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スキー旅行五日目

スキー最終日。

 

朝早起きをして、PC作業をしていると、ニンタマが起きてきて、

 

「6時に起こして!って言ったのに、どうして起こしてくれなかったの!」

 

と泣きだした。

こちらとしては全く記憶にないのだが、ニンタマは

 

「絶対言った!」

 

と、パニック。どうやら、早起きし冬休みの宿題をやりたかったらしい。

「いいじゃんいいじゃん、宿題なんて忘れちゃってもさぁ~」

と、言ったら、余計パニックになって

「やなの~!」

 

と、大泣き。

なんとか宥めすかして、

 

「20分でもいいからちょっとやったら?」

 

と、言うと

「もういい!明日やるから、明日は絶対に起こしてね!」

 

と、スケバンのように睨みを利かせてきた。

 

前日は、割と自分でテキパキ支度をしてくれたプン助だったが、今日は隙あらば、ニンタマや私に板を持たせようとする。

自分は先に行くのに、こちらが先に行くと、怒って拗ねて、3時間後くらいに謝る…ということを繰り返していた。

 

プン助がスキー場で行方不明になり、パニックになった私が、

 

「ママ怪我してるんだから、ニンタマちゃんがちゃんとプン助みてくれないと困るでしょ」

 

と、言ってニンタマを泣かせてしまった。

全員、疲れ気味で怒りっぽくなっていた。

 

股関節をかばいながら、滑るのにも慣れて来たので、プリンスゴンドラに乗りまくった。

 

「ママさぁ、プン君のアドバイス聞いて」

 

プン助が真面目な顔をして切り出してきた。

 

「プン君もまだ、あんまり上手にできないんだけどさ、ママ、パラレルターンをする時、足がちょっと三角になる時があって、そこ治した方がいいよ」

 

そもそも、プン助がやっているのは、基本大股開きでまっすぐ降りたり、急な斜面はなんとなく、曲がりくねって降りて来ているだけなのだが、まるで私と同じくらいか、あるいは私より上手な人が、敢えて気分を害させないように気遣いしながらするようなアドバイス。

しかも、実は自分でも実は自覚しているダメな部分を指摘され、絶句。

 

 

「だって…ママ、怪我してるから…思うように滑れないんだよ」

 

「そうだよね。でもさ、気を付けてるのと気を付けてないのは違うから。プン君もあんまりちゃんとはできてないんだけどね」

 

慰めているつもりらしいが、複雑。

しかし、自分が1年生の時に人の滑りに対して、何かを指摘しようという発想はなかった。うまいか下手かもよくわからなかった気がする。

 

私には優しくアドバイスしてくれるプン助だが、ニンタマには「全然うまくない」「下手」「全然かっこよくない」と、けなしまくって泣かせたりしている。

 

「ニンタマはママより上手だよ」

 

と、私が言っても

 

「ママの方が全然上手だよ!ニンタマちゃん、下手!」

 

と、言いはる。

ニンタマとプン助が喧嘩になり、怪我をしている私を盾にして殴り合いになるので、恐ろしくて仕方がない。

 

普通に楽しく滑りたいのに…。

それでも最後は、「もっと滑りたかった」と、満足そうであった。

私は怪我をしたが、子供ら二人は怪我もなく無事に済んでよかった。

 

その日も夕ご飯はカップラーメン。

運動の後だし、良質なたんぱく質を摂取したいのだが、外食する元気はなかった。

 

夜はだらだらテレビを見る。

もう消そうと思ったら、「3年A組―今から皆さんは人質です―」が始まり、つい見てしまう。

プン助もニンタマもドハマりしてしまった。

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スキー旅行四日目

朝、母が帰ってしまう。

 

見送りをしたかったのだが、プン助の支度に手間取っている間に、越後湯沢行きのバスに乗り遅れてはまずいと、バタバタしている間に、母は宿を出発してしまった。

これからは、子供らのことでテンパっても気持ちを分かち合える人がいなくなってしまう。

少々というか、かなり心細い。

昨日怪我した右の股関節は、起きてしばらくは、滑ったりなどとんでもない!という程、痛かった。

PC仕事をスキー場の休憩室へ持ち込んで作業することも考えたが、子供ら二人だけで滑らすのは現実的ではない。

どうしたものか…。

 

だが、色々動いている間に、股関節を曲げなければ、なんとか動けることが分かって来た。

階段を上る動きと、下に落ちているものを拾ったり靴下を履いたりするために腰を曲げる動作がヤバい。

階段を上る時は左足だけで登り、靴下はニンタマに履かせて貰ったり、でなんとかなりそうだ。

「ママが困った時にちゃんと助けてくれたり、ママが休みたいと言った時は休んでも良ければ、スキーやってもいいよ」

 

と、言うと子供らは大喜び。

長年の経験で、怪我をしてもスキー場へ行ってしまえば、テンションが上がって意外と滑ったりできてしまうような気もしていた。

 

とりあえず簡単なコースだけを滑って様子を見る。

案の定、意外と大丈夫だった。

 

股関節で良かったかもしれない。

これが、膝だったらごまかして滑るのは難しかった。

 

とにかく攻める滑りはやめて、楽に力を使わず、決して転ばないということに専念。

滑って、もう一度同じ箇所をやってしまったら流石にまずい。

プン助やニンタマが転んでも決して助けに行かないで。起き上がるのを待つ。

 

