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テストを巡る母娘

早朝、旦那さんはお仕事で出かけて行った。

 

私は、7時頃から起きていたが、布団でゴロゴロして、8時過ぎにベッドを出たら、ニンタマは既に起きていた。

 

プン助は、熟睡。

 

ソファで漫画を読んでいるニンタマ。

 

昨晩もテストには行かないと言っていたし、もう行く気はないのだな・・・と、思いつつ、一言だけ声を掛けた。

 

「テストは行かないんだよね」

 

「行かない」

 

顔も上げずに漫画を読みながら答えるニンタマ。

 

一言だけのつもりだったのだが、モヤモヤが止まらず、その後も、つい色々言ってしまう。

 

「なんで行きたくなくなったの?最初は、テスト受けたいって言ってたよね」

 

「忘れちゃってたの」

 

「忘れちゃってた?何を?テストを?」

 

「そう」

 

忘れてたのか・・・、びっくり。いや、いやなことは考えたくない・・・ということで、気付かないようにしていたのかな・・・

 

「うーん、でも、最初、受けたいって言った時は、受けたいって思ってたわけでしょ?」

 

「そうだけど…」

 

「塾にも行きたいって言ってたのは、授業でわからないことが増えたりしてきて、わかるようになりたいと思ったり、勉強できるようになりたいって思ったからでしょ?」

 

「うん」

 

「じゃあさ、なんで勉強できるようになりたいって思ったの?」

 

「・・・」

 

黙った!・・・もしや、理由が思い浮かばないのか?

 

一瞬驚いたが、よく考えてみると、そういうものかもしれない。

 

出来たほうがいいらしい・・・と、漠然と思うだけで、自分だってわからなかった気がする。

 

今だって、勉強できた方がいい理由を、聞かれると、よくわからない。

ただ、勉強不足だったことは後悔している。

今からでも、色々な知識を得たいと思っている。

知識を得るには時間が足りなさすぎる・・・と、悶々としている。

今、知識を得る効率をあげるためにも、あの頃に戻れたとしたら、もっとちゃんと勉強しておけばよかった・・・と、思っている。

そのことをどうやって伝えればよいのだろう…。

 

テストは9時開始。

今は、8時20分。

もう、テストには行けないだろう。

ならば、勉強というよりも学ぶ…ということの意味を、せっかくだから、ちゃんと話し合ってみよう。

 

「勉強できるようになりたい理由・・・わからないかな?」

 

「うん」

 

「なんとなく、できたほうがかっこいいって感じかな?」

 

不機嫌そうな顔で頷くニンタマ。

 

「まあ、そうだよね。ママも、そうだったと思う。でもね・・・今は、もうちょっとやっておけばよかったなって、思…」

 

そう言いかけた矢先に、ニンタマに遮られた。

 

「わかったよ!いくよ!」

 

親身な親子の話合いをするつもりだったが、ニンタマは私にこれ以上何も言わせぬぞ!という感じで立ち上がったのだ。

 

「え?行くの?もう、無理じゃないかな・・・」

 

一瞬戸惑い、ついそう言ってしまった。

 

 

無言でソファにドスっと腰を下ろすニンタマ。

 

怖い、その顔、スケバンみたいだよ・・・。いやいや、折角行くって言ったんだし、行ける方向で考えてみよう。

 

テスト開始まで、あと40分弱。

 

会場は、歩いて20分程。

 

急げば、無理ではない。

 

 

「いや、無理じゃない。大丈夫。とりあえずバナナでも食べて、今から支度したら、大丈夫」

 

スケバンのような顔のまま、ニンタマは急ぎ、身支度を整えた。

 

バナナも食べないし、牛乳も飲まないで大丈夫だと言い張るので、とりあえず私も急いで、支度を終え、一緒に開場へ向かった。

 

 

開場近辺に、8時50分に到着。

 

時間にまだ余裕があったので、コンビニへ入り、お茶とウィダーインゼリーを買い、ニンタマに渡した。

 

