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3月30日 苗場スキー旅行②

午前中、ニンタマのためにレンタルしたスノボセットが、午後まで使えるということで、急遽、十数年ぶりにスノボをやってみることにして、ブーツを履いて、そのまま板も履いた。

 

すると、ニンタマに「どっちの足が前なの?」と、聞かれて、さっぱりわからなかったのに、いざ自分が滑ろうとしたら、先ほどのニンタマの足と逆の左足前のスタンスで板を履いて、滑り始めたのだった。

 

そうだ、さっきは全然わからなかったのに、板を履くと瞬時に思い出した。私は、15年ほど前まで左足を前のスタンスで滑っていたのだった。

 

改めて周囲を見回すと、左足前のスタンスでスノボに乗っている人の方が圧倒的に多かった。おそらく、左足前の方が滑りやすい人の方が多いのだろう。

午前中、たまたま目の前の二人の女のコが右足前のスタンスで滑っていたばっかりに、午前中、ニンタマに右足前だよ!と言ってしまった。

あれは、若干レアな二人だったのかもしれない。

 

考えてみると、ニンタマは私よりは筋が良さそうだったが、去年滑った時に比べて、パッとしない滑りをしていたように思える。昨年は私の補助なしでも、リフトに乗れていた気もする。

 

左足前だったら、もっと楽に上手に滑れていたのかもしれない。

ごめん、ニンタマ…!

 

そんな風に詫びる気持ちはすぐに忘れ、私はスノボに魅せられていった。

 

最早滑れない・・・と、思っていたのに、意外と体は覚えていて、初めてスノボをやった時のような地獄のような思いはせずに、ゆっくりではあるが、すんなりと滑れてしまったのだった。

 

楽しい…!

 

結局一回だけどころか延々とスノボをやり続けたのだった。旦那さんとも別行動でスノボをやり続けていたが、ふいに子供らに「ママが意外にやれている」ことを目撃して欲しくて堪らなくなった。

 

ニンタマやプン助がレッスンしている所を見つけては、わざとらしく、近くを滑った。

コーチが一人一人の滑りを見ている間、待っているプン助の側に、スノボで近づいて、手を振ったりしたのだが、プン助は、面倒くさそうに小さく手を振り返すだけだった。

自分のことに精一杯で、いつもはスキー板を履いている母が、スノボを履いていることにも気づいてなさそうな反応の薄さだった。

ニンタマに至っては、ほんの一瞬すれ違う程度だったので、母が側にいることにさえ気づいていなさそうだった。

半世紀生きても、カマってちゃんモードが抜けない私は、旦那さんに遭遇して、溜まらず「私、数年しかスノボやっていなかったのに、十数年ぶりにしては、まあまあ滑れてると思わない?」

と、聞いてみたのだった。

これは、「本当だ!凄いね!」という褒め言葉のわかりやすい催促だった。

旦那さんはちょっと面食らった顔をしつつも「ああ…上手だと思ったよ」と、言ってはくれた。だが、旦那さんは旦那さんで、自分の滑りで頭が一杯でそれどころではないと言った様子であった。

「凄い!一応滑れてるじゃん!十数年ぶりにしては、上手いよ!思ったより、全然滑れてるじゃん!よかったね~~~!」

程度でいいので、誰か褒めてくれないかなぁ・・・。催促しないでも、誰か褒めてくれたら気が済むのに・・・。リップサービスで全然いいのだ。いや、もうリップサービスに飢えているんだ・・・!

私が、スノボをやるなんて、人生最後の可能性、大なのに・・・、最後の瞬間を誰かの記憶にとどめて貰いたい…!

ああ、来年はもう、来られないかもしれないし、来られたとしても股関節の調子が悪かったりで、全然滑れないかもしれない・・・。人生最後かもしれない、この瞬間・・・。

 

旦那さんとリフトに乗っていると、昨日絶叫していたカラフルウェア―の少年が、昨日のような絶叫ではなく、「ヒャッホー」的な叫び声をあげて、滑り降りて来た。あれ?もう、ボーゲンじゃない。両足のスタンスは広いけれど、平行で、腰も引けておらず、綺麗に板の上に立っている。

 

「凄い!あの子、昨日とは別人だね。凄い上達してる!筋がいいのかもしれない!」

「ああ、そうだね。ちょっとうまくなったね」

 

ちょっと?いやいや、ちょっとどころじゃないよ、凄いうまくなっているよ!