こちらが決して助けないと、意外と自力でなんとかすることもわかった。

今まで助けすぎだったのかもしれない。

 

午前中は、ちんたら楽な斜面だけを滑ったが、午後は一か八か、プリンスゴンドラで少々キツイコースにも行ってみた。

 

こちらも意外と大丈夫だった。

帰りに、湿布を買い足した。

スキーを滑るのは割と大丈夫なのだが、板を持ってブーツで歩くのはかなりしんどかった。

 

いつもよりも板が重くて長く感じる。

乾燥室は地下。

宿泊している部屋は3階。

 

事実上4階分だ。

右足を使えないので、左足だけで登る。

これが、結構疲れる。

ニンタマが傍で励ましながら、登ってくれた。

 

やっと3階までたどり着いたら、ニンタマがゲラゲラ笑いだした。

 

「ママ、廊下見て!」

 

というので、見て見ると、先にダッシュで階段を上って行ったプン助が、部屋の前の廊下に仰向け寝そべって這いまわっていた。

 

疲れたので、寝そべっているのだろうが、這いまわる方がつかれるのではないだろうか。

しかもスリッパを脱いで手に嵌めている。

そういえば、保育園でもお迎えに行くと中々帰らず、逃げ回り、廊下を仰向けで這いまわっていた。

自分には、仰向けで廊下をはい回りたい欲求が無いのでわからないが、遺伝子レベルでそういう欲求が組み込まれている生き物もいるのかもしれない。

 

 

夕食は外に行くのはつらいので、カップヌードルとパンで済ませた。

 

プン助がカレーヌードル。ニンタマが、きつねうどん。

私は、海老風味のラーメン。

 

3人で紙コップに分け合って食べた。

その後、イッテQを3人で観て過ごす。

 

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スキー旅行三日目

 

ここの宿はとても寒い。

前日、滑っている私に母がLINEで

 

部屋に入って上にジャケットを着て、布団に入っている。暖房もついてない。ホテルにいるのは苦痛だね。スキー場は暖かいのでしょう?つまらないし、菓子ばかり食べてしまった

 

と、送って来ていたこともあり、今日は、母もスキー場にやってきた。

足、腰を痛めているので、滑るわけではなく、休憩所などにいて、子供の滑りを見たり、本を読んだりするのだ。

 

母を無料休憩所に案内するには、送迎バスで送ってもらう南ゲートからかなり歩かなければならない。

私は、大人なのでスキーブーツでもなんとか歩けるが、子供らには少し大変かもしれない。

子供らに、リフトに乗って滑りながら、無料休憩所へ向かうか、歩いて行くかを尋ねると、

「滑って行く!」

とのことだった。

 

子供二人だけで、何度かリフトに乗せて休憩所に向かわせるのは少し心配だったが、ニンタマはキッズ携帯も持っている。

「プン助は、お姉ちゃんから離れるんじゃないよ。ニンタマはプン助ちゃんと見ててね」

と、言い聞かせ、母と休憩所まで雪道を歩く。

 

朝だったので、休憩所は空いていて、窓際の席に座ることが出来た。

すると、ニンタマから電話が来て、無事合流することが出来た。

 

この日は晴れていたのもあり、プン助も雪に埋もれることなくスキー場を横切って滑ることが出来たようだ。

 

「よし!おばあちゃんに滑っているところを見せよう!」

 

そう意気込んで、リフトに乗った。

母のいる休憩所の窓際から見えるゲレンデは限られている。

あそこにたどり着くにはどう降りたらいいだろう…と考えながら、子供らに

「こっちを滑るんだよ

と、指示したのだが、母のいる場所から、全く離れた所に降り立ってしまった。

 

もう一度リフトに登り、こんどこそ辿りつける…と思ったら、今度は私の指示を聞かずに、プン助が出発してしまい、さっきとは逆方向の全く違う場所へ降り立ってしまった。

 

母が待ちわびているであろうと、もう一度リフトに乗り、携帯を見ると、母から

 

「上から滑るよとか、どこで待っててとか、声をかけてください、下からだとわからないので」

 

と、LINEが来ていた。

リフトを降りて、

 

「見えそうなところまで降りてきたら、また連絡するから」

と、電話をして、ここぞというポイントにたどり着き、母に電話をした。

 

「今から滑るよ!リフトの三本目の柱の近くの林の辺りから見えてくると思うから」

「林?まあいいや、わかった」

 

満を持して滑り始めようとするが、またもやプン助が、

 

「まだ!」

 

と、制するのも聞かずにあらぬ方向へ。

 

 

「そっちじゃなくてこっち~~!」

 

と、叫んでもプン助の姿はどんどん小さくなって行く。

ニンタマには、おばあちゃんのいる方へ降りるように伝え、私はプン助を追いかける。

 

だが、意外に早いプン助に、中々追いつけない。

結局、母のいるところから大分離れた地点まで降りてしまった。

 

プン助を連れて、母のいるところまで戻っては、またリフトで昇る。

そして、母に「今から降りるよ」という電話をして、降りるということを繰り返すが、またもやプン助がどこかへ行ってしまう。

 

「わからないね~、ニンタマは見たけど、プンがちゃんと滑ってるのは全く見られていない」

 

わざわざ外まで出てきて見ているにも関わらず、降りてくる様を中々みられない母。

 

コースを替えてみたりするも、中々うまくいかない。

プン助をトイレに連れて行ってもらったりしているウチに、疲れてしまった様子。

 