休憩時間に、少しでも口にできれば良いと、カロリーメイトやおにぎりも勧めたのだが、いらないと却下された。

 

そのまま、開場へ行くと、明らかに小さい子ばかりだった。

 

小学校2、3年くらいの子ばかり。

 

そうなのか・・・。

 

無料のテストを受ける子の大部分はこれから塾などを検討していて、塾を検討するのは、こんな低学年の子ばかりなのだ・・・ということに、今更ながら、驚いた。

 

5の中でも発育がよく、中学生にしか見えないニンタマは、かなり浮いていた。

熱心な親は、低学年からちゃんとやっているのだ。

仕事が立て込むと、昼も夜もなくなり、子供に全く時間が割けなくなってしまい、時間がある時にだけ、思い立ったように親身になったり、教育熱心みたいになったりする自分の中途半端さを、申し訳なく思った。

 

 

数時間後、迎えに行くと、ニンタマは、朝の不機嫌さとは打って変わって、テンション高めだった。

 

「わかんなかったところは全部適当にやったから、全部最後までやれたよ~!」

 

マークシート式は、わからなくてもとりあえず、埋められるので、テスト当日にできなかった挫折感はあまり感じないものだ。

その分、結果が出た時に、ギョッとしたりするのだが…。

 

だが、とりあえず、面倒なことを済ませてすっきりしたように明るい表情を見せていて、安心した。

 

「ニンタマちゃん、お茶、全然飲まなかったよ~。ゼリーも、まだ蓋もあけてない」

 

 

緊張で、それどころじゃなかったのだろうか。

 

帰宅後、生ハムパスタを食べさせた後、ニンタマは友達と遊びに行った。

 

私は、ニンタマが持ち帰ったテスト問題を眺め、試しに算数の問題を解いてみた。

 

最初の数問は、スイスイ解けた。

 

よかった。

 

5程度の算数はまだできるのね・・・と、得意な気持ちになっていたが、途中から突然、難易度が上がった。

 

何これ?どうやって解くの?

 

さっぱりわからない。

 

大人の意地をかけても解きたい!と、思うのだが、30分くらい、うんうん唸ってもわからない。

 

マークシートだし、とりあえず、回答の中の1~4のどれかを選べばいいのだ。

 

回答の中の数字のどれがそれっぽいか・・・という逆算で、これかな?と、あてずっぽうで回答した。

 

まあ、この問題は、難しかったけど、次は大丈夫だろう・・・

 

と、次に問題にとりかかった。

 

「・・・」

 

これ?情報が少なすぎて、わからないよ?本当に、解けるの?

 

いいや、これもとりあえず、適当に回答選んでおいて、次だ、次!

 

そして、次の問題を見ると・・・

 

問題が日本語として理解ができない。

 

どういうこと?これ?何がどうなっているの!?

 

問題がわからない・・・という事態が起きるとは予想もしていなかった。

 

頭がプシュ―っとしてきて、吐き気がしてきた。

 

 

やめだ・・・やめ。

 

これは、明日解こう。

 

他にもやらなきゃいけないこといっぱい溜まっているしね・・・

 

まだ、国語、理科、社会と問題はあったが、もう見るのも嫌だった。

 

偉いな、ニンタマ。

 

こんな問題、わからなくても、ちゃんと向き合って、答え全部書いて来たんだ。

 

おかしいな・・・私、一応、ちゃんと大学出てるのに・・・。

受験は散々やってきたのに・・・。

 

脳も根気も衰えてしまったのだろうか・・・。

 

もう、あまり偉そうなことは、子供に言えないな。

 

でも、言わないといけないんだよな・・・。

 

中身も伴っていないのに、伴ってるふりして、偉そうなことを言うの、苦手だな。

 

策がなくても、あるふりをして、堂々としていられる政治家さんとか、ちょっとは見習った方がいいのかも。

 

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