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ある春のレアな日

今日から、一応春。

 

昨日、期末テストが終わった。

 

1月末から、ほとんど学校を休んでいたニンタマは期末テストだけは受ける・・・と先週の金曜日から三日間登校した。

テストの翌日の今日、どうなるのかな?と、様子を見ていた。

一応、着替えて準備をして登校するつもりのようだが、今までも玄関まで行って、「お腹痛い」「ふらふらする」と言いだすこともあるので、まだわからない。

私が渡した体温計では、36度8分だったが、「別の体温計がいい」と、別の体温計を持ってしばらく姿を消した。そして、37度2分と表示された別の体温計を黙って私に見せた。

「行かなくていいよ」

と、言って欲しいのかもしれない。でも、黙っていた。

その後、玄関から出ようとする前に、2回ほどお腹を押さえて苦しそうな顔をして、何かを言いかけてはやめ、登校した。

 

「大丈夫」「しんどいなら、休んでいいよ」

などと、声をかけるべきだったのだろうか?

 

しかし、学年末テストの三日間、普通に登校したことで、ずっと休んでいた後より、違和感なく教室に入りやすくはなっているだろう。

休み続けてしまったことで、行きづらくなっているのであれば、今日はキツく感じても行けるタイミングで登校した方が気持ち的に楽になるかもしれない。

でも、本当に登校が無理なのであれば、行かない方がいい。

 

背中を押したほうがいいのか、止めてあげたほうがいいのかは、まだよくわからないが、本人が模索して学校との関わり方を決めていくしかないのだろう。

無理強いせずに背中を押す…のが良いのだろうが、なかなか難しい。

 

ニンタマが登校した後、家にはまだ寝ているプン助がいた。

常に遅刻が常態化しているプン助だが、水曜日は大好きな通級教室がある日。

毎日、通級だったら毎日行くのに!と、言うほど楽しみにしているのだが、昨晩、親が寝た後もしばらく起きていたプン助は中々起きられない。

 

何度起こしても、起きなかったのに、目が覚めた途端、「なんで起こしてくれなかったの!」と、切れ気味。

「パン食べる?」

「カレー食べる?」

と、面倒を見てあげている旦那さんに、罰を与えるかのように

「いらない!」

「食べない!」

と、怒鳴るのだった。

 

通級の連絡ノートに

「プン助君、タブレット持ってきてね」

と、書いてあった。

学校から支給されたタブレットは基本、毎日持参しなければならないのだが、ここ最近プン助は重いと言って、持っていかなくなっていた。当然、タブレット経由で出されている宿題なども無視している。

「いつも5,6時間目からしか行かないからって言っても、タブレットないと困らないの?」

と、聞いても

「困らない!」

と答えるだけ。

おそらく授業をまともに受ける気はないのだろう。こうなると何を言っても無駄なので、こちらもそれ以上言わなかったが、連絡ノートに書いてあった以上、持たせない訳にもいかない。

 

「通級の先生がノートに書いていたんだから、通級で使うのかもよ」

「違う、通級で使うわけないじゃん。多分担任の〇〇先生が、『私が言っても持ってこないので、通級の先生の方から言ってください』って頼んだんだよ、絶対」

なんと、鋭いのだろう。

私も薄々そうかな・・・と思ってはいたが。

 

「そうかもしれないけど、Y先生(通級の先生)が、わざわざ書いてるんだから、プン助がもっていかなかったら、Y先生が悲しむしさ、持っていきなよ~」

などと、苦し紛れの説得をすると、プン助はニヤニヤ笑って、

「かなしい~~~」

 

と、裏声で歌い始めた。

 

思わず吹き出しつつも、プン助の目を盗んでランドセルにタブレットを忍び込ませておいた。

だが、玄関から出ようとした瞬間、プン助は立ち止まりランドセルを開けて、

「重い!」

と、タブレットを出してしまう。

 

「お願い、持って行ってよ」

「やだ!」

「Y先生が、ノートに書いてるのに、持ってこなかったら、それはプン助の失敗じゃなくて、ママの落ち度だって思われる!ママがダメママだって思われるの嫌だから、ママの為にも持って行ってよ~~お願いお願い」

プン助に正論は効かないので、情に訴える方法しか思い浮かばない。

「やだ~!!!」

「ママのせいになるの嫌なの~!ママのお願い聞いてよ~!」

「やだ~~!」

などともめていると、旦那さんが

「お母さんかわいそうだろ!持って行ってやれよ!」

と、参戦してくれた。

本当はそこじゃないのだが、旦那さんが来てくれて、助かった。

「だって重いんだもん」

「じゃあ、他のもの出せ。お前どうせ、筆箱とかつかわないんだろ!筆箱出せばいいじゃん」

旦那さんが、筆箱を出す。

「筆箱は通級で使う」

プン助は慌てて、筆箱をランドセルに戻した。

「じゃあ、他のもの出せよ!」

旦那さんは、算数や漢字の教科書やドリルやノートをドサドサ出して、タブレットと筆箱だけをランドセルに入れた。

旦那さん、なんて大胆なんだ…。

「ほら、軽くなっただろ!」

「……」

プン助はまだ不満気で何か言いたげだったが、諦めて玄関から出て行った。

 

一件落着…と言った感じに、渋い笑顔を浮かべている旦那さん。

 

よくわからないが、とりあえず一心地ついた。

 

「数年前まで、子供が学校に行ってしばらく家にいないって言うのが、当たり前だったけどさぁ、二人とも登校してるのって、久しぶりだね」

「そうだね」

「すっごいレアじゃん、今日」

「本当だね」

 

などと言い合い、二人ともPCに向かってお仕事タイムに入った。

久々に平和だ。

子供が普通に登校するって、子供の為じゃなくて、親の為なんだなぁと実感した。

そう思うと、少し申し訳ない気持ちになったが、今度いつあるかわからないレアな日かもしれないので、申し訳ないとか思う無駄に時間に費やすのはやめようと思った。

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