「私が動画、その分、動画撮影するよ」

 

と、言って母には、もう休んでもらうことにした。

その後、長いコースのプリンスゴンドラに乗った。

プリンスゴンドラには、大斜面と呼ばれる場所があり、そこが少し難所。

晴れていて、雪の状態が良ければよいのだが、吹雪いていたりすると、ゴーグルも曇って来て、よく見えなくなってしまう。

幸い、晴れていたので、ちょっと難所も楽しく滑った。

プリンスゴンドラから降りる時もコースがいくつかあって、スキー場の端の方へ行ってしまうと、ゴンドラに乗るために、別のリフトで一旦登らなければならない。

その時、ニンタマがストックを落としてしまった。

どこで落としたか分からないので、もう一度乗って落とした場所を確認し、取りに行くことに。

ストックを落とすのは、新雪の積もっている場所が多く、ニンタマのストックも、柱の傍の新雪上に落ちていた。

 

探しがてら、ニンタマが新雪に足を取られて、転んでしまった。だが、すぐに起き上がり、ストック目指して降りて行った。

 

私はニンタマの転んだ場所の真上にいたが、このくらいの新雪だったら、私は回れる…と、思ってしまった。

ニンタマが転んだ所を颯爽と滑って降りたら、ニンタマも

 

「ママ凄い」

 

と、思ってくれるのではないだろうか?

ニンタマが、ストックの落ちている付近で止まった時にこちらを見上げたので、

 

「今行くから」

 

と、声をかけ、ニンタマの転んだ場所で優雅にターンを決めようとした瞬間…

 

「あれ?思ったより雪が深くて固い…」

 

と、思った瞬間、派手な転び方をしてしまった。

 

「ヤバイ」

 

十数年前に痛めて以来、常に地味に痛み続けている股関節に一瞬、あり得ない力が加わってしまった。

何故私は回れる…などと思いあがってしまったのだろうか…。

悔やまれてならない。

 

板も外れて無様に寝転がっている様をニンタマにしっかり見られてしまった。

何事もなかったように立ち上がり、外れた板を拾って履く。

股関節には衝撃は残っているが、動かせないことはなさそうだ。

 

とりあえずニンタマの元へ。

ストックを拾うのに手間取っているニンタマに変わって、ストックの先でグリップについているストラップを引っかけ、拾いあげた。

ドヤ顔をしている私に、

 

「ママ、さっき転んだよね」

 

と、言われてしまう。

 

「うん、ちょっとね」

その時は大丈夫だと思い、その後、何度もプリンスゴンドラに乗ったが、いつの間にか股関節がかなり痛くなって来たことに気付く。

母が心配して、ホテル内の薬局で、湿布や塗薬を買ってくれた。

 

帰りは、送迎バスの来る場所まで歩いて行くのが、かなりつらくなっていた。

板もいつもより長く、重く感じる。

 

プン助も心配して、私の板を持ってくれようとした。

ちょっとホロリとしたが、普段自分の板さえ

 

「重くて持てない!」

 

と、私に持たせようとするのに、無理に決まっている。

 

「自分の板、ちゃんと持ってくれたらいいから」

 

そういうと、プン助はいつもよりしっかりした足取りで、自分の板を持っていた。

送迎バスに乗り込むのも、一苦労。

これでは明日は滑れないかも‥というより、滑ってはいけないかも…。

 

あんなに楽しみにしていたスキーなのに、こんなことになってしまうなんて…。

元旦におみくじで「凶」を引いていたことが頭をよぎる。

 

あれは、気を付けて過ごせ…というお告げの意味もあったかもしれないのに、

カッコつけようとして、転んでケガをしてしまうなんて…。

 

ホテルに着くが、もはや階段を上るのが苦行。

痛めていない方の左足のみで階段を上ると、苦痛が少ないのでそのように上った。

エレベーター無しの宿で3階の部屋まで登るのはきつかった。

 

その日はたまたまホテルで夕食を頼んでいたのは幸いだった。

6時から夕食なので、行こうとするとプン助が

「オラはいかない、テレビを見る」

と、言い始める。

 

「え?ここで食べないと晩御飯無いよ?」

 

と言うが、

 

 

6時27分から6時57分まで、観たいテレビがあるんだ」

 

と、言い張るのだった。

 

とりあえず食堂へ連れて行かなければと、

 

「とにかく少しは食べないと。6時27分まではまだ間があるし」

 

と、説得して食堂を連れて行く。

だが、食事の最中も3分置きくらいに

 

「今何時?」

 

と、聞くのだった。

 

また、子供がおいしい!と喜ぶようなメニューが少なかった。

ようやくプン助の大好物のステーキが出てきた。

 

母が

「ほら、プン!あげるから」

 

と、ステーキを上げると、切りもせずに食いつき、かみちぎれなくて大変なことになっていた。その後、母が切り分けて、嬉しそうに食べている最中も、時間を尋ね、

 

「じゃあ、オラはこれからテレビを見て来るから」

と、席を立とうとした。

 

「え、じゃあこの肉はもう、こっちで食べるからね」

 

というと、

 

「ダメ!待ってて!」

 

と、ごね始めた。

 

「そんなの無理だよ。この後デザートもでるけど、いらないんだね」

 

デザートという言葉を聞いた途端、あっさり

 

「オラ、今日テレビはやめた」

 

と、席に残った。

 

肉をガムのように噛みながら、

 

