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ハロウィン

ニンタマの英語教室でハロウィンイベント。

下の子供も連れて行っていいとのことで、プン助もいくことにしたが、当日まで仮装の用意を全くしていなかった。

祖母が古くてほつれてしまったニンタマのドレスにアイロンを当てたり、スパンコールで飾ってくれたり、旦那さんがドンキに走ったりで、なんとかそれっぽい仕様に・・・。

だが、せっかく旦那さんがドンキで購入してきた、仮面ライダードライブの上下を着ていてたプン助は、おもらしをして、新品の衣装を台無しにしてしまった。
上だけドライブのシャツを着て、バイ菌マンのポシェットを持たせた。
カボチャの帽子は被った瞬間に投げ捨てるので、それも紐の部分を肩にかけてポシェットのように持たせたので、少し珍妙な恰好になってしまったが、本人は満足そうな様子。

プン助はイベントに行ったらお菓子がもらえると思い、最初から「おかし」「おかし」と、騒ぎ、受付の時点で逃げ回り、ドアに指を挟んで泣いたり最初から波乱含み。
ニンタマは、貰った鞄につけるワッペンを黙々と作成しているのに、プン助はワッペンをぐしゃぐしゃに塗りつぶし、ハサミで切り刻んだり・・・早々に連れて来た事を後悔した。

自己紹介のコーナーが始まった。
生徒が手を挙げて、先生が指名すると、前へ出て、
「I'm 〇〇」と、自分の名前を言う。
すると、全員で「Who are you?」と、声を合わせて尋ね
「I’m witch」「I’m doracula」などと、何の仮装か答えるというやりとりをするらしい。

今までニンタマはそういう時に決して手を上げることはなく、当てられても聞こえないような声で何かを答えるか、もしくはずっと無言・・・という典型的な内弁慶のタイプだった。
だが、今日は違った。
今日も手をあげないのかな・・・と思っていたら、最後の方で手を挙げたのだった。
聞こえないくらいの声でだが、一応自分の名前も言った。
だが、「Who are you?」と、全員に声を合わせて尋ねられると、固まってしまった。

それは内弁慶のせいだけではなかった。
きっと、何の仮装か自分でもわからなかったのだ。
小さいとんがり帽子のついたカチューシャ、ピンクのドレスにマント…。
何の仮装だろう、これ?
私も、わからなかった。
ニンタマはなんて、答えるのだろう?

私もドキドキしながら見ていると、
「I'm princess」
と、小声で答えた。

実はニンタマの前に可愛らし恰好のお友達が「I'm princess」と、答えていた。
それを思い出したのだろう。
だが、周囲はちょっとざわついていた。
マントと帽子姿は全くプリンセスには見えない。
どちらかというと、小さい魔女?という感じ。
先生も「Oh! you princess?」
と、ちょっと驚いた様子だった。
だが、今まで積極的に手を上げたりしたことがないことを思うと大きな変化。
勇気を出したことは褒めてやらねば。

その頃、プン助はいつの間にか私の膝に座り、熟睡してしまった。

肝心のお菓子が貰える「trick or treat」のコーナーになっても、目を覚まさず、殆ど眠りっぱなしだった。
コーナーが終わり、先生が「お菓子あまりました~」と、皆に余ったお菓子を配っていた。

ああ、余ったのはプン助の分のお菓子だ…でも、プン助はお菓子を貰うとご飯を食べないで、お菓子ばかり食べるから、貰わない方がいいだろうか…。
いや、お菓子を貰わなかったと知ったら、どんなに嘆き悲しんで面倒なことになるか…やはり貰うか…などと、葛藤しているうちに、お菓子はどんどん配られて行き、残り少なくなっていた。

意を決して、子供達の輪に乱入して
「すみません、ウチのコ眠ってしまって、参加できなかったので貰ってないんです」
と、言いに行く。
「え!そうなんですか!どうしよう、殆ど配っちゃった…」
と、困惑している先生。
こんなことなら、もっと早く言いに行けば先生を困らせないで済んだのかもしれない。
「あ、飴とかクッキーが一枚とかで全然いいんです・・・貰ったって思えば大丈夫なんで・・・」
と、残り少ないお菓子を貰って眠っているプン助の元へ戻った。

その後、ジュースが配られたのだが、私は4歳くらいの男の子にオレンジジュースを肩から背中までびっしょり掛けられてしまう。
その子のお母さんが怒って、
「あやまんないとだめでしょ!」
と、何度もその子を、私に謝らせようとしていた。
だが、その子は
「オレ、こぼしてないから」
と、言い張る。
その子自身もジュースを被ってびしょ濡れだった。
私の目を一度も見ずに「こぼしてない」と、連呼するので、お母さんはとても恐縮していて、不憫なほどだった。
いつ私がこの立場になっていてもおかしくない・・・。
プン助も絶対こういう事をするし、謝らないだろう。
びしょ濡れになって途方にくれたが、他人ごとには思えず、
「ああ、全然大丈夫ですから・・・気にしないでください」
と、いい人面をして、お母さんをねぎらった。

だが、本当はあの男の子の為には、ちょっと怒って見せた方がよかったのかもしれない・・・などと、色々考えているうちにイベントは終わった。

眠っているプン助を担いで帰ろうとすると、急に眼を覚まし「お菓子お菓子!」
と、騒ぎ始めた。
やはり、お菓子を貰っておいてよかった。

帰宅してから、祖母や旦那さんに
「いやぁ、子供の中に割って入って『お菓子貰ってないんです』って貰いに行くの恥ずかしかったよ~」
と、話していると、
「ウチだって恥ずかしかったよ!」
と、ニンタマ。
「え?ママが来て、お菓子貰いに来たの、恥ずかしかったの?」
「そうだよ~!何、やってんのって恥ずかしかった!」

そうか…、自分の恥ずかしさばかり考えていたが、親がそういう行動をとると、恥ずかしいのか・・・。
でも、同じ会費払ってるのにプン助の分を貰わないのもおかしいし、可哀想でしょ?と、言ってみるがプリプリしているニンタマ。

すると、旦那さんが
「ニンタマがプン助のお菓子を貰ってやればよかったじゃないか」
と、言い始めた。
「え~~~!なんで、ウチが~、やだよ、恥ずかしいよ」
ニンタマは顔色を変えた。
「ママの方が恥ずかしいって、そうだよ、ニンタマが言ってくれたらママも恥ずかしい思いしないで済んだのに・・・」
と、私もネチネチイジワルっぽく責めると、凄く困った顔をしたニンタマが、
「だって、ウチ知らなかったんだもん、プン君が寝てるって・・・!」
と、一生懸命言い訳をし始めた。
面白くなって
「じゃあ、これからはそういうの気付いたらニンタマが貰いに行ったりしてね」
と、言うと、ニンタマはうつむいて黙っていた。
嫌だと思っているらしい。

夜ご飯は、ニンタマにリクエストされた、カボチャグラタンを作り、大人にはローストビーフを・・・と、付け合わせのスライスオニオンを作る為に、玉ねぎをスライサーで刷っていたら、最後の最後で親指の皮を、肉ごとすりおろしてしまった。
気を付けていたのだが、一瞬ぼーっとした隙に、流血沙汰。
玉ねぎが目に染みて、涙が止まらず、血も止まらず・・・で想い出深いハロウィンになってしまった。

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