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イエローさんから体育系なのか定かではない、激しい卓球の指導を受ける 

15時からクラブの卓球練習へ。股関節や座骨の調子が悪いので、悩んだのだが、ちょっとだけでもと、少し遅れて参加。

 

遅れていくと練習する相手を確保できないことがある。

体育館につくと、既にほとんど台は埋まっていた。入口付近に一人だけ練習相手がまだ確保できていないIさんがいた。私はそれまで、数回Iさんと練習をしたことがあるのだが、

「下手な癖にネットすれすれの球なんか打ってくるな!」

と、怒られたり、遊びでダブルスのペアを組まされた時も、「こんなとこに立っててもダメだろ!」と、怒鳴られたりしてひそかに涙ぐんだこともあるので、他の人が来るのを待つことにした。間もなくWさんが来た。女性でとても上手なカットマンの方。

早速練習相手をしてもらおうと、側へ向かうが、直後に見たことのない黄色いウェアのおじさんが現れた。

目が合ってしまったが、気づかない振りをして、Wさんの元へ行き、

「一緒に練習していただけたけますか?」

と、申し込んだ。

台は全て埋まっていたが、いつも私に親切に教えてくれるYさんが、クロスで半面使っていいよと、声をかけてくれた。なので、4人で一台の台でフォア側のコートを使わせて貰った。間もなくYさんは、俺は休むから…と、先ほど私がスルーした黄色いウェアのおじさんと交替し、その方(以後イエローさん)私の隣のバック側で打つことになった。

最初は普通にフォア打ちをしていたが、背後から

「全然ダメだね」

との声が聞こえた。

 

イエローさんだった。

驚いたが、適当にスルーして、練習を続けていると、

「ダメだ!ダメ、ダメ」

と、何度も私に対してのダメ出しが連発された。

その後、Wさんがドライブを打ち、私がカットをする練習をしていると、

「全然、ダメだね、そのカット」

と、何度も何度も言ってくる。そして、

「ちょっと貸してみて」

と、私のラケットを取って、自分が見本を見せ始める。

「慌てすぎなんだよ。もっと待って、打つんだ!」

「上半身、動かしすぎ」

「落ちてくるところを・・・こう!」

再度私が打ち始めると、

「ダメだ、ダメだ!」

と、またラケットを奪い取り、見本を見せる。

確かにとても上手で、言っていることはよくわかる。

 

だが・・・一体この人は誰なのだろう・・・。初対面なのだ。いきなりすぎではないか?と、困惑する。私はこの卓球クラブに出入りするようになって、まだ1年ちょっとなので、会ったことはないが、彼は他の人とは面識がある様子でもあった。

 

その後、練習を取り仕切っているリーダー格の人が、

「交代です~!台を左に一つずつズレてください」

と、号令をかけた。

曜日によって違うのだが、15分置きくらいに、場所をズレてペアを交代する練習をする日だった。だが、1台を4人で使っている場合、一つ場所をズレても、ペアは同じ人のままになる。私の練習相手のペアは次もWさんだった。

イエローさんは隣の台に移動した。

 

よかった・・・と、少しほっとした。

私は台のバックサイドの位置になったので、Wさんとツッツキという下回転でのラリーの練習をすることになった。すると、またもや

「ダメだ!ダメだ!」

の声がする。

隣の台に移動したイエローさんが、自分のラリーの相手をほったらかして、私の元へやってきて、また、見本を見せ始めた。

「右足をすぐ前に出すけど、それダメ!前に出しちゃダメなんだ」

「こう!球から距離をとって、振るないと、インパクトが足りないから、飛ばないんだよ」イエローさんが見本を見せた後、私が再度打ち出すと、

「こうだよ!こう!」

と、いきなり私の左と、右手首を背後から抱きかかえるようにつかんで来た。

 

最近、ご時世もあるし、コロナもあって、人に密着して教える・・・ということ自体が皆無になっていたのだが、いきなりガシっと抱え込まれるように、体をつかまれてびっくりする。

嘘でしょ?ギャグなの、これ?

