行き渋りはタブレット弱者のせい?
昨晩8時には学校へ行く!と、豪語していたプン助だったが、8時過ぎても、全く行く気配がない。
社会の調べものの宿題をやらなければ…と、木曜日から言っていたのだが、土曜日、日曜日と、全くやらず、昨晩に
「明日、朝早くやるから起こして」
と、頼まれていた。
6時から30分おきに声をかけたが、
「わかってるから大きな声出さないで」
と言うので、
「起きられなかったんだから、社会の調べものの宿題、やらなくても行くんだよね」
と、確認すると頷いていた。
だが、8時になっても、全く行く気がなさそうだ。
だ何で行かないのかを聞いてみると、
「社会の調べものが・・・」
と、モゴモゴ言うのだった。
「じゃあ、もう今からやればいいじゃん。どのくらいでやれそう?」
と、聞くが、床に寝そべって消しゴムを転がすばかりで全く答えない。
そこから、30分ほど、怒鳴ったり泣いたり、宥めたり、抱きしめたり・・・を経て、少しだけやる気になったプン助。
テーブルに筆箱など出して、お膳立てしてやるが、タブレットを出し始めた。
タブレットでやる宿題だったのか…?
タブレットで、パラリンピックの選手や競技などを調べ始めたので、
「パラリンピックの何かを纏める宿題なの?」
と、聞くも「教えない」と、秘密主義。
その間、洗濯物などを干していたら、起きて来た旦那さん相手にプン助が何やら訴えていた。
「背景がこの色じゃ嫌だ」
とかなんとか。
最初、宿題と背景の関係が分からず、何をやっているのだろう?と思っていたが、どうやら、タブレットでレポートらしきものを作成する宿題だったらしい。
いつも、何が宿題か聞いても教えてくれないので、分かっていなかったが、慣れていない人にとっては、30分やそこらでやれることではなさそうだ。
やろうとしては苛々して、寝転がって
「できない~~~」
と、癇癪を起していた。
旦那さんが、やってあげても気に入らないらしく、怒っている。
「先週の木曜日に、社会の調べものは早くやるって言ってたよね。先生にやっていくって約束したんでしょ?約束したから、やらないままでは学校いけないって思ってるんでしょ?やった自分じゃないと学校へ行けないって思ってるんでしょ?」
コクリと頷くプン助。
「それは見栄だよ。できないのに、できた自分じゃなきゃ行けないのは、実際の自分よりよく見せたい見栄だよ。見栄を張りたいなら、パパにやって貰ったっていいじゃない」
「違う!見栄じゃない!」
「いいや、見栄だね。見栄じゃないなら、できなかったからパパにやって貰ったって言えばいいじゃん」
何か腑に落ちない感じで心を閉ざすプン助。
「見栄を張るのは悪いことじゃないよ。ママだって、できないかもって思う事、できますって顔をして、引き受けてパニックになることはよくあるよ!でも、パニックになったら、パパに相談したり、泣きついたり、案を聞いたりしてそこは恥も外聞もなく頼るよ。学生の時は、書けないレポートとか、親切な人に頼んだり、お金払ったりして書いて貰ったりもしたよ!見栄を張ってその無理を通したいなら、そこはカッコつけてらんないよ!それでもできないときは、そこは無理だって言うんだよ!」
私が、全く自慢にならない演説をしている脇で、黙々とプン助の宿題をやっている旦那さん。
「はい、プン助。これでいい?」
タブレットで、パラリンピックの競技についてのレポートが出来上がっていた。
書いてある文面が、明らかに子供のものはない。
「パパにやってもらったって言えばいい」
と、旦那さんは、身支度を整えて買い物へ行ってしまった。
「こんなんだったら、やってもらわない方がよかった」
「パパにやって貰ったって言えばいいじゃない」
「それも言いたくない」
「じゃあ、全部消せばいいじゃない」
「それも嫌だ」
と、プン助は寝転がって漫画を読み始めた。
「ちょっと、人が真剣に話しているのに失礼じゃない?」
無視。
「あのさぁ、自分のことを何かやれる人間だ、頭がいいって思ってるかもしれないけど、それだって、何もやらなかったら、何にもならないよ!」
やはり、無視。
「ママが怒っているのは、ちゃんとやるから!と言って、YouTubeとか漫画みたり、とか、お菓子とかジュースとかねだったりして、無理やりにでも思いを通して、報酬だけ先に取るくせに、その後対価を払わないことなんだよ。それは詐欺だ!おうちだから、警察とか呼ばないけれど、犯罪だよ?いいのか?そんな人間になって」
