産後のアイツ
毎日あまり眠れない。
最近、さびしがり屋になったのか、ニンタマは何度も目を覚ましてはグズる。
授乳の時以外にも急に目を覚まして、寂しくなるのか泣くのだ。
なだめていると、旦那さんもなだめるつもりで 「可愛いなぁ」 と、大きな声を出す。ニンタマは益々寝なくなってしまう。
もしくは、旦那さんが大きな声で寝言を言うので、ニンタマが目を覚まして、泣いたりする。
したがって、私は布団に入っている時間が8時間あったとしても、全然眠れていないような気分。
布団にいる時間が6時間程度が平均なので、疲れが溜まり、時々、鬱気味になる。
起きている時に「疲れた疲れた」と、言ったり、溜息をついたり、旦那さんにご飯「これ、どこにしまうの?」「ごはん作って」などと、 言われると、露骨に嫌な顔をしてしまう。
旦那さんは洗濯ものを畳んでくれているのだが、私が自分のスパッツが見つからないと、騒ぐと、旦那さんは自分が畳んだせいで無くなったかのような言われようや、日頃の私の鬱気味な態度に腹が立った様子。
「じゃあ、もう畳まないよ!」
「じゃあ、ご飯も作らないし、離乳食も作らない!」
と、喧嘩になる。
結局仲直りをしたが、鬱状態は治らない。
旦那さんがが稽古に出かけてからも、ニンタマ相手に鼻水を垂らして泣いていると、いつもはうるさくグズるニンタマも不思議そうな顔。
こんなに何もやる気が起きないなんて、これからどうやって生きて行ったいいのだろう?と、しばらくグズグズしていると、脳裏に「産後鬱」という言葉が浮かんだ。
「あたし、もしかしたら、産後鬱って奴かしら?」
そう思ったら、何か急に楽になった。
産後鬱の詳しい症状は知らないが、「ホルモンのせいで起きる症状で、本人のせいではないので、周りの理解が重要です」みたいなことを言われていた気がする。
「そうか!私のせいじゃないんだ!」
急に気が楽になる。
最近、ニンタマの世話をする人としか認識されていない気持ちになっていた。
世話がまともに出来ないなら、用無しなのでは?という被害妄想にも陥っていた。
おそらく、これも産後鬱の症状に違いない。
物凄く疲れていたが、こういう時に家にこもっていると、ろくなことにならない。
日が暮れるまで、出かけて気を紛らわそう。
普通のお母さんたちは赤子がいようと、ちゃんと家事をやっている。
だが、泣かれたり愚図られると何もできない。
「どうせ何もできないなら、出かけてしまおう。そうだ!桜でも見に行こう。」
ニンタマをオンブして五日市街道を爆走。
重いなぁ・・・。
玉川上水沿いを行けば桜が咲いているだろうと思ったが、全く開花していなかった。
咲いていたら適当にサイクリングして戻るつもりだったのだが、咲いている所を求めて走るうちに小金井公園まで行ってしまった。
ニンタマの重さで、サドルが食いこんできて股間が痛い。
仕方なしに公園を一周。 ニンタマはとっくに眠っていた。
「桜・・・咲いてないなぁ」
汗をダラダラ流して、股間の痛みに耐えているうちに鬱気分は消し飛んで行った。
思春期の時、「車輪の下」などを読んだり、厭世的な気分になっても、部活で朝連などをすると、すっかり上機嫌になったことを思い出した。
ニンタマに桜を見せることも出来ず、無駄に体力を消耗するようなサイクリングになってしまったが、何故か少し元気になった。
飲んで帰って来た旦那さんに 「私、産後鬱ってやつかも」 と、話す。
旦那さんには「マタニティーブルーとか、産後鬱とか流行ってるものは一通り経験しておきたいって思ってるんじゃないの?」 とからかわれる。
心外だったのだが、そうなのかもしれない。
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