 

しかし、教えてくれているしなぁ・・・全然頼んでいないけど・・・。

 

予期しない事態に困惑していたのは私だけではなさそうだった。私の相手をしていたWさんもイエローさんの言う通りだとしつつも、表情に困惑の色が浮かんでいた。そして、イエローさんの指摘は、いつも親切に教えてくれるYさんの指導とは真逆だった。Yさんはツッツキの時は、右足を前にするようにと、いつも私に口を酸っぱくするほど言っていたのだった。Yさんからすると、私は右足を前に出さなさすぎるのだが、イエローさんからは右足が前に出すぎ・・・と言われる。Yさんからすると私はまだ右足の出し方がまだ足りないようだったが、アドバイスのおかげで、自分としてはずいぶん右足を前に出せるようになったのは確かなのだ。だが、

「ダメだ、ダメだ!右足前に出すぎ!出すな!」

と、言われ、私の右足が急に動かなくなった。

 

気づくと、私の右足が動かないように、イエローさんが、私の右足を踏みつけていたのだ。

 

手首をガシっとつかまれた時以上の衝撃を受ける。

 

こんな激しい指導、高校の卓球部の時にも受けなかったよ・・・。

しかし、困惑しすぎて、不快を通り越して、面白くなってしまった。

その光景を、少し離れたところで、Yさんが困惑したように見ていた。

 

イエローさんの指導が白熱してきたので、イエローさんのラリーの相手は、他の相手を見つけて練習を始めてしまった。やばい・・・いよいよ、専属コーチみたいじゃないか・・・。

すると、そこへ少し癖が強いので、皆が練習相手をするのをやや敬遠しているSさんが遅れて体育館へやって来た。

Sさんはすぐにイエローさんに気付いて、近づいてきた。

「今、指導してらっしゃるみたいですけど、私、相手がいないんで、お相手してくださいませんか?」

Sさんは、強い口調でイエローさんに詰め寄っている。

だが、イエローさんは

「指導っていうか・・・ちょっとだけ見てるだけだよ」

と、言って、なかなか私の傍から離れようとしない。

「私相手じゃ嫌かもしれませんが、初心者の私の相手もお願いできませんか?」

と、Sさん。

Sさんは、ものすごく上手で海外の試合の審判などもしているという噂で、全然初心者などではない。だが、なぜか、やたら減り下るところがあり、私に対しても『お上手ですよね、私下手なんですけど、お相手していただけます?』と、言いつつ、『バック、ミドル、フォアの順番でコースをきっちりと振ってくれませんか』と、私にとっては難しい注文を付けて来たり、スマッシュを打ち込んできては『私は、今、打とうと思ったわけじゃなくて、回転がおかしい球をなんとか打ち返してこうなっただけなんです。よくあの人はすぐ打ち込んでくるって言われるけど、全然そんな気持ちで練習してはいないですから、そこのところわかってくださいね』と、暗にこちらが下手なせいと分からせつつ、こちらとするとどちらでもいいことを理解してもらおうとするような所があるのだった。

 

私に対しては「ダメだ、ダメだ!」「この足、動かすな!」などと足を踏んできたりするイエローさんが、Sさん相手にはタジタジと言った感じになり、二人は隣の台で練習を始めた。

私は解放されたのだが、次の交代に乗じて、イエローさんはしばらく姿をくらましてしまった。

その後、

「あの方、私と練習するの嫌みたいで、どっか行っちゃったんです」

と、Sさんは、他の方と練習していた私のところにやってきて、3人で打つことになった。

後にSさんは、私に

「いろいろな方が、あなたのところに教えに来るから大変ですよね~~。年取った男の人って、自分には教える権利があるんだって思い込んでる節があって、本当、困りますよね~~~~!あの方、うまいかもしれないけど、あんな古いタイプの卓球を教えられても、迷惑だっていうの。今は卓球も進化してるし、球もラバーの性能も変わってるのにね~~~~!」

と、イエローさんだけではなく、教え好きな人、特に男性に対して、本音というか不満をぶちまけて来た。

ここに同調すると、私が教え好きな人に迷惑している・・・と、いろいろな人に言われそうだったり、何か危険な気がしたので、曖昧にほほ笑む程度にに留めておいた。

その後、最初に自分の練習している台に入れてくれた後に、イエローさんと交替したYさん(いつも親切に教えてくれる方)からも

「俺が、あの台に呼んじゃったから、かえって悪かったね~。あの人はうまいんだけど、古い型なんだよね~、あとさ、右足前にしちゃだめだって言われたけど、あれは違うからね。右足は前にしないとだめだよ。そこだけは、絶対だからね」

