だ。

 

いつもは「水持ってきて~」と、言われても、「自分でいれなさい!」
と、却下するのだが、大物俳優の付き人のようにそそくさと、水を持ってきてやる。

だが、中々飲もうとしない。仕方が無いので、プン助の口にコップを運んでやる。

 

と、一口二口飲んだ後、咽てゴボゴボと吐きだした。

飲ませてやった途端に拭くことになり、何かと忙しい。

「よしよし、大丈夫だよ、大丈夫だから」

と、やさしく宥め続けていたニンタマだったが、突然

 

「私風呂入るね」

 

と、いきなり風呂へ向かう。

10時には布団に入るので、確かにこの時点で風呂に入らないといけないのは、わかるが、変わり身早すぎないか?

しかし、どんなことがあっても、生活スタイルを変えないニンタマをちょっと尊敬。

それまで二人で対応していたのに、一人で、プン助に向かうと急に心許ない気持ちになる。

 

 

「ひどいよ~~~、何もできなかった~~~」

 

もう15分くらい同じことを言い続けている。

こちらも段々腹が立って来る。

少しはこっちの話に聞く耳を持ってくれよ。

 

「だから~!今からだってできるって言ってるでしょ?先に1時間半分寝たから、逆に一時間半分、色々できるって思えばいいじゃん!」

 

「もう無理だ~、できない~~~」

「じゃあさ、もう風呂はいっちゃいな。こういう時はさ、さっさと風呂に入るのが一番だよ!気持ちが変わるかもよ?」

「何もできなかった~~~!起してくれなかった~、一杯やりたいことあったのに、何にもできないまま時間が流れていく~~~~」

 

すると、脱衣所からニンタマの声。

 

「もう、早く謝っちゃいなよ!」

「え?」

「だから、早く謝っちゃいなよ!」

 

一瞬、ニンタマが何を言っているのかわからなかった。

一般的には子供が何かをやらかして、親に謝まっちゃいなよ・・・というのが、普通だろう。

でも、ニンタマはそういう意味で言っていないような気がする。文脈的にもそれでは筋が通らない。

 

「え?もしかして、ママがプン助に謝れってことを言ってる?」

「そうだよ。謝っちゃいなよ、ママ」

 

私が?私が何を謝るというのだろう?

起さなかったことをか?

いやいや、夜何もやらずに寝てしまったら起こしてくれ…とか頼まれていないし。

色々やりたいことがあったのかもしれないが、予定や希望を聞いていたわけでもない。

こんなことでひどいひどいと言われるのは、こっちからすると、チンピラに絡まれているようなものだ。

偶々息子だから、仕方ないと思っているが、謝る筋合いではない。

そう言えば、ニンタマは自分が悪くなくても、プン助が怒るとすぐに

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 

と謝り、時にはへらへら笑って土下座をしたりして、逆にプン助に嘘くさいと怒られたりしている。

 

「いやだよ!ママは謝らない。悪くもないのに謝るのはよくないよ」

「だって、こうなったらプン助は謝らないとどうにもなんないよ!さっさと謝っちゃいなよ!」

 

無性に腹が立ってきた。

「絶対に謝らない。あなたはすぐに謝るし、それがあなたの処世術かもしれないけど、ママは違うの。そういう時に謝るのはあなたの勝手だけど、そういう生き方はママはしないの!自分にとって正しいと思ったからって、ママにそれを押し付けないで」

つい強く言い返してしまった。

と、脱衣所から

「わかったよぉぉ・・・」

と、弱々しい声が聞こえて来た。

言い過ぎた・・・。これではニンタマの生き方を否定しちゃてるじゃないか。

傷つけてしまったかもしれない。

これ以上言わないで・・・と言わなかったものの、ちょっと泣きそうな声だった。

苛々は思わぬところに飛び火してしまう。

 

とりあえず、怒りを鎮めよう。誰の怒りだ?プン助の怒りか?私の怒りか?

