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スタンダップコメディ・フェスティバルと近藤サトとカルピスウォーター

この日も、スタンダップコメディフェスティバルへ馳せ参じた。

1996年に舞台でご一緒したことのある長井秀和さんが出ていた。

マダムゴールドデュオで活躍されていた頃は、不思議可愛い系の印象だったけれど、その後ちょっと違うイメージでテレビで活躍され、今は大分印象が変わっているけれど、今の姿の方が本来の長井さんなのかなぁと、思った。お元気そうな姿を観られ、感慨深かった。

この日は、笑いの手練れが多く、スリリングというより、安心して楽しめる回だった。なんと間口の広い催しなのだろう。

連日の公演でお疲れのはずの清水さんは、この日もパワー全開だった。命を削るような公演を1000本ノックのようにやっていると、どんなに疲れていても、スイッチを入れると、全開モードに突入するようになっているのかもしれない・・・と、思ったら笑顔を観ただけで、ちょっと涙ぐみそうになった。

 

同じ回に、高木珠里ちゃんが来ていた。公演が始まる前に気付いて、「ジュリちゃん!」と声をかけたが、「誰この人」と、不審そうな顔で観られ、「私だよ、私、あらい!」と、言ったら3秒くらい

「え?」

という顔をした後、

「ああ!新井さん!」

と、気付いてくれた。

考えてみると、コロナ禍になってから、ほんの数回しか顔を合わせていない。私は舞台上のジュリちゃんは観ているが、ジュリちゃんは私を目撃することもなかっただろう。色々老け込んでいてびっくりしたのやもしれない。

終演後、開口一番

「新井さんは絶対髪を染めたりしないと思っていたから」

と、気付かなかった理由を説明をしてくれた。(私の今現在の髪型はショートの茶髪)

何と答えてよいかわからず、なんとなく

「ああ、私別に近藤サトを目指してたりはしないから・・・」

と、答えてしまう。

ジュリちゃんはキョトンとしていた。

 

最近、こういう事が多い。人に会って話をする機会が少ないからだろう。自分の狭くなった世界のことを、他の人も共有しているはず、そして同じような気持ちを感じているはず…と、思ってしまう。なので、さわりを話せば伝わるだろう・・・と、全ての説明をすっとばしてしまうのだ。

 

私の狭い世界の説明をすると、私はここ数年着物にハマっている・・・というのが前提になってしまう。着物を着る人の中には、色々はタイプがいて、私の勝手な分類では、

1、豪華に、或いは品よく盛るタイプ

2、素材が良く派手過ぎない着物(紬系)を品よく、貧相にならないように着こなすタイプ

3、着物って言ったって、ただの服じゃん、気楽に着ようよ!タイプ

4、古臭い概念をすっとばして、好きに着るけれど、今風にデコるタイプ・・・(和洋折衷コーデとか、結ばない帯結び等)

 

 

私自身は、3の、どちらかというとただの服じゃん、気楽に着ようよ!タイプなのだが、着物民じゃない人からすると、どれも区別がつかない。

最近よく着物界隈の雑誌やイベントに出没している近藤サトさんは、知性的でセンスの良い人が多い2のタイプだと、私は勝手に分類している。

そして、何故かその界隈にはグレイヘアにしている人が多い。

白髪になっていくことを美と相反することとはとらえず、それも美、それも一つの素材として、調和させていきましょう・・・的なことなのだろうか?

しかし、それが可能な人は凄く限られている。

お手入れにお金と時間を掛けられ、几帳面な人…こういう人に限って、「私って本当に面倒臭がりなんです」…みたいなことをいうので、本当に面倒くさがりな私は、そんな何の気ない発言に「おめーみたいに雑な人間なんかゴミクズカスなんだよ」と、言われているような被害妄想に陥ってしまうのだ。(もちろんそんなことは思っていない筈なのですが)

本当に上質な物をきちんと使いこなし、自分も上質でいられる人間だけが目指せる道。もしくは、髪が白くなろうがなるまいが、私の内なる輝きを損なうことはない・・・という絶大な自信を持っている人か・・・。

私は、自信なんか皆無だが、とにかくただ着物を着たいだけ。でも、着物を着るのはやはり面倒なので、あれこれ難しいことは端折って、なるべくハードルを下げて、気楽に気楽に着るようにしている。ダサくても着崩れていても、「私は洋服でも、裏表間違えますし、ボタンもよく掛け間違えてます!なので、着物だからと言って、きちんとなんか着ません!」と、言う謎の逆ギレ精神を奮い立たせて着るようにしている。

 

短くまとめると、私はグレイヘアにして着物を着るような上質な人間に対して、卑屈な気持ちや、やっかみの精神を根深く持っているのだ。

 