と、言われ

Wさんからも

「いろいろおじさんたちに言われて、大変だね。私もいろいろ言うけどさ、全部聞かなくていいからね。全部聞いてたら大変だから。自分に合うなってやつだけ聞けばいいからね」

と、言われた。

 

家に帰って旦那さんに

「普通にレッスン料払ったら凄い高いところ、ただで教えてくれるから、ラッキーと思って、聞いてるけど、みんなバラバラなこと言うから、ちょっと大変なんだよね。ありがたいんだけどね~」

と、話すと

「教え好きな人にとっては、カモなんだろうね~。そのSさんのところには、誰も教えに行かないんでしょ?」

と、言われる。

考えてみると、子供の頃から頼んでもいないのに、やたらアドバイスをしてくる人が周囲にやってきて、ニコニコ話を聞いていると、いつの間にかいろいろ指図されるようになって、段々としんどくなって来たころに、言うことを聞かないと怒られたりする・・・ということがしばしばあった。

でも、最近は、そこまでのことはない。

いつの間にか、危険な人からは、指図をされたりする前に、逃げたり距離を置いたり、「ハイハイ」と言ってはいるが、聞いていないな・・・コイツと思われるようないい加減な聞き方ができるようになったのかもしれない。

 

だから、時折、イエローさんのような人に遭遇はしてしまうが、カモだと思われていたとしても、それは幸運だと思っている。

でも、次回イエローさんと遭遇したら、ちょっと考えようとは思う。

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荷造りしているのを姿を見るだけで具合が悪くなる!

プン助の荷造り。

明日からプン助は修学旅行。

旅行の保護者説明会で貰った書類には

「荷造りから旅行は始まっています。必ずお子さん自身に荷造りをさせてください」

と、書いてあった。

最もだとは思った。だが、プン助は小学生になって以来、時間割でさえ自分でやれたことがない。

最初のうちは親がつきっきりで、支度を手伝っていたが、連絡帳に持ち物を書いてこないので、推測で入れたりしていた。

次第に、「これはいる?」と聞いたりするだけで、癇癪を起すようになり、こちらが折角入れても、「重い!」と、出したりするようになってしまった。

そして、ここ1、2年のほぼ最後の30分くらいしか登校しないようになってからは、身一つでも登校すればいいだろう・・・といった状態になっている。

大好きなお友達に、誘われた遠出でも、荷造りが無理だから迷惑をかける・・・という理由で断わることもある。

ただでさえ、修学旅行には

「行きたくないなぁ・・・家にいたら、ずっと休んでいられるのに」

と、気が乗っていない様子。

「行ってみたら案外楽しいかもしれないよ」

と、行く気持ちになるようにこちらも努力をしているが、当日になってすっぽかす可能性も高い。

荷造りなんて、夢のまた夢。

しかし・・・おそらく遺伝なのだが、実は私も超絶荷造りが苦手なのだ。

私の場合、プン助よりは嫌なことも我慢してやる性質なので、幼いころより、忘れ物はたくさんしていたが、一応自分で時間割や荷造りはやっていた。

だが、稽古場などでも、いつも帰り支度に異常に時間がかかり、どんな現場でも、いつも一番最後になってしまう。

旅行の前日はほぼ一日中荷造りをしているのに、必ず忘れ物をしてしまう。

そして、荷造りはいつもとても苦痛。

誰でも荷造りは苦痛だと思いながら、頑張っているのだと思っていたが、そうではない人間がいることを最近知った。

荷造り超絶苦手な私の娘のニンタマは「荷造りって楽しいよね~」と、いつもルンルンしながら、支度をしているのだ。

あんな苦痛な作業を好きな人間がいるなんて…!しかも、私の娘が・・・!と、大層驚いたのだが、それならば・・・と、最近は私の旅支度などはニンタマに手伝ってもらっている。