よくわからない。

 

よくわからないが、困った時はスキンシップだ。

 

身を固くしているプン助を抱き寄せ、なんとかハグの体勢に持ち込んでみる。

 

最初は頑なだったプン助だが、私の胸と腹あたりに顔を埋めるというか、こすりつけ始めた。

抱き着いて来たというより、涙と鼻水とよだれを私の服で拭きたかったようにも思える。

緩いスライム状になった涙と鼻水とよだれはかなりの量だった。

若干気持ち悪いが、そんなことも言っていられない。

とりあえず、背中を撫でて、私もスーハ―スーハ―と深呼吸。

 

「ぼ、僕も、き、機嫌を直したいのに、どうしたらいいか・・・わからない。わからないまま、じ、時間が流れて行くぅぅぅ~~~~」

 

しゃくりあげながら、泣き続けるプン助。

時間が無駄に過ぎていくことに焦りながらも、何もできないことに苛立っているらしい。

やりたいことをする時間がどんどん減っている事だけは分かっているのだろう。

可哀そうに・・・。

でも、私も、どうすればいいのか、わからない。

よく、困っている人にはただ寄り添って共感しろというが、人の気持ちが落ち着くまでじっとしているのも結構しんどい。

退屈だし、他のこともしたくなってしまう。

私の時間もなくなっていく。

いいお母さんはそんなことを思ってはいけないのかもしれないが、私のやりたいことをやる時間も無くなってしまうよ~と、泣きたい気持ちになって行く。

 

プン助の背中も汗でぐちょぐちょだ。

 

体から色々液体を発しているし、興奮して体温も高そうだ。やはり、冷たい水分を与えたほうがいいのではなかろうか・・・。

さっきは水だったから、受け付けなかったのかもしれない。

 

氷入りのレモネードにしよう。

プン助はレモネードが大好きなのだ。日に何度も

「レモネード作って~」

と、言いすぎるので、最近は自分で作れるようにしないと・・・と、日に一度くらいしか作ってやらないことにしていた。

 

「しょうがない。サービスでレモネード作ってあげるよ。飲む?」

 

コクリと頷くプン助。

 

氷をたっぷり入れて持って行く。

ごくごく飲むかと思いきや、おちょぼ口でちびちび飲み始め、氷を口に含んでは、コップに吐き出す・・・という気持ちの悪い飲み方をし始めた。

 

何、この飲み方・・・、唾液がレモネードに入っちゃうじゃない。

 

ドン引きしながら、見ているが、注意はしなかった。

他所のお宅でこんな飲み方したら、出禁になるのでは?と、思うが、今は好きにさせておこう。

 

何分経っただろうか・・・。

 

プン助はずっとおちょぼ口でレモネードを啜り、氷を口に含んでは吐き出す・・・という飲み方を続けていた。

 

「ほら、大分氷小さくなったよ」

 

プン助は僅かに微笑みを浮かべて言った。

若干得意気でもある。

 

何?氷を小さくしたかったの?氷を溶かしながら飲みたいと思っていたの?

 

よくわからないが、何かいい兆しを感じる。

 

「あなたの飲みさしは、誰も飲めないね~」

 

と、私が笑うと、プン助もプっと笑った。

とりあえず、その雰囲気に乗じて並んで座って、押し合いをしたり、じゃれ合ったりしながら、

 

「もう、宿題はいいからさ~、風呂入って寝ちゃおうか」

「寝る前にさ、Amazonプライムで『ぼのぼの』

だけ観たい」

「しょうがないな~」

「ママも一緒に観るんだよ!」

「え~、ママも?しょうがないな~」

 

などと、話していると、風呂から出て来てすっぽんぽんのニンタマが、

なんだこいつら・・・と言う、しらけた顔でこちらを観ていた。

 

ふふん、あなたが風呂に入っている間に、仲直りしちゃったもんね・・・!謝れって言ってたけど、謝らないでも仲直りできちゃいましたよ!

 

11歳の娘に対して謎にドヤる気持ちが湧いていた。この程度のことで、得意気な気持ちになる自分のレベルの低さに、日々驚くが、とりあえず荒ぶる神を鎮めることは出来た。

よかった。

DV彼氏が暴れた後に彼女とスウィートに過ごすみたいに、私とプン助は傷つけあった心を癒すようにぴったり寄り添って、「ぼのぼの」を観たのだった。

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