 

「だって、昨日はあんなにお尻突き出してたのに、今日はまっすぐ立ってるよ!叫び声にも余裕が出て来たし」

「あの年頃は、あんなもんだよ」

 

なんて、点が辛いんだ、旦那さん。

 

「おー、凄い!うまくなってんな~!」

くらいの反応があっても良さそうなのに。

 

そうか・・・。だから、私のこともうまくなったと褒めてくれないわけなのか・・・。

「いや、でもさ、私、スノボ始めた時なんて、3日間地獄を見たよ!転んだところから立ち上がる動作で、手がボタンを嵌められないくらい、筋肉痛になって」

「それは、特別だと思うよ。そんな人はあんまりいないよ」

確かに私は特別に筋が悪かったかもしれない。

「私はさ、飲み込みは悪いけど、一回、こういうことか!って自分の中で腑に落ちると、スッとできるようになるタイプなんだよね」

「俺、割と一日でうまくなったよね、スノボ」

 

しまった・・・俺の話になってしまった・・・。

「そうだね、割とすぐできるようになったよね」

そうなのだ。3日の地獄を見てから、急にコツがわかり、スノボにのめりこんだ私は、旦那さんにもスノボを勧め、「最初は地獄を見るけど、楽しいよ!」と、したり顔で言っていたのだが、旦那さんは一日で滑れるようになったのだ。しかも、私のように、転びまくらなかったし、起き上がれずにそのまま滑り落ち、入ってはいけなコースに落ちてしまって、柵にしがみついてもがいたりという地獄も味わっていなかった。

割と運動神経が良いのだろう。そして、3日も地獄を見た私は一般的に、運動神経が悪いと言われるタイプなのだろう。不本意だけど。

「凄くない?俺」

「いや、凄いなって思ったよ」

確かに凄いなと思ったけれど、3日地獄を見ても、くらいついて頑張る私も、凄くない?嫌になって諦める人だっていると思いますよ・・・?筋のいい人が、普通にやってちゃんと上達するのも凄いけれど、筋の悪い人が、一日100回以上転んでもめげずに頑張るのも凄くない?

あの時、一緒に行った友達達は、「あんなに転んでるのに、頑張っててスゲーよ」って、言ってくれた気がする。

そうだ、だから、頑張れたのだ。

あの仲間達、最高だったな・・・。あの時の仲間達に今更ながら、感謝。あれも青春だったな。30代半ばだったけど。

 

50代の今も、15年後くらいに「あれも青春だったな」って思えるといいな。

 

「ニャーちゃん(旦那さんのこと)も凄いけど、私も凄いよね。50過ぎて、こんな股関節も悪くて、もうスノボは絶対無理だって思ってたけどさ。致命傷追うかもしれないスレスレなのに、やっちゃうんだよ?凄くない?」

 

「・・・まあ、凄いんじゃない?」

無理やり言わせた感満載だけれども、一応「凄い」を貰ったぞ・・・。

大人になるにつれ、誰にも褒めて貰えなくなったので、こうやって、自画自賛したり、無理やりでも人に褒めてもらって、気分を上げて行くのだ。

子供らもいないので、早めに上がろうとおもっていたのに、スノボを満喫しすぎて、やはり5時ぎりぎりまで滑ってしまった。

 

夜ごはん。

昨日の居酒屋Aの大失敗があったので、今日こそは失敗したくなかった。負のオーラに満ち満ちた、居酒屋Aの雰囲気がちょっとでも漂っている店には行きたくなかった。昨日見て歩いた限り、一番活気がありそうな店は、「雪国に来てまで沖縄料理もね~」と、スルーした店、「琉球酒場H」に行くことにした。

 

店に入った途端に「いらっしゃいませ~!」と、元気な掛け声。検温と消毒を経て、中へ。沖縄音楽が鳴り響いている。ホールのお兄さんは、見るからに美味しいお店にいる人・・・と言った顔だった。

頼むものの半分は、売り切れだったりしたが、居酒屋Aのようにやたら種類が多いのに、全て冷凍な上に、出されたものは酸化した油の匂いがする店に行った後だと、それもまた信用できるような気さえした。

 

頼むものが、全ておいしい・・・。全然沖縄料理ではないけれど、舞茸の天ぷらは、ちょっとジャンクな味とサクサク感が最高で、食べたことのないようなおいしさだった。

昨日のことを思うと、天国と地獄のようだ。

食べ物がおいしくて、感じの良い場所にいるということが、ここまで、幸せに満ちたものだとは・・・。

「おいしかったね」を連呼しながら、ペンションへ戻り、ネットフリックスで何か映画を観ようということになった。

 

私は色々観たい作品があったが、旦那さんが最近の風潮を鑑みて、もう観られなくなるかもしれないから、「新宿スワン」を観よう!と、言い出した。

 

「そうだね、いつみられなくなるかわからないね!よし!観よう!」

 

と、観始めたのは良いのだが、いい感じに酔っぱらいすぎていて、「豪華!あらら、危うい人がいっぱい出てる!」「あれ?この人は敵だっけ?、味方だっけ?」「いつの間にこんなことになったの?」などと、言っているうちに眠くなってしまった。

映画は素面で観ないとダメだな。。。

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