「この後デザートはアイスだ」

と、嬉しそう。

「アイスとは限らないよ」

 

「いや、アイスだよ、オラみたんだ。ここに来た時、誰かがアイスを運んでいるのを」

 

ホントかよ?と思っていると、着せられたような背広をきたおじさんが

 

「デザートでございます」

 

と、紙パックのアイスを3パック持ってきた。

プン助の言った通りだったことと、紙パックでそのまま来たことなどに、色々驚きつつ、デザートを食べた。

4人で3人分を注文していたので、母と私は半分ずつ分け合って食べた。

 

「昨日は、4人で3人分やだ!と思ったけど、3人分でよかったね。4人分だったら、大変なことになったよねぇ~」

 

と、上機嫌なプン助。昨日、あんなに嫌がっていたのが嘘のようだ。

とりあえず、テレビのことも忘れて、3人分も結果的に納得してくれたようで、ホッとする。

 

そして、今晩は母のいる最終日。

母とささやかな宴会をしたい…と思っていたが、この股関節じゃ、

「お酒なんてとんでもない」

と、言われるだろうなぁ…。

 

と、思いつつ、寝る支度が整った時

 

「ホントは最終日だし、一緒にビール飲みたかったんだよね…」

と、つぶやくと

「そうね、本当はよくないんだよね」

と、意外とイケそうな反応。

「ちょっとくらいならいいかぁ」

「まあ、いっかね」

 

母が自動販売機までビールを買いに行くと言ってくれたが、母も足腰を痛めているので、二人でヨロヨロしながら、ビールを買いに行った。

ニンタマと二人で自撮り ニンタマの完全防備ぶりがすごい

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スキー旅行二日目

スキー旅行二日目の一月三日は私の誕生日だった。

年末には、

「ママは年が明けたらすぐ、誕生日なんだよ」

などと、言っていた子供らだが、一向に気付く様子もない。

こちらも49歳ともなると、もはやどうでもよくなっている。

ニンタマは自分の支度は自分でできるが、プン助は普段学校へ行く支度も大変なので、スキーとなると本当に大変。

朝食を食べに食堂に行こうと言っても、ずっとパンツ一丁で中々服を着ない。

服を着ても、隙があればすぐに隠れる。

さあ、行こうとすると、

「おしっこ!」

と、トイレへ走るが、ギリギリまで我慢していたせいで、トイレをあちこち汚したり…。

食堂へ向かう途中にも隠れて見つからなくなってしまい、こちらがほぼ食べ終わったら、ニヤニヤ笑いながら自分の席へやって来た。

ああ、また出発が遅くなってしまう。

 

やっと朝食を終えて、スキーへ行く準備をしている時、

「ああ、あんた誕生日だったね、おめでとう」

と、母が祝ってくれた。

それに慌てて、子供らも祝ってくれたが、こちらは早く支度をさせることに頭がいっぱい。

 

しかし、自分への誕生日プレゼントとして、何十年ぶりにスキースクールに入ろうと思っていた。

 

「今日、ママスクールに入りたいから、皆でお昼からスクールに入ろうね」

と、子供らと一緒に申し込むことにした。

学生時代のスキーサークルで、先輩達に教えて貰った以降、ずっと我流で滑っていた。

二十歳の時に、スキー検定二級を取得したが、当時よりも大分下手になっている。

申し込み用紙に書く時に、希望のクラスを書くのだが、自分のレベルを書くのに戸惑った。

AとBは初級者、Cが中級者Dは上級者…とのことだった。

Dクラスにはスキー2級以上と書いてある。

 

「30年近く前に二級とったんですけど、もう下手になっていて…Cの方がいいですかね…」

 

と、受付の人に相談すると、

 

「じゃあ、一旦Cにしますが、インストラクターにその旨伝えてくださいね」

と言われた。

 

子供らはジュニアスクールに申し込む。

ニンタマはジュニア検定一級レベルと書いてあったEクラス。プン助は一応自在に曲がりながら降りて来られるので、プルークボーゲンができると書いてあったDクラスに申し込んだ。

 

休憩所はどこも混んでいたので、かろうじて空いているベンチに座ってコンビニで買ったおにぎりを食べて腹ごしらえして、スクールに臨む。

 

子供らをインストラクターに預けてから、自分のクラスへ行くと、A、B、Dはどこも4、5人はいるのに、Cクラスは私一人だけ。

 

一人だけで見て貰えたら、レベルとか関係ない。

なんとラッキーなことかとホクホクしていると、おじさんインストラクターが私の所へやって来て、Dクラスに混ざって欲しいと告げられる。

 

自分よりもレベルの高いクラスに行けるなら、それはそれでラッキーだと、Dクラスに入れて貰うことになった。その際、インストラクターに

「ズボンの裾、ブーツに被せてね」

と、初心者のようなアドバイスをされた。

私は、普段から服のボタンを掛け違えたり、裏返しのまま気づかないでいるような所があるので、自分としてはよくある事だと思ったが、おじさんインストラクターは、

「大丈夫かな、コイツ」

と、思っているような雰囲気もあった。

 

レッスンが始まり、インストラクターは生徒全員に、

 

「今日は、ポジションを意識してやってもらいます。よく膝を曲げてぐっと踏み込むとか言いますが、それは忘れてください。膝も腰も曲げずにまっすぐのまま、前に体を倒してください。そうすると、板の前側だけに力が加わります。今日は板の前側だけを使って、後ろは一切ない物としてやってみてください」