「そんなに服はいらないよ」

「歯ブラシとかはこういう場所に入れた方がいいよ」

「これ、もう少し小さく入れられるよ」

「〇〇日間だったら、服は〇着あれば大丈夫」

と、的確なアドバイスをしてくれる。そんなわけでも、

「プン助の荷造りするんだけどさぁ、ニンタマ手伝ってくれない?」

と、お願いすることにした。

ちなみに、本来なら二人とも学校にいるはずの午前10時頃から支度を始めた。プン助はただの学校嫌い。ニンタマは、学校嫌いもありつつ一応起立性調節障害で調子が悪い…ということで家にいたのだった。

「プン助、長ズボン、これでいい?」

「敷物はこれに入れておくからね」

「お風呂はこのカバンに入れて、汚れた服はここに入れてるビニールに入れるんだよ」

私とニンタマがプン助に質問したり、確認をするのだが、プン助はゴロゴロ転がるばかりで、ほとんど返事をしない。たまに口を開くかと思うと、

「絶対その服は着ない」

「あ~!行きたくない!」

みたいなことばかり。

 

以前、空手を習っていた時の合宿では、着替えを何着も入れていたのに、一度も着替えていなかったり、スキー合宿でも予備のマスクを沢山いれていたのに、三日間同じマスクをつけていたり、自分の持ち物を全然把握できていなかったので、すべてわかるようにジップロックに入れて、マジックで「パジャマ」「マスク」「下着」「お風呂セット」などと、書いていると

「荷造りしている姿をみるだけで、具合がわるくなる!」「マジックでそんなの書かないでよ!」

と、プン助は怒り始めてしまう。

「だって書かないとわかんないでしょ?」

「わかるよ!」

「だって、空手の時だって全然着替えなかったし、スキー合宿でもずっと同じマスクしてたりしてたじゃん!」

「なかったから!」

「あったよ!入れてたよ!」

「マジで?!あったの?ないと思ってた…」

ちなみに、その当時も全部わかるようにマジックで書いていた。

きまり悪そうな顔をしつつも、

「でも、マジックで書かないでよ~~~~!そんなの書かれたら、僕が支度したように見えないじゃん~~~~!」

 

私もニンタマも絶句をした。

 

「え?・・・もしかして、自分で支度をしたって思われたいの?」

「当たり前でしょ!人に支度してもらったと思われるの嫌だよ、僕!」

 

支度の為に靴下一枚、引き出しから出したりもしていなかったというのに・・・。

 

そうか・・・毎日、最後の30分くらいしか登校しないし、時間割をまともに持って行ったこともないので、そういうことは超越しているのかと思っていたのだが、そういう気持ちは残っていたのか・・・。

 

「いやぁ・・・でも、多分誰も、プン助が荷造りするとは思ってないよ。先生だって、一応荷造りは自分でって言ってるけど、荷造りが無理で来られないよりは、手伝ってもらっても来てくれた方がいいって思ってるって。大丈夫だよ~~~、そんな見栄張らなくても大丈夫だって」

「僕だって見栄くらい張りたいんだよ」

「まあ、そういう気持ちは大事だけどさ、この荷造りが自分でできると思われたら、今、遅刻しても忘れ物しても登校してるだけで、頑張ってるって思ってもらえてるのが、時間割もできるだろって思われちゃったりして、大変だよ?」

 

本来なら、自分でちゃんとやれ…というべきなのかもしれないが、家族そろってよくわからないアドバイスをしてしまう。

 

私が、出した荷物をニンタマがきれいにパッキングしたので、荷物は整然として美しい。

「頼んでもないのに、ニンタマの野郎が勝手にやりやがって…!」

と、毒づくプン助。

「そんなこと言わないでよ。ママがニンタマにお願いしたんだもん」

「私はね、お前の手伝いをしたんじゃないんだよ!ママが困ってるからママの手伝いをしたんだよ!」

「このズル休み野郎!」

「お前だってそうだろ!」

 

なんと、平和じゃない家なのだろう・・・、疲れる。

プン助が協力的じゃないので、荷造りは12時近くまでかかったが、私一人だったら、終わらなかっただろう。登校しないことは気になるが、ニンタマが家にいてくれてすごく助かった。

