退院後の総括…そして、アルコールへの欲求
退院日。
昨年個室に入院していた時、隣の病室のおじいさんが昼は静かなのだが、夜になると一晩中ナースコールを鳴らし続ける人だった。
毎度の事らしく看護師さんも全く来ない。
痺れを切らしたおじいさんは
「おーい!誰か来てくれ~!」
と、叫び続け、やっと来た看護師さんが、おじいさんに「うるさいよ!皆寝てるんだからね」と、怒る声が聞こえる・・・という日々だった。
数時間置きにおじいさんの痰を吸う処置の音が聞こえたり、誰か来てくれ~、苦しいよ~というおじいさんの声がずっと聞こえてきて、その気持ちがシンクロして来るのか、自分にも形容しがたい恐怖が襲ってきて、トラウマになりそうな数日間だった。
あのおじいさんはきっと社会的にまあまあの地位にいて、家でも思い通りに生きて来たタイプの人だったのではないだろうか。
そんな人にも、老いや病は当然のようにやって来て、癇癪を起しても、思い通りにならない事態に直面し、耐えられずにナースコールをしたり、大声を出したりしていたのでは?と、勝手に推測していた。
そんな体験の為か、去年は病棟に蔓延る老いや死の気配にすっかり当てられてしまっていた。
だから、今年の入院手術が近づいてくると、手術自体よりも再びあの空間に滞在することを恐ろしく感じていた。
でも、今回は何故か、以前ほど恐怖を感じなかった。
なんとなく、個室よりも大部屋の方がそういう患者さんを間近に感じて、シンクロしてしまい、きついのではないだろうか?と思っていたのだが、今回はむしろ安心感さえあった。
今回隣のベッドに入院しているご婦人と、昨年のおじいさんとどちらの方が状態が悪いのかはわからない。
ご婦人は明らかにオムツで、しゃべることもせず、テレビを観ている時も、観ているのかもわからない虚ろな目つき。時折ベッドの手すりに、縋るようにしがみ付いている。人に自分の恐怖や痛みをまき散らすワケでもなく、色々なことを諦めて静かに耐えている感じ。
大部屋であっても、昨年のおじいさんみたいな人が隣であったら、やはり怖くて眠れなかっただろう。あのおじいさんも、大部屋だったらあんなに騒がなかったかもしれない。個室だから、寂しすぎて騒いだのかもしれない。そもそも、家族が普段の様子で、個室じゃなきゃ無理・・・と判断したのかもしれないし、本人が他人と一緒なんて嫌だ・・・ということでの個室だったのかもしれない。
個室とか大部屋とかいう問題でもなく、偶々周囲の患者さんが、静かに自分の不調と向き合う人達だったのと、私自身がケガをした直後よりも回復していたので、蔓延っている“気”にやられなかっただけなのかもしれない。
鎖骨以外にも色々不調はあるので、また入院、手術ということもあるかもしれないが、次回は迷うことなく、大部屋にしようと思った。
術後の経過も問題なく、すんなり退院できることになった。
パソコンやら本やら、重いもの持ち込んでいたので、稽古に行く前の旦那さんに荷物だけ、引き取りに来て貰い、ほぼ手ぶらで家へ帰ることが出来た。
家から徒歩10分程の病院なので、楽勝・・・と思っていたが、歩いてみると、一歩踏み出す度の振動が鎖骨に響いて、脂汗が滲むほど。
荷物を持って帰って貰ってなかったら、地獄だったな・・・。
一二週間くらいで、抜糸してたら、すぐに卓球だってできるはず・・・と思っていたが、自分があまりにも能天気だったことに気付いた。
取り出した鎖骨を支えてくれていたプレートを見せてもらったが、頑丈でとても頼りになる感じだった。一年間鎖骨にネジ留めしていたので、気楽に腕立て伏せなどやれていたが、あの支えがない生身の鎖骨には、プレートを止める為に入れていたネジの穴もいくつか空いているはずだ。ネジ穴がふさがるまでは、腕立て伏せなんてもっての外だし、重い荷物も厳禁だろう。
一年間骨にくっついていたので、少し骨や肉とも一体化していたはずで、剥がす時にもスッと抜けるものでもないだろう。周りの肉や骨に無理な力もかかったはずで、やはりその周辺はドーンとダメージを受けている。
良質なたんぱく質やカルシウム摂取を心がけ、早く動かせるようになりたい・・・。
そう思っていたのに、寝る前に冷蔵庫にあるビールを見てしまうと、飲みたくてたまらなくなってしまう。
アルコールは炎症がある時には厳禁・・・と分かっているのに、
「一杯くらいいいいんじゃない?」「痛みに耐えた自分にお疲れ様って意味で飲んじゃおっかな」
という誘惑の声が聞こえて来る。
冷蔵庫に手を伸ばしビールを取りかけるが、すぐその上にあったジンジャーエールに目標を切り替え、急いでプシュッと缶を開ける。
空けちゃったら、もうこれを飲むしかない。
これを飲んだら、お腹がタポタポになって、ビールを飲みたい気持ちも収まるだろう…。あーあ、ビール飲みたかったな・・・と、思いつつも、空けてしまったジンジャーエールを飲んでいたら、何故だかちゃんと打ち上げのビール気分になって来た。
どうやら、缶をプシュって開ける行為自体にも、何某かの効果があったらしい。
そして、微量ながらショウガの成分のせいか、体がカっとなる効果もある。体がアルコールとちょっと勘違いしてしまうような味わいもある。
このジンジャーエールは160ミリリットルのミニ缶で、近所のスーパーでは47円で売っている。発泡酒よりも安い上に、量も適量だ。
しばらくこのジンジャーエールを冷蔵庫に常備して欠かさないようにしよう。
250ミリリットルのビールに手を伸ばさずに、とりあえず一週間過ごせますように・・・。
そして願わくば、特別なイベントや人と会う時以外に、習慣的にビールを欲する気持ちも消え失せてくれますように・・・。
それにしても、退院した後の子供達の態度はあっさりしたものだった。
私だけが、会いたかったよ~~~!と、体を離しながらもハグをしたり、頬ずりをしたりしていたが、子供らは、じゃれついて来た犬をかまってやる・・・くらいの対応しかしてくれなかった。
「ママがいなくて寂しくはなかったかい?それとも、いなくて好き勝手できてよかったりした?」
と、聞いてみる。
「う~ん、両方かな」
まあ、そんなもんだろう。
寂しがられ過ぎても困るし、順調に育っていることを喜ぶことにするか…。
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