 

と、説明。

 

私にとって、それは画期的で、それだけでもレッスンを受けにきて良かった…という気持ちになった。

 

その後、リフトに乗って隣に座った同世代のおじさんと話す。

「僕は午前も受けたんですけど、先生の言っていることは中々難しくて…」

「そうですよね、緩斜面ならそれでなんとか滑れても、急斜面になるとどうしても後ろにのってしまいますよね」

「そうそう、そうなんんですよ」

そのおじさんは、年に一度しか来ないので、来るときはいつもスクールに入っているとのことだった。

 

リフトから降りて、レッスン開始。

 

先生の言った姿勢を実践しながら、一人ずつ滑る。

なんどか、やっていくウチに

 

ん?このDクラスって、二級以上…って書いてあったけど、全然そんなことないのでは?

 

と、思えてきた。

これならばニンタマの方が全然上手な気がする。

先生の言われたことをやろうとするも、できずに、新雪につっこんで転ぶ人やら、三角が細めのプルークボーゲンのような人もいる。

私が滑る度に

 

「うまい!」

 

と、おじさんインストラクターに絶賛される。

 

「あなた、うまいね~~!この人、本当はCだったんだよ!いやぁ、それが蓋を開けてみたら、一番うまいじゃない!ね!素直に僕の言ったことをやれば、できるんだよ!いや、うまいよ!」

 

最初に受付の人に二級をとった旨をインストラクターに伝えてくださいと言われていたが、「そんなに下手なくせに本当かよ」と、思われるような気がして、先生には伝えられなかった。

返答に困り、挙動不審な感じに

 

「え!ホントですか?!」

 

と、喜んでいる振りをしてしまう。

「いや~、最初、Bに入れようかって話もあったんだけど、俺が責任もって見ますからってDに入れたんだよ!良かったね~~~~」

 

Bに入っていたら、プルークボーゲンをするハメになったのだろうか…。いや、それはそれで、きっと学ぶべきところはあるはずだ…。

でも、それは時間とお金が余っている時に思えることで、時間もお金もない時には少しでも直接的に上達に結びつくことをやりたい…。そう思っているのだが、口から出て来るのは、

 

「おかげ様です…ありがとうございます!」

 

と、いうお愛想だけだった。

 

ああ…二級取ってるっていえばよかった。28年まえだろうが、なんだろうが…腐っても二級なのだ!

心の中ではそう叫びたくなっていた。

 

サークルでは、うまい人がうじゃうじゃいたので2級をとったところで、自分は下手くそだという意識がしみついていた。

スクールに入る人もガチでスキーをやっているに違いない…と思っていたが、どうやらそうではないらしい。

考えてみると、自信がなくて控えめに言ったことで失敗することがなんと多い事か…。

恥をかいても、図々しく主張したほうがいいということを、他人には言えるのに、どうして自分ではできないのか…。

 

今となっては遅いし、単なる自己満足とただの自己顕示欲なのだが、

 

「実は私、すっごい昔に二級取っているんです」

 

と、おじさんインストラクターにわかって欲しくて仕方がなくなった。

チャンスは次のリフトに乗るときにやって来た。

 

おじさんインストラクターと一緒に4人乗りリフトに乗れたのだった。

伝えたら、

 

「なんだ、そうだったんだ~、もっと上のクラスに行けばよかったね~」

などと言ってもらえたりするかもしれない。

 

だが、おじさんインストラクターは隣に座ったアラサーっぽい女子とばかり話して全然こちらを見もしない。

 

「いや~、君さぁ、話し方が山田邦子に似てるよね」

「山田邦子?たとえが古いですよ~、どんなだったかなんて覚えてないですもん」

「え~、古いか~~、まいったなぁ…でも、ほら他にもそんなしゃべる方する芸人さんいるだろ」

「結局、芸人ぽいってことなんですね~」

「そうそう、でもいいじゃない、楽しくて」

 

なんだか楽し気。

私ともうひとりのおじさんは、その話を聞いて、微笑ましく見守る役割しか回ってこない。

普通、こういう時って生徒全員になんとなく話しかけたりするのではなかろうか?という私の目論見は見事に外れ、リフトの上で二級と伝えることはできなかった。

 

よし、こうなったら最後の挨拶の時に、お礼を伝えつつ言うしかないな。

もはや、講習よりも自分が二級取得者であることをいかに伝えるか…ということばかり頭をぐるぐるしていた。

 

誕生日なのに、こんな卑屈な連鎖に陥ってしまったのは残念だが、私の頭は尊敬して崇拝しているわけでもないおじさんインストラクターに二級の話をすることに憑りつかれてしまった。

 

後半は少し長い距離を滑ったりしつつ、最後は下までついて解散という流れだと思っていた。だが、

「あ、そろそろ時間だね!皆さん、スキーを楽しんでください!では、お疲れ様でした!」

と、おじさんインストラクターは、山の中腹で挨拶したかと思うと、一人で滑り降りてしまった。

 

私の浅はかな自己顕示欲は結局満たされないまま終わってしまった。

 

拍子抜けしつつ、一緒に並んでいた生徒さん達に挨拶をして、スクールが終わったであろう子供を迎えに下の集合場所まで降りた。

 