あとはプン助が無事に修学旅行へ行くことを祈るだけだ。

明日は7時に学校集合。

そんなに早く起きられるのだろうか?そして、やっぱ休む…と言いだすかもしれない。

そうなると、荷造りを手伝ったことが無駄になり、親である私のメンタルにも影響を及ぼすのだろうな…。

そうなっても、なるべくイライラしないで、淡々と過ごしたい。

できるかな…。というか、やっぱり修学旅行には行って欲しい。

参加しないで、「つまらない」と言うよりは、参加してから「つまらない」と言う人間でいて欲しいし、欲を言えば、少しでも「楽しかった」と思ってほしかったりする。

 

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53歳のヒヨッコ選手、卓球の試合に出て、あれこれ思う

卓球の試合。

朝8時45分にとある総合体育体育館へ。年代別の卓球の試合があったのだ。

昨年の6月に52歳にして、初めて試合に出て、かれこれ1年近くになる。年代別の試合も近隣の市がちょこちょこやっているので、三回目になる。

そうなると、

「あ、この前のめっちゃ強い人だ」

「掛け声がすごい人だ」

「悔しがり方がすごい人だ」

「試合中、セットとセットの間、ラケットを台に置いておかなければならないのに、私が手に持ったまま台を離れてしまったことを、本当はルール違反だからダメなのよ・・・と、注意をしながら教えてくれた人だ」

などと、なんとなく覚えている人が増えてきた。

 

試合が始まる前、同じ卓球チームの60代のお姉さま方と練習をした。ラリーが全然続かず、私が下手なせいで、相手の人の練習にならないのでは…と申し訳ない気持ちになったのだが、以前も、その申し訳なさを引きずって焦りまくって負けるメンタルのまま試合に臨んでしまったことを思い出し、ラリーが続かないのはおそらく私のせいなのだが、私のせいだけではないのだ!と、自己暗示をかけるべく頑張った。

 

私の出場する50代の選手は四十数名いて、4名ずつ11のブロックに分けられていた。ブロックごとに総当たりで試合をして、1位から4位を決め、1位と2位は上位リーグ、3位と4位は下位リーグとして、リーグ戦を行う運びらしい。

 

まずは、自分のブロックで最下位にならないことが目標。

50代の試合には三台の卓球台が振り当てられているのだが、11ブロックの全順位を決める試合を3台で行うだけでも、かなり時間がかかるなと気が遠くなった。

 

今まで、大概の試合には強い人もいるが、とりあえず経験してみたい・・・という私のようなヒヨッコ選手も数名紛れ込んでいる印象があった。なので、運が良ければ、私ど同レベルのヒヨッコ選手と対戦して、一回くらい勝てたらいいな・・・という淡い期待もあった。

だが、皆の練習している姿を見る限り、私のように体に軸がない感じにふひゃふにゃしたり、球を追いかけては追いつかずに、バタバタしたりしている選手は見当たらない。これは困ったことになった・・・。

だが、一人だけ、先月の年代別の試合で目撃したちょっと特殊な選手がいた。彼女は岩のようにドカっと立っていて、ほぼ動かない。サーブも、フォア、ミドル、バックと出す位置は変えるけど、一種類のサーブしか出さない。大概の選手は、ツッツキという下回転のレシーブを使ったりするのだが、彼女はツッツキもしない。ちょっとだけ曲がるけれど、上でも下でもない強めな打球ですべてを返球する。一見下手に見えるのだが、彼女のサーブのレシーブも、意外と癖があって返し辛そうなのだ。

「私が唯一勝てる可能性があるのは、彼女だけだろう…」

だが、高校時代も、その手の選手にあたって、ボロ負けした記憶がある。勝てそうだと、勝手に思い込んだ挙句に負けてしまい、苦い気持ちになるあのパターン。

どうせ負けるなら、圧倒的に強い相手に負けたい。勝てるかも…という相手に負けるほど、敗北感や悔しさは増し増しになるのだ。

ゼッケンで名前を見て、調べると、彼女は私と同じブロックだった。1試合目Wさん、2試合目Fさん、3試合目が彼女、Kさんだった。

WさんとFさんは、初めてみる顔で、顔だけ見ると、いかにも強そう…というオーラはなかった。あんまり強くないといいな…負けるにしても、1セットくらい取れたらいいな・・・。

