タルトVスルメ
10月20日
雨。
コミュティセンターで祭りをやっているので、連れて行ってあげたいが、旦那さんも不在で雨の中すぐ抱っこ!というプン助を連れての外出を思うと、腰が重い。
遅い朝ご飯の後、間持ちがしないで、昨晩夜中の3時まで夜なべして作ったパイナップルとバナナのタルトをニンタマとプン助に見せる。
「わ~~~!おいしそう~~~!」
と、大喜び。
先ほど朝ご飯を食べたばかりだというのに、
「ニンタマちゃんお腹減ってたんだ~!」
と言うニンタマの言葉に押され、
「じゃあ、ちょっとだけだそっか~!」
と、タルトを切る。
ちゃんとしたタルト型もなく、フルーツの汁が漏れたせいもあって、切り分けるとグチャグチャ。
普段は、お手伝いを嫌がるのに、率先して皿を出すニンタマ。
果たしてお味は?
「おいしい~~~!」
「おいしくてほっぺたがおちそう~」
プン助も、まだ言えないのにニンタマの真似で
「おっぺあちとう~」
と、頬をぺちぺち。
なんて、良い時間かしら!
ああ、中々子供達にこういうことをしてあげられないけど、出来れば週に一回くらい、タルトやケーキをやいてあげたい…。
そんな甘い気持ちになっていると、プン助が唐突に
「こえこえこえ~~!」
と、何かを指差し、立ち上がる。
タルトは大分残っている。
喉でも乾いたのかしら?
「お茶、ここにあるよ」
と、お茶を飲ませようとすると
「こえこえこえ~!」
と、怒りまくる。お茶ではないらしい。
色々なものを手にとって
「これ?」
と、聞いてみるが怒るばかり。
一体何かしら?
テーブルに、昨晩旦那さんが、つまみに買って輪ゴムでとめたスルメの袋があった。
「これ?」
と、スルメを差すと、
「こえこえ」
と、頷くプン助。
タルトがまだ沢山残っているのに…。
「じゃあ、一口だけよ」
と、小さい糸くずくらいのスルメを差し出すと、
うれしそうにシしゃぶり始めた。
それを見たニンタマが
「ニンタマもニンタマも~~!」
と、催促を始めた。
「タルトちゃんと食べてよ!」
というと、
「もう、いらない!」
と、皿を乱暴にこちらに押しやった。
夜中の3時まで子供らの喜ぶ顔を想像して頑張ったのに、百均で買ったようなスルメの足下にも及ばないって…。
43歳の私は、
「じゃあ、もうタルトは下げるからね!」
と、怒り気味に言うと、
「うん、下げて」
というニンタマ。
悲しくなり、
「もう、ママ二度とタルトなんか焼かない!いいね!」
「ああ、もう、作らなきゃ良かった!」
と、男に拗ねる小娘みたいに、当てつけがましく言うが、子供らはスルメに夢中で聞いちゃいない。
しつこくしつこく
「もう、ニンタマは安物のお菓子でいいね、ケーキとかタルトはママと父たんだけで食べるから!」
と、言うとやっと聞こえた様子のニンタマが
「やだ!」
と、叫んだ。
お!乗って来たと思ったのも束の間。
「ニンタマだけ安物はやだ!プン助も安物じゃないと!」
と、言うので
「プン助が安物なら、ニンタマも安物で言い訳?」
と、聞くと
「それならいい!」
と、満足げな顔をしていた。
ああ…。
子供らの喜ぶ顔を…って思ったけど、別にそんなことしなくてもいいんだよな、ホントは。
こちらの自己満足でしかない。
夜中まで自分の趣味でタルトを焼いただけなのだ。
報われない。
昔は、お付き合いしている人相手にこちらの努力が報われない、わかってもらないと嘆いていたが、その相手が子供になっただけなぁ。
凹む。
凹む原因は、子供らがわかってくれないことではない。
自分がいつまでたっても、このような事に一々衝撃を受けて、子供ら相手にいじけたり、拗ねたりしていることにだ。
この分では老人になっても、自分の思い描いていた大人にはなれていなさそう。
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