ニンタマは上手だと褒められたものの、今後の上達は筋力がないと難しいと言われた。

ニンタマからは自分のことよりも嬉しそうに

「あのね、プン助、クラス分けで下のクラスに落ちたんだよ」

と、プン助の情報を報告された。

クラス分けでは、Eクラスだと申告してきたのに、Cに落とされた人もいたらしい。

 

子供はクラス分けテストがあったのか…。

大人もあったらよかったのに。

 

それで、CやDだったら、モヤモヤしなかっただろうに。

 

ほどなくしてプン助が戻って来た。

 

「なんだかさ~、ボーゲンから教えるんだよ。オラはパラレルがやりたかったのに!」

 

と、不満顔のプン助。

 

なんとなくCに落ちた原因がわかった。

本気でプルークボーゲンをやればできたはずなのだが、やれといわれたことをやらずに、パラレルのつもりで、ただの大股開きでガーっと降りて来たのだろう。

プルークボーゲンができないでただ、降りてきている子供に見えて、よしプルークボーゲンを教えなければ…と、思われたような気がする。

スキーだけではなく、プン助は言われたことはスルーしてやりたいことしかやらない性質があるので、そこでこれからもこういうことが起きるのだろうな。

 

ホテルを戻って夕食へ。

毎日吹雪いているので、高齢の母を連れて毎日外食するのも大変だと、翌日の四日の食事だけはホテルに予約することにした。

どうせ子供は残すので、3人分予約して4人で食べると受付で話していると、何故かプン助がオカンムリ。

吹雪きの中歩いている間中、ごねっぱなし。

 

「プン君、4人で3人分やだ~!4人で4人分がいい!」

「いや、みんなで分けるから、大丈夫だよ!」

「4人で4人分じゃなきゃやだ!」

 

この日もちゃんこ屋へ。

野菜が不足しているから、鍋を頼もうとすると

 

 

「ざるうどんと、カニの鍋ください」

 

と、またもや勝手に注文するプン助。

 

「だから、カニは頼まないって、今考えるから」

 

と、店員さんが、

 

「ウチのおすすめは🉐ちゃんこです」

 

と、カニちゃんこよりもお高い鍋を勧めてきた。

カニカニ騒ぐプン助の手前、質素な鍋にしようと、魚のすり身ちゃんこを頼むと、母が

「アンコウもおいしいよ、このホルモンも入れてさ」

と、提案して来たので、アンコウとホルモンと、魚のすり身のちゃんこ鍋にしてもらった。

 

「お飲み物は」

と、聞かれたが、プン助が「コーラ」と、言う前に「ちょっと考えます」

と、答え、セルフサービスのお茶とお水を持ってきた。

 

こういうお店ではアルコールを飲まないまでも、ドリンクを頼んで欲しいはずだ。

それは分かるのが、お店の都合ばかり考えず自分たちの都合を優先させることにした。

シケた客だと思われても、堂々としていよう。

母と一緒だと、少し強気。

 

鍋が出来上がり、

「わあ、おいしそう!」

と、一番最初に食べたニンタマが、顔をしかめた。

 

「ニンタマちゃん、あんまり好きじゃない、これ」

 

と、それきり口をつけない。

カニカニ騒いでいたプン助は拗ねて、寝転がっていたまま、本当に寝てしまった。

私も、母も食べてみると、確かにあまりおいしくない。

 

あんこうや魚のすり身がちょっと生臭いのだ。

魚介類は、鮮度で全く味が変わってしまう。

こんな雪の中では鮮度のいい食品も中々とどかないのかもしれない。

ここでは普通に鶏肉、豚肉などが正解だったかもしれない。おまけにホルモンなんて、子供が食いつかないものを入れてしまった。

 

「これにうどん入れたら食べられる」

 

と、ニンタマが言うので、とりあえずうどんを注文し、私と母はあまりおいしくないながらも一生懸命、魚のすり身やアンコウや他の野菜などを消費すべく頑張った。

後で、お腹が減ったと言われても困るので、無理やりプン助を起こした。だが、

「プン君のざるうどんは?」

と、怒りだした。

「ざるうどん売り切れちゃったんだって。これしかないの」

と、うどんを進めると、ニンタマから奪うようにしてむさぼり食べていた。

 

 

帰り道、雪の中でプン助と話す。

 

「なんで、そんなにダメだって言ってもカニを注文するの」

「オラも本当は言って悪かったなと思ってる」

「悪かったなと思ってるんだ」

「じゃあ、なんで、カニカニ言うの?」

「だって食べたかったから、言いたくなっちゃうんだよね」

「じゃあ、もう言わない?」

「それはわからない、言っちゃうかもしれない」

「そうなんだ…でも、なるべく言わないで」

「約束はできないけど、わかった」

そういうと、プン助はポケットに手突っ込み一人先へ歩いて行った。

 

夜、母と一番搾りを飲んでいると、やはりプン助に

 

「うるさくて寝られない!」

 

と、怒られた。

ニンタマは、眠くなるとすぐに布団に入って寝るのだが、興奮しやすい性質らしい。

仕方がないので、頭を体をさすってやったら、あっという間に寝た。

 

仲良く並んで雪の中リフトに乗っている子供ら

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スキー旅行一日目

一月二日から五泊六日で苗場にスキーに行くことにしていた。

若い頃はそうでもなかったが、年を取ってから遠からぬ日にスキーが出来なくなるという不安から、ここ数年スキー熱が高まって来た。

子供達に対しても、普段は宿題や勉強に関しては放置しているのに、スキーに関してはアンバランスなほど教育ママになっている。

その甲斐あってか、子供はすくすくスキー好きな子供に育っている。

父が所有していた苗場のリゾートマンションはもうないので、ここ数年はどこで滑るか悩んでいた。

とりあえず、安いペンションや民宿で、電車で行けて、スキー場まで歩いていける宿を予約しよう…と、宝船の稽古が始まる前に宿を探すが、これが意外とない!

