近所のおじいさんとの距離感に悩む9年間
父の命日。もう、6年も経ったのか・・・。
ここの所、朝15分程、ちょっと歩いて近所の公園で鉄棒に30秒ぶら下がったり、足の筋を伸ばせる器具で伸ばしたりしている。
住んでいる集合住宅から少し歩く所に一軒家があり、いつも植木の手入れをしているおじいさんがいる。ここに住み始めてから、9年。このおじいさんとの距離感をどうするか、今も決めかねている。おじいさんの方は、おそらく何も感じていないのだが、私だけが勝手に、悩んでいるのだ。
住み始めた当初、おじいさんの住んでいる家の前の集合住宅が数棟、しばらく無人の状態で放置されていた。詳細は不明だった。
だが、時折おじいさんが、「ここは昔、アスベストで問題になったんですよ」と、近所の人と立ち話をしているのを盗み聞いたりはしていたので、何か問題があったのだろう。
おじいさんは、業者らしき人の車にも、時折注意をしていた。そして、鳥インフルエンザが心配だと、しばしば鳥の糞にホースで水をかけては流したりしていた。
誰かと立ち話をしているか、植木の手入れをしているか。とにかく、その道を通る時は大体いるのだった。
誰かに注意をしている時もあるが、親し気に話している時もあるわけで、私自身何か注意をされることをしている訳ではないのだが、なんとなく身構えてしまっていた。
だが、時々ウチに来て貰っていた母や旦那さんのお母さん達は、数日滞在している間に、すぐにこのおじいさんと色々な話をしているのだった。
年配の人達はオープンハートだなぁ。私も、見ず知らずの人と気楽に話して、その場限りの会話を楽しめれば良いなと思うのだが、小学校高学年くらいの年頃から、そういうことが苦手になってしまった。
一度まあまあ会話をしたら、きちんと知り合いになって、会えば必ずきちんとそこそこの話をしなければならないようなプレッシャーを感じてしまうのだ。旅先などであれば、その場限りの会話も楽しめる。だが、住んでいる場所で、話す相手が増えてしまうと、話したい相手と話す前に、それほど話したくない人と沢山話すハメになって、話したい人と話す前に疲れてしまったり、ちょっとパニックになってしまうのだ。
人と話すのは好きなのに、人疲れしてしまうので、家の付近では隣人以外の人付き合いスイッチをオフにしたいのだ。
だが、時々そんな自分を変えたくなる時もある。長々話すハメになって疲れるのなら、さっさと切り上げればいいだけじゃないか。自分のしたいようにできれば、別に苦にする必要なんかない。もっと気楽に人と語れる人にならないと!
そんな思いに駆られて、時々自分からおじいさんに「おはようございます!」と、話しかけてみたりもした。おじいさんは、満面の笑みを浮かべ、私の倍の大きさの声で「おはようございます!!!」と、返してくれる。だが、数日経つと、私はまた弱気になり、「きっと私のことなど覚えていないだろう、いいや、今日はスルーしよう」と、スマホを眺めるふりをして、気付いていないフリなどをしてしまうのだった。
無人だった集合住宅が建て毀され、新しくマンションが建てられ始めた。おじいさんは、やはり工事の人には時々注意をしたり、土埃を気にして、頻繁に道路に水をまいたりするようになっていた。マンション工事が終わると、おじいさんはまたふつうに愛想のいいおじいさんに戻った。
そんなこんなでコロナ禍に突入。学校も休みになり、遠出は控えるものの、子供らと近所を散歩したり、家の前を走ったりするようになった。
すると、「お!頑張っているね~」と、声を掛けられるようになり、おじいさんがこちらを覚えているのか覚えていないのかわからないまま、こちらも会話をするようになってしまった。私も、こんなご時世だし、ご近所の人を大事にしなければ・・・と、世間話をするようになった。
だが、最近またおじいさんと話すのが億劫になって来ている。他の人と話していると、多分こちらに気付いていないだろうと、道の端の方を歩いたり、木の陰に隠れるように歩いたりして、また知らん顔をするようになってしまった。
自分のテンションが高い日だけ、挨拶をして、なんとなくナーバスな日は木陰に隠れるみたいな日々が続いていた。
今日は、どうしよう・・・。話すべきか、話さないべきか・・・。
悩みに悩み今日は頑張ることにした。
「おはようございます!」
と、声をかけると
「おはようございます!毎日ご苦労さまです!」
と、やはり私の3倍くらいの声で返された。
毎日ご苦労さまって、ただの散歩なのだけど・・・。というか、毎日?って言っていたけれど、帽子をかぶってサングラスもかけて、日焼けしないように耳にかけるネックウォーマーをしている私を、覚えているということだろうか?
一瞬ギョッとしたが、私を認識しているということではなく、帽子をかぶって、サングラスをかけて、ネックウォーマーをしている人が最近、毎朝歩いているなぁ・・・という程度のことだろう。
というか、私はここ9年、おじいさんの存在をあれこれ思い悩んでいるが、おじいさんは、つゆほどもそんなことに気付いていないだろう。気づいていたとしても、全く気にしていないはずだ。だから、私は悩む必要なんかないのだ。
気を取り直して、近所の公園へ行って、鉄棒にぶら下がり始めた。
少し遠くの建物の影に、座っている男性がいた。
その人はここ、数日いつもそこに座っている。
30秒ぶら下がったので、別の器具に足を乗せて、足の筋を伸ばし始めたら、その男性は立ち上がり、その場から去ってしまった。
そういえば、前日も私が鉄棒から移動して足を延ばし始めると、立ち去ったような気がする。もしかして、私の存在があの男性を落ち着かない気持ちにさせているのだろうか・・・。
せっかくぼんやり座っていたのに、私が来ることによってその平穏が脅かされているのだろうか・・・。
そうだとしたらちょっと申し訳ない。でも、その気持ちはちょっと分かる気がしたのだった。
私も、些細なことに日々脅かされてしまう。
もっと、何にも脅かされない人間になりたい。
とはいえ、人を脅かしているかもしれないことがあることも忘れないようにしたいなぁ・・・などと、思いながら足の筋を念入りに伸ばしたのだった。
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