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不幸と幸福の狭間

ヴォイストレーニングで呼吸を診て貰う。股間節の異常を訴える。
ここのトレーナーは皆整体の資格を持っているらしい。
先生が慎重に私の右腰を触る。
「ああ、こんな腰だと思わなかった。新井さんはこれに気付く為にここに来たんだね。」
と、言われる。右の腰が一部変形して陥没しているとのこと。
思い当たる事がある。
母の腰骨の辺りがえぐれているのだ。
「おばあちゃんの腰が窪んでいて変だと思っていたら、私も急にこんなになってびっくりしたわ~。やだわ~」と、言っていた。
私は祖母や母と違って芝居などで良く運動している。
だからああはならないだろうと思っていた。だが、今は歩くのも痛い。
母も祖母も腰は陥没しているものの、50過ぎまでは何の支障もなく暮らしていた。
「私は運動しているから大丈夫だと思っていたのですが」と、訴える。
「新井さんの場合肝心な所に筋肉がつかないのに、がんがん使って、他が補ってる分負担かけちゃったのかもしれないね」
この腰はあと、数年しかもたないと言われる。
それを防ぐにはきちんと大腰筋をや腹筋を使って生きられるようにならなければならない。
今までも毎日意識しているつもりだが、足りないのだろう。
先生はその後しばらく腰を指圧してくれた。
これが泣くほど痛かった。汗びっしょりになる。

昨日見つからなかったメガネと財布の事を考える。
なんとなく家にあると思うのにどこを探しても無い。
打ち上げ会場の白木屋へ問い合わせる。メガネはあるが財布は無いと言われる。
帰り道、大荷物を抱えて自転車に乗っていた。
哲学堂辺りで段差を乗り越える時、カバンが飛んだ。
落ちたものを拾い集めた。
あの時落としたのだろうか。
キャッシュカード2種、保険証、2000円程度の現金。
カード会社に一方に電話する。今の所悪用されてはいないようだ。
ひょっこり出てくるかもしれない。
停止を勧められるが、再発行のわずらわしさが煩わしい。
絶対に間違っているのだが、停止しなかった。

今日は流れ姉妹、たつ子とかつ子を観に行くのだ。
予備のメガネを用意。夕立も止んだ。
荷物をコンパクトにしようと折りたたみ傘をカバンから出す。
荷物が多いのはエレガントじゃないもの、とひとりごちた。
いつも使わない傘を持ちっぱなしなのだ。
財布などナーバスな事は忘れ、うきうき出かける。
電車で荷物を確認すると、予備のメガネが入っていない。
視力0.1と0.2ではメガネ無しの観劇など考えられない。
どんなに面白くても、観ない方がましな程いらいらするのだ。
誰が誰だが分からないのだ。凹む。
表参道の駅へ出ると大雨。
何故気を効かせてカバンから傘を取りだしたりしたのだろう。
皆が雨宿りしている中、何事も無いかのように外へ出る。
こうなったら、わざわざ辛い思いをしてやる。
ずぶ濡れのまま、誰が誰だか分からない状態で芝居を観て、凍えて一番可哀想な客になってやろう。
ずんずん歩くと、その決意は鈍り、薬局でリポDゴールドを買い、雨宿り。
少しだけ雨足が弱まる。
出発する前に念の為円形劇場の場所を店員に尋ねる。
私はすっかり逆方向へ来ていた。地図通りに行ったのに不思議だ。
程よく濡れて受け付けを済ます。
メガネを忘れた事をつぶやいたら、多少前の席に変えて貰うことが出来た。
不幸の晴れ間。

芝居はこの日の辛さを押し流してくれる程楽しい仕上がりになっていた。
初めは顕作君も、たいし君も、伊達君も顔が見えずイライラしたが、次第になんとなく分