旦那さんは公演後もすぐ公演の稽古に入るので、私と子供らの3人。

仕事も何もかも忘れて滑りまくりたい…と思っていたが、子連れで5泊となると、どこも空きがなかった。

やっと見つけた所をとりあえず予約。

すると、公演中に助っ人に来てくれた母が、

「あんた一人であの子達をみるのは大変でしょ」

と、二日から五日まではつきそってくれることになった。

バスに乗り、中央線で東京駅に向かう時点でプン助が大騒ぎして、へとへと。

自分がいらないと言っていたのだが、いざ越後湯沢駅に降りて雪をみると、

「手袋!手袋!」

と、お姉ちゃんのニンタマの手袋を奪い取ろうとして、ニンタマが嫌がると、なぐりかかり大ゲンカ。

やめなさい」

と百回くらい怒鳴りながら、宿へつく。

宿では優しそうなおじいさんとおばあさんが歓待してくれた。

3時にならないとチェックインできないので、サロンのようなところに母を残し、私と子供らはスキーの支度。だが、プン助はかくれんぼを始めたり全く支度をしない。

今日はもう疲れたから、スキーに行かないで休もう…と、言い始める。

「じゃあ、ママとお姉ちゃんだけで行ってくる」

と、言うと、

「オラも行く!」

と言いつつ、サロンのソファの上を飛び跳ねたり、テーブルの下に隠れたり…。

苗場スキー場が目の前だと思い込んでいたホテルは、意外と遠く送迎バスに載せて貰い南ゲートまで。

そこから、スキー場まで、5分ほど板をかついで行くのだが、子供にとっては結構な苦行なようで、合宿などで慣れているニンタマは板とストックをかついでついてくるが、プン助は

「ママ、持って~」

と、座り込んでしまう。

「自分の物は自分で持ちな」

などと正論を言うと、そこで30分ほど時間を食ってしまうので、仕方なく板を持ってやり、プン助にはストック係になって貰った。

だが、ストックを振り回しているので、危険極まりない。

ハラハラしながらもやっとスキー場に辿りつき、念願の初リフトに乗る。

ああ、やっと滑れる…と、わくわくしていると、

「ママ、お腹減った~」

と、子供ら。

昼には旦那さんが握ってくれたおにぎりを食べたはずなのに、もうお腹が減ったのか…。

私は全くお腹が減っていなかったが、子供を空腹にしておくわけにもいかない。

無料休憩所へ行き何か食べることにした。

無料休憩所はその時乗ったリフトからかなり遠い位置にある。

降り場からまっすぐ滑るのではなく、広い苗場スキー場を横切るように下って行かないと到着しない。

私とニンタマにとってはそれほど大変ではないのだが、プン助にとっては下らずに横に進むのが、かなり難しいようだった。

しかも雪が降り積もっているので、整地されてない場所を通ると新雪に埋もれてしまう。

普通に行けば5分で行けるコースを30分くらいかかりながら、休憩所へ。

無料休憩所とは書いてあるが、軽食も売っている。

その時点で3時過ぎだったので、夕ご飯のことも考え、タコ焼きとかポテトフライを皆で分ければいいかと思っていたが、

「ハヤシライス!」

と、プン助。

「そんなもん食べたら、夕ご飯入らなくなるよ」

「入る!」

「じゃあ、ホットドッグにしたら」

「ハヤシライス」

「ニンタマは?」

「私はなんでもいい」

「ハヤシライス!」

「タコ焼きにしなさいよ?タコ焼き大好きじゃない!」

「ハヤシライス!」

揉めに揉めていると、店員さんが

「今限定商品のアップルパイがありますよ」

と提案してくれた。途端に

「プン君、アップルパイとホットドッグ」

「ニンタマはアップルパイだけでいい」

と、あっさり決まった。

ホットドッグにつけるケチャップやカラシは自分でつけるシステム。

「ママ、ケチャップとカラシ同じくらいね」

と、セレブのような口ぶりで私に言いつけ、ペロリと平らげた。

「あと、フレンチトーストも食べたい」

まだ、食べたいらしい。

「帰ったら、おばあちゃんと晩御飯食べに行くんだから、もうやめときなさい」

「大丈夫!入るから」

「アップルパイもホットドッグも、フレンチトーストも小麦とか砂糖とか油ばっかりだよ!全然栄養ないもんばっかりでお腹膨らませたら、キレる子供になるんだよ!」

全く響かないであろう、演説で言い聞かせるが、案の定聞く耳は持ってもらえない。

子供に小麦製品ばかり食べさせるためにここまで来たワケでなないのに…。

疲れ果ててしまい、

「じゃあ皆で分けて食べるんだよ」

と、結局フレンチトーストを頼んでしまう。

フレンチトーストを見て、ニンタマも

「ニンタマちゃんもちょっと食べたい!」

と、食べようとすると

「これプン君のだよ!」

と、切れ端のようなモノしか分けてあげないプン助。

「ニンタマちゃんだってもうちょっと食べたいんだよ」

と、私に泣きながら訴えて来るニンタマ。

だが、その不平等の為に戦う元気はなかった。

「ああ…もうさ、送迎バスが来るまで時間なくなってきちゃったよ。今日は、もう滑らないってことかな?」

諦め気分になってそういうと、急に焦り出す子供ら。

「ヤダ!滑る!」

「じゃあ、お迎えバスの来るとこに近い方へもどりながらすべろう」

またもや、リフトで登ってはスキー場を逆の方向へ横切って進まなければならない。

すでに薄暗くなり、雪は一層激しく降っている。

ちょっと進むごとに雪に埋まって転ぶプン助。

転んでいるプン助を待つのに疲れ果てるニンタマ。

こんなに転んで埋もれては、もう滑りたくなくなるのでは?と、心配になるほど。

これから、このコースは二度と来ないようにしようと、決意していると

「プン君、明日もここ滑りたい。沢山ころぶと、転び方の練習にもなると思うんだよね…」

と、思いがけない前向き発言。

雪に埋もれる度に重なった板をなんとかしてやったり、起きられる態勢にしてやったり、脱げた板を拾いに行ったりするので、こちらは汗だくで、息切れしまくり。

なんとか、南ゲートに近いリフト乗り場までたどり着き、1本だけ安心して落ち着いて滑ることが出来た。

ジュニア一級の検定試験に合格したニンタマの滑りを初めてきちんと見る。

確かにうまくはなっていたが、ターンの後半にはまだまだ雑さがある感じ。

勝手な認識だが、このレベルまでは誰でも行けるという上手さ。

おそらくそこを超えるのが、大変なのだろう。

私自身も、その壁の前でずっと止まったままなので、そこを超えたいと思い続けて10年くらい経ってしまった。

ニンタマは小学生なので、私よりも軽々とその壁を超えるのだろう。

関心していると、プン助が

「オラのパラレルも見て~」

と、大股開きでの滑りを見せて来た。

新雪に埋もれなければプン助は、割と自在に曲がるし、どこでも降りて来られるのだが、説明できない下手オーラが出ている。

理由は分からないのだが、実力以上に下手に見える。

絶叫しながら滑るからだろうか…。

なんとか一日目を終え、送迎バスで宿まで戻る。

すると、プン助が東京から履いてきたスノーブーツが見つからない。

スキーブーツに履き替えた乾燥室をくまなく探すがない。

誰か間違えて履いて行ってしまったのだろうか…。

受付で先ほど歓待してくれたおばあさんに

「子供のブーツが無いのですが、どこかにおちてませんでした?」

と、たずねる。

だが、

「おちてないですね~」

の一言で相手にしてくれない。

勿論、こちらが悪いのだが、普通は「どの辺でしょうか?こちらでも気を付けてみてみます」くらいはあるかと思い、途方に暮れる。

そういえば、プン助はずっとかくれんぼをしていた。隠れていたと思われる、トイレやサロンを探し回ると、ソファの下の、割と目立つ場所にスノーブーツが落ちていた。

靴はそれ一足しか持ってきていなかったので、ホッとした。

夕食はつけなかったので、雪の中、母と共に外食できる場所を探す。

一番近い場所に前にも行ったことがあるユーミン御用達らしいちゃんこ屋があった。

ちゃんこ鍋を食べたい気分ではなかったが、蕎麦やうどんがおいしかったことを思いだし、そこに入った。

すると私や母が注文するまえに

「カニください~」

と、勝手に注文するプン助。

ギョッとして

「カニなんか食べないよ!」

言うと

「え~、じゃあ飲み物はコーラ!」

と、めげないプン助。

「子供が勝手に注文するなんて、考えられない」

「コーラなんかダメ!水にしなさい」

私と母に言われても、

「カニ食べたいのに~、プン君、カニ食べたことないんだよ~」

と、哀れっぽく主張。

ここでうっかりカニなど頼んでしまったら、今後外食の度に同じことをやられてしまう。そんなことされたら、ウチは破産だ。破産以前に、人格形成にもよろしくない。

ここはビシッと阻止せねば。

ここで大人がビールなど飲もうものなら、プン助になにを言われるかわかったものではない。

大体ただでさえ、スキーをするだけでウチにとっては分不相応の贅沢なのだ。他は引き締めていかねば。

蕎麦や饂飩の他、焼き鳥を頼んでドリンクは一切頼まず、セルフサービスのお茶と水で済ます。母がごちそうしてくれたが、それでも4人で7千円は超えた。

スキー場ではちょっとの外食がとても高くつく。

その後、昔コンビニだったが新装開店し焼き鳥などがイートインできるなんでも屋のような所で、パンやビールやお菓子、ヨーグルトを買って宿へ。

大浴場ではプン助が泳いだり歌ったり、叫んだりしていた。

「他の人もいるんだから、暴れない」

 

「シャワーで遊ばない」

 

「踊らない!」

と、注意ばかりしているものの、何一つ聞いてもらえないダメ親ぶりに我ながら、ぐったり。

子供が寝静まった後、母とエビスビールで乾杯しようと思ったが、子供は興奮して全然寝ない。

「早く寝なさいね」

と、言って二人でビールを飲みだすと、案の定プン助に

「大人ばっかり贅沢をしてずるい!オラもコーラを飲みたかった!」

と、文句をつけられた。

頼む、早く寝てくれ…。

写真は旦那さんが新幹線で食べるようにつくってくれた卵焼き。

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