そんな気持ちで、1試合目のWさんと臨む。だが、練習のフォア打ちを始めた瞬間に球の圧が強く、自分より段違いに上手いことがわかった。

そして、1セット目。なんと、11―0で取られてしまった。

私が弱すぎるのか、相手が強すぎるのかわからないが、0点で負けたのは初めてで、衝撃を受ける。2セット目と3セット目はなんとか1点ずつとれたが、どちらも相手のスマッシュミス。お話にならない負け方をしてしまった。ここ2週間ほど、自分としては随分練習したのだが・・・。きっとWさんは私の随分頑張った2週間の練習の数倍の練習を10年、20年単位でやってるのだろうなぁ・・・。試合が終わった後、お互いのラケットラケットを合わせて、「ありがとうございました」と、挨拶をする慣わしがあるようなのだが、Wさんの私に対する挨拶は、本当にそこらへんの虫に対するような、決して見下げるわけでもなく、存在としてカウントしてさえいない・・・という感じであった。

 

Fさんとの2試合目も、3-0でストレート負け。だが、こちらは11―6,11―3、11-5という、レベルは違うけれども、最低限、試合の体はなしていた気がした。サーブも、下回転のキレているサーブの後、無回転のロングサーブを出して、ミスを誘う・・・という試みがうまく行った瞬間もあった。それでも、やはり相手のスマッシュミスで得た得点が多かった。でも、ずうずうしいことを言わせてもらえば、自分がこの先頑張って少し強くなるとしたら、手の届く範囲内のような気もした。

 

そして、とうとうKさんとの3試合目になった。前回、Kさんを目撃していたことが、今日のこの試合のために伏線のようにさえ思えて来た。

ここをどう乗り切るかが、今後の卓球人生?いや、今後の人生にもかかわってくるような気もして来た。

実は、この試合の前に、KさんとFさんの試合を見て、その後、KさんとWさんの試合は、審判もやっていた。

Kさんは、Fさん相手には1セット目と2セット目は7点と、私よりも取っていたが、3セット目は2点で、ストレート負けしていた。そして、Wさん相手の試合でもストレート負けではあるものの、1セット目と3セットめは1点、2セット目では2点と、私よりも点を取っているのだった。

Wさんとの試合の最中、彼女は

「こんなのいつもの私じゃない!」

「球が見えてないんだよ!」

「ああ~、まけちゃうよ!やばいよやばいよ!」

と、ぶつぶつ呟いていた。

「いつもの私」という言葉がすごく気になった。

Kさんの「いつもの私」とはどのような状態なのだろう。彼女が私との試合で「いつもの私」になったら、私は負けてしまうのかもしれない。

 

Kさんとの試合の前に、3回フォア打ちの練習をする。やはり、Kさんの球は打ちにくい。普通に打つと、オーバーしてしまう。回転があまりかかっていないのに、勢いが強いので、こちらも余計な回転をかけずに、それなりに強く押し出すように打つか、いいタイミングをとらえて、きちんと下回転をかけて返すのがよいだろう・・・と、戦法を立てた。

ジャンケンで負けて、Kさんが最初にサーブ権を取った。カット(下回転)でレシーブしようとしたが、二本ともレシーブを失敗し、一気に二点取られてしまう。彼女のサーブはやはり返しづらい。私は下回転の短めのサーブを出す。彼女も二本ともネットに引っ掛け、レシーブミスをした。次の彼女のサーブもカットをしようとしたが、失敗したので、次は普通にはじくように打ってみると入った。だが、彼女も打ち返してくる。なんだかよくわからないラリーがだらだら続くようになった。強く打つとKさんは、結構な確率で打ち返してくるので、中途半端な強さでラリーを続けるほうが、私の得点になることがわかった。1セット目は11―8でなんとか私が取ることができた。

