休日の朝食をめぐる、争い、葛藤。オレンジ一個で振り回される家族
最愛の母の誕生日。
しかし朝からだるい。
朝食に、旦那さんの実家から頂いた、オレンジを二つ剥いて食べたら、なんとなくお腹いっぱいになった。
昔は、朝食をきちんと作って出していたのだが、出しても、他のものが食べたいと言われて、残されたりすることも多く、ここ最近は、朝は各自好きなものを食べる感じに落ち着いている。
朝食の時間帯に、
「お味噌汁あるけど、食べる?」
「パン焼こうか?」
「目玉焼き食べる?」
「卵焼きが食べたいから作って」
などのやりとりはあり、緩く作ったりはするが、これが朝ごはんです・・・という感じではなくなっている。
それはそれで良いのだが、困っているのは皆が食べている時間帯にプン助が食べることが殆どないということだ。
今日も、皆が食べている間、ずっとルービックキューブをやっていた。
全員が食べ終わり、片付けも済ませて私も、掃除機をかけたりした後、ストレッチをして仕事をしようと算段をたてていた。
だが、ストレッチを始めた途端
「お腹減ったな」
と、私の周りをプン助がうろちょろし始めた。
「へ~、それは、あなたの感想でしょ?お腹が減っているのなら、なんか食べればいいんじゃない?パンも、ごはんもあるよ」
「お腹減ったな~」
「だから、そんな感想を言われても知らんよ」
「オレンジが食べたい」
「剥いて食べたらいいんじゃない?」
「どこにあるかわからない」
先ほど私が剥いたオレンジがあったのだが、旦那さんが、最後の3カットくらいを
「プン助、食べるか?」
と聞いた時、
「皆の唾とかついてそうだからいらない」
「ついてないよ」
「いや、いい」
「じゃあ俺が食べるからな」
というやりとりがあり、旦那さんで食べ終わっていたのだった。
「さっき食べればよかったじゃん」
「あの時は食べたくなかったの」
「じゃあ、冷蔵庫から出して食べなよ」
冷蔵庫をちょっと覗いて戻って来たプン助。
「ない」
「あるよ」
「ない」
「見つけられない」
「探した方が足りない。野菜室だよ」
「ない!」
「ある!」
こんなやりとりをしているよりは、私が取りに行った方が楽だし、早いのだが、ただ感想を言うだけで、人を動かそうとしてはいけない・・・と分かってもらわねばと、私も意地でも動かず、ストレッチを続ける。
やっとオレンジを見つけたプン助。
「皮がむけない」
「大丈夫、頑張れば剥けるから」
「むけない」
「ムッキー(皮むき器)使えば」
「ムッキーどこにあるかわからない」
「台所の引き出しか、食洗器だよ」
「ない!」
「ある!」
「ない!」
「ちゃんと探して!」
私のストレッチはまだ序章。最近、ストレッチを怠っていたせいで、座骨神経痛というか、脊椎管狭窄症の痛みがきつくなっている。今、頑張らねば、悪化の一途をたどる気がするので、このストレッチは死活問題なのだ。
やっとムッキーを発見して、とりあえず皮に切り目をいれたプン助。
「切り目いれたけど、剥けない!」
「じゃあ、ちょっと持ってきて」
「ママがこっち来て!」
「いやだ!他の人を動かそうとしないで、自分で動きな」
「こっち来て!」
「ママ、このストレッチしないと、今日一日腰が痛くてつらいから、やってるんだよ。好きでやってるんじゃないの。辛いことを頑張ってる最中に中断されると、またやるの嫌になっちゃうから、ママを中断しないで」
やっとプン助がオレンジを持って来た。
皮に一周切れ目がついていた。
「十字に見えるように、もう一周切り目いれな」
「できない」
「できるよ」
「できない、ママやって」
「いやだ」
仕方なくプン助が、私の側でムッキーを使おうとすると旦那さんから
「おい!そこは寝る部屋だから、そこでやるな!」
と、叱責が飛ぶ。
「ママがこっち持ってこいっていったんだよ」
「ママは、見せろっていっただけで、こっちで剥けとは言ってない」
最早すっかり不貞腐れているプン助。
リビングのテーブルの方へ行って、もう一周切れ目をいれる。
「やっぱり剥けないよ!」
「剥ける」
「力がないから無理」
「あのね~、やれなくても、汚くても剥くことはできるはずだよ。できないっていうのは、違う。ただ、なんとなく気持ち的に甘えたくて、人に手をかけて欲しいっていうのなら、理解できる。それだったら、わかるけど、できないって言い続けることで、人にやってもらう権利が得られると思ったら、それはよくない」
「違う!ママ嫌い!大嫌い!」
「うん、いいよ。ママはプン助のこと好きだから、全然問題ないね」
「あっち行け!」
「ストレッチ終わったら行くよ」
「今行け!」
「ストレッチ終わったらね」
プン助が不貞腐れて、トイレに行った。
ああ、私はまた失敗したのだろうか?こんな理屈で言い負かしても、全然ダメだ。あの不貞腐れる状態にしないで、お互い気持ちよく行く方法があったのではないだろうか。
かといって、こちらが何をしていても用事をいいつけてやってもらおうとする人間になってしまっては、よくない。いや、本当にそうなのだろうか?今は気が済むまで、要求を飲んで大事に向き合っていたら、そのウチ気が済んで、いつの間にかそういうことは卒業する…っていう話も聞いたことがある。でも、それは本当なのらろうか?
本当だとしても、私にそのキャパシティはない気がする。
しかし・・・今、頑張って、耐えて要求を飲んで暮らせば、後々いい感じになるのだとしたら?今頑張って要求を飲んだ方がよいのだろうか?
いやいや、どんどん要求がエスカレートして、自分で何もしないようになってしまう可能性だってあるではないか・・・・。
しかし、さっき私が、楽し気にスティッククリーナーを掛けていたら、自分もやりたいと言って、ちょっとだけ交替して掃除機をかけたりもしていた。あんな風に、全てを面白いことに転換できれば、違うのではないか?うーん、そんなことできるのだろうか・・・。
筋を伸ばしながら、色々葛藤していると、
旦那さんが、やって来て、テーブルにあった、オレンジをメリメリっと数秒で剥いた。
剥いてくれた・・・。
プン助が戻って来て、オレンジを見て
「わあ、剥けてる」
と、歓声を上げた。
「パパが剥いてくれたんだよ」
「ありがとう~パパ」
「お前さぁ、こんなのも剥けなかったら、災害があった時とか、無人島にたどり着いたりした時、真っ先に死ぬぞ。俺は、生き残って欲しいと思って、自分のことは自分でやれって言ってんだよ」
「いや、俺は、無人島では生き残るタイプだと思うね」
「へびとか、虫が来た時に、人にとってとって!って言ってたら、間に合わなくて死んだりするんだぞ。自分で、さっととれないとさ」
「普段は、とれないけど、そういう時だったら、とれるんじゃないかと思う」
「いや、普段やってないことはできないんだって」
先ほどまで不貞腐れていたプン助も、いつの間にか、楽し気な雰囲気になって、むしゃむしゃオレンジを食べていた。
助かった・・・。ありがとう、旦那さん。
やっぱり、個人対、個人になってこじれた時には、全く違う角度から第三者が入るのが一番だ。
私は無事にストレッチを終え、奥の部屋でPC作業を始めた。
10分後、
「お前、ふざけんなよ!食べた皿は片付けろって言ってんだろ!」
という旦那さんの怒鳴り声が聞こえた。
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