「髪を染めないと思った」=「近藤サト系」と、私の価値観で脊髄反射をしてしまい、

「いえいえ、近藤サトさまを目指すなんて、無理無理、私はもっと下層民です」

という意識があるのだが、なんとなく認めるのも悔しくて

「ああ、私別に近藤サトを目指してたりはしないから・・・」

という言葉が口から出てしまったのだった。

 

しかし、よくよく考えると、ジュリちゃんが(というか大体の人が)グレイヘアの近藤サトさんを私ほど気にしているかは疑わしい。

私は着物民なので、普通の人よりも、最近着物で出没している近藤サトさんに、目が行ってしまう。

そして「髪を染めない人だと思っていた」というのも、白髪染めだけではなく、若い頃からのカラーリングの意味合いもあったのかもしれない。

最近白髪が増えて来たので、つい「白髪を染めない人だと思った」に変換されてしまったのだ。だが、白髪に悩んでいない年代だったら、普通に黒髪好きでカラーリングを好まないタイプだと思っただけなのかもしれないのだ。

実際冷静になって考えてみると、白髪になっても白髪染めをしない人というより、元々オシャレで茶髪などにしないタイプだと思っていた…という解釈が一番近いのだと思う。

 

「絶対髪を染めなさそう」に見えていた理由はわからないが、数年前までは腰まで髪を伸ばしていたのもあるかもしれない。

近藤サトさんについてはそれ以上深堀りをしなかったけれど、小一時間お茶をした。最近起きた事件についての見解は、ほぼ一致していて、久しぶりに人と話した充実感を得た。

 

夕方には地域の人が主宰してくれているプン助の小学校での花火の催し。保護者が一緒じゃないと参加できないので私も付き添う。

何度も確認して、「参加する」と、言っていたプン助だったが、学校のイベントだと認識していなかったらしく、「俺、舞台を観に行くんだと思っていた。学校のイベントだったら行かないって言ったよ~」

と、終始不機嫌。

「何度も確認したよ」

「プリント見せて説明してくれたら、よかったのに~!ママのせいだ~!」

「はいはい、いいよ、ママのせいで」

などと言い合いながら、受付へ。

受付にはボランティアの保護者と、中学生たち。

 

ニンタマにもボランティアの募集が来ていたが、「絶対行かない」と、即答されていた。小学生のイベントを手伝ってあげようという心優しい中学生たちがこんなに沢山いるのか・・・と、尊敬の念を抱いていると、

「俺、本当は参加したくなかったんだよね~、しくった~」

と、プン助がわざわざボランティアの人に説明し始めた。

 

なぜ、わざわざそんな説明をするのだ・・・?

 

この保護者や、中学生たちは、おそらく小学生の喜ぶ笑顔を見たい!という善意でわざわざ来てくれているというのに。参加したくなかったと心で思う分にはいいけれど、わざわざ報告するなんて・・・。

 

思わず他人のフリをしたくなるが、薄ら笑いでごまかす。

 

数人の友達と会って、軽くじゃれたりした後、ノルマをこなすような感じではあるが、数本の花火をやっている。

「帰りにカルピスウォーター貰えるんだって」

という友達の呼びかけで、猛ダッシュでカルピスウォーターを貰いに行く。

 

「ほら、よかったじゃない参加して」

私が声を掛けると、

「カルピスウォーター、●●(友達の名前)が大好きなんだよな」

と、今熱を出して休んでいるお友達のことを言い始めた。

「これは、お見舞いであげないとだよね~、でも、僕ちんも好きなんだよね~、ああ~、どうしよう~」

「どっちでもいいよ。あげたいと思ったらあげなよ。でも、惜しかったって悩むなら、自分で飲んだら?」

「ああ~、凍らして飲むとおいしいんだよなぁ~、よし、凍らせるぞ」

自分で飲むことにしたのかな?と思っていると

「やっぱり、これはお見舞いであげないとだね。よし!お見舞いで持って行こう」

 

こんなカルピスウォーター一つが大したお見舞いになるのかはわからないが、●●君のことが本当に大好きなのだなぁ・・・と、ほっこりした気持ちになった。

2,3年前までは誰と仲がいいの?とか、好きなお友達はいる?と聞いても、「誰が好きとかない。全員同じ」と、頑なに言い続けていたことを思うと、各段の違いだ。

ほぼ毎日、給食後くらいに登校しているのに、一応普通に登校していた時よりも、好きなお友達と仲良く付き合えていて、その点は良かったなと思っていた。

だが、その後30分以上、カルピスウォーターをあげるあげないで悩んで、どうしようどうしよう・・・と言っているのには、さすがにちょっと辟易した。

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