ああ、ヤバイ。段々止まらなくなって来た。酷い事を言い始めている。しかし、やはり無視される。
「やるやるって言って、やらない癖がついたらダメだよ。この人って自分でやるって言ってた事、全然やらないんだな・・・って思われたら、こっちが本気のつもりで話しても、皆、どうせまた、言ってるだけでしょ?って信じてくれないよ?!親子だけどさ、やっぱり信用って大事なんだよ。貯金と一緒でさ、小さな信用をコツコツ積み重ねていくもんなんだよ?自分にだってそうだよ。やるって言ってやらない自分が当たり前になっちゃダメなんだよ!」
ああ、辛い。私も、20才の頃から、小説家になりたい…、書かなければ死ぬに死ねないテーマがあるとか言っていたのに、もう50歳超えている。プン助より、余程終わっているではないか。もう、プン助の目は何か別のモノを見ているようだった。
「ママの言葉聞いてる?理解している?」
ガラス玉のような瞳で、私の顔を見ている。
「ママの顔に、目ヤニがついてるな?とかそんなことを思いながら聞いてた?何か叫んでるけど、シミがあるな…とか思ってた?」
と、プン助、プっと笑った。
「目ヤニある?」
首を振るプン助。
「ママさ、顔を洗う間もなかったから、目ヤニでもあるかと思ったよ」
プン助の顔は涙で濡れていたが、噴き出したせいか、ガラス球のようではなくなっていた。とりあえず、その隙を狙って
「まあさ、とりあえず、ちょっと泣いたり、ギュっとしたりして、気を取り直してから、学校行くか」
と、言うと、頷いたので、それから暫く抱擁した。
「泣き虫プン助」
と、言いながら頭を撫でてると、プン助は涙と鼻水を私のTシャツで拭いていた。
10時半過ぎていたので、教室まで付き添う為に一緒に登校した。学校に近づくにつれ、「もっとゆっくり歩いて」
と、普段の三分の一くらいの速度で歩くプン助。
学校へ入っても、階段を足で登らず、手すりにしがみついて、腕力で雲梯のようにして上る。教室へ入るのに、プレッシャーを感じている様子。
不登校の時期には、よく見られていた行動なのだけれど、5月くらいまでは遅刻をしてもスタスタ入っていた。6月に入ってから、学校へ行ったり、教室に入るのに、何某かストレスを感じている様子。
先生が、プン助を発見して、「おいで」と、誘導してくれるのだが中々入らない。他の生徒達も気付いて、「プンちゃん来たよ~」と、迎え入れているのだが、モジモジしている。PTA室に用事があったので、すぐ教室を後にしたのだが、プン助の手提げを私が持ったままだったことに気付き、届けに戻る。
プン助は、まだ荷物の整理をするふりをして、教室の後ろで座り込んでいて、私が手提げを渡しても、反応しなかった。
以前は、来てくれるだけでいいんです・・・という感じだった先生も、「あ、はい、座ってください」という感じの対応になっている。
まあ、これは仕方がない。いつまでも、来るだの来ないだの・・・とよくわからない態度でもモジモジしている人を構うのも面倒臭くなるのも当たり前だ。
だが、プン助としては、ちょっと居づらくなっているのかもしれない。
などと思いながら、他の生徒の様子を見た。
タブレットを出して、授業を受けていた。
生徒達のタブレットを見て、ビックリした。
どうやらプン助がやっていたらしい社会の調べものの宿題、パラリンピックの競技についてのレポートを、皆、開いていた。
どこかのホームページか?というくらい、綺麗な色を使ったレイアウトで、作成されたレポート。
え?これ、今の小学校4年生は、皆こんなことができるの?
私は、PCを20年くらいになるが、こんなことやったこともない。
ニンタマは、よくタブレットをいじって色々やっているがプン助は、ちょっとしたゲームっぽいことをする以外、全く弄っていない。
親のスマホでYouTubeを見たり、好きな漫画を調べたりはするけれども、それ以外で学校から配られたタブレットをいじっているのは見たこともない。
そうか・・・これなのだろうか?
最近、行きしぶりが出始めたのは、タブレット教育が本格化してきたのに、全くその流れについて行けていないことも原因だったのだろうか?
私自身PC、スマホ、タブレットが苦手な方ではあるけれど、同世代には一定数そういう人間はいる。でも、今の子供だと、それが苦手なことは、結構大変なことなのかもしれない。
色々悩ましい。
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