大体彼女の傾向が分かったつもりになり、次はもっと点を押さえて取ろうと思ったのだが、2セット目は、7-11で私は負けてしまった。やばい・・・このまま、負けてしまうパターンになってしまうかもしれない。冷静になって考えてみると、私は勝ち急ごうとして、いつの間にかだらだらラリーを続ける戦法をやめてしまっていた。そして、打たれたら、こちらも躍起になって打ち返していた。焦った気持ちのまま打ち返していたせいか、いつもだったら入るような球も全然返せなくなっていた。ここは、根気よくゆるい球を丁寧に返してだらだらラリーを続けようと、再度心に決めた。最初はKさんがリードしていたが、丁寧に緩い球を返し続けたら、彼女の方が焦って打ち込んでミスをするようになった。それでも、こちらがリードすると、彼女は追い上げてきた。3セット目はなんとか絶対に負けたくない!勝ちたい…という思いだけで、11―9で逃げ切るように3セット目を取ることができた。4セット目も油断できない・・・と、思っていたが、彼女は急に勝つ気がなくなったのか、ここはあっさり11―5で取れたのだった。

でも、勝利を喜ぶ気持ちには全然なれなかった。負けなくてよかった・・・という思いだけだった。よくわからないのだけれど、卓球だけではなく、あの局面で踏ん張れるかどうか・・・が、人生全般に関わっているような気がしたのだった。そこで踏ん張れない自分に会わないですんで、本当に良かった。

Kさんも「いつもの私」になれずに意気消沈しているかもしれないが、私にとっては、なぜなのか、理由は全くわからないが、今後の自分の存続に関わる局面になってしまっていた。

「助かった・・・」

下位リーグは、時間短縮のため、2セット先取した方が勝ち・・・というルールで進み、アッという間にストレート負けをした。相手のTさんは、その前に別のAさんという選手と対戦してぼろ負けするのを見ていた選手だった。Aさんとは、私も昨年の10月に一度試合をしたことがあった。本当に強い選手で、私はどのゲームも1、2点しか取ることができなかった。当時の印象では、近隣の市の50代の中では1,2位を争う強さだと思っていた。そのAさんにぼろ負けしていたTさんではあったが、明らかに私よりベテランなのはわかった。それでも、1セット目では4点しかとれなかったのが、2セット目では9点も取れた。自分としてはまあ、健闘したのではないだろうか。

 

そして、Tさんに勝って上位リーグに進んだAさんは、リーグの一戦目で私が今日一番最初に試合をしたWさんと対戦していた。そして、Wさんにストレート負けをしたのだった。Wさん、最初は全然強そうに見えなかったのだが、私が最強と思っていたAさんより、圧倒的に強かったのだ。後で結果発表を見て知ったのだが、Wさんは50代女子の部門で優勝していたのだった。

「そりゃ・・・0点とか1点とかしか取れないわけだよな・・・」

 

試合後、Wさんと挨拶をした時のことを再度思い出した。目の前にいるのに、一切視界にはいっていないかのような表情だった。

なるほど・・・戦国の世なら、武将が足軽の死体を見るような感じだったのだろう。

10月に試合をしたWさんは、挨拶の時には目を合わせてとりあえずは微笑んでくれたのだが・・・。

 

自分の試合を待っている間、他の選手の試合で飛んできた球を拾って渡すことが多々あるのだが、そういう時に、凄く丁寧にお礼を言う選手と、とりあえずお礼だけは言ってるけど、大分心無い選手と、お礼をいうどころか、こちらを見もしないで球だけ無言で受け取る選手がいる。

絶対とは言えないが、見もしないで無言で球を受け取る選手は、大体すごく強い。

礼儀のある無しではなく、それだけ集中しているのだろう。

私など、お礼を言うなと言われても、言わないことに耐えられずぺこぺこ頭を下げてしまう人間なので、逆に一切お礼など言わない人の方が清々しくてカッコいいようにも思えてしまった。本当に強かったり力があったら、とりあえずいい人に思われようとすることに余計なエネルギーを使わなくなれるのかもしれない・・・なんてことを考えた。

 

それにしても試合は練習よりも、動くわけではないのに、かなり疲れる。

ここ2週間、真面目に練習をしたせいで、股関節や座骨の調子が悪くなっていたのだが、帰りは普通に歩くのもままならなくなっていた。足を引きずりながら帰る。

来週は、少しメンテナンスをしよう。強くなることより、やり続けられる体でいることが、やはり一番だ。

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