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手編みと稽古と五反田団

水道橋の稽古場へ向かう途中、電車で台詞を覚えようと台本を眺めていると、老婆二人組に声をかけられる。
「可愛いわね~」
二人ともニコニコしている。
え、私?と、辺りをキョロキョロ見回す。
どうやら二人が見ているのは間違いなく私のようだ。
こんな事を言われるのは子供の時と、振り袖を来て歩いている時くらいだ。
私が子供に見える訳も無い。
じゃあ、本当に可愛いと思ったのかしら?
と、満更でも無い気持ちになった。

「それ、自分で編んだの?」

私は「みつばち」で共演した伊勢志摩さんに編んでもらった帽子を被っていた。
なんだ、帽子か・・・とうぬぼれた自分を恥じながら
「お友達に編んでもらって」
と、答える。
「最近は男の人も編むらしいわね。テレビで言ってたわよ」
「そうなんですってね~」
ああ、台詞を覚えさせてくれよ、と苛つきながらおしゃべり。
「大好きなのよ、手編み。素敵よ」
と、言うおばあさんの目線が帽子から下に下がっている事に気付く。
私はざっくりと編んだ半袖のコートを着て、大判のマフラーもしていた。
それは既製品だ。
どうやら、それも手編みだと思っている様子。
私はずぼらなので、ブランド名が書いてあるタグがつきっぱなしだった。
慌てて隠す。
「お友達が編んだ」と言ったのが嘘だと思われてしまう。
嘘をついたつもりも無いが、おどおどしてしまう。

今は稽古の真っ最中。今回は初めて口立てのお芝居。
演出の宮本さんが口立てでどんどん演技を決めて行き、演出助手のギアさんがノートパソコンで打ち込んで行く。
今日とうとう最後のシーンまで決まった。
稽古初めが10月26日だったので12日で台本が上がった事になる。
色々なやり方があるものだ。
私は稽古初日には完本するが、書くのに2、3ヶ月かかってしまう。
まだ、おうむ返しに言っているだけの所が殆どなのでこれから覚えるのが大変そう。

書き忘れたが、先週初めて五反田団のお芝居を観た。
前から観たいと思っていたのだが、念願が叶った。
こんなに評判がいいのだから、どうせ面白いのだろうと思っていた。
案の定面白かった。
でも、私の予想していた種類のお芝居とは全く違った。
予想よりずっと素敵だった。大好きな後藤飛鳥ちゃんも出ていた。
宮沢賢治の世界みたいだった。
宮沢賢治は殆ど読んでいないのだが、そう思った。
だから全く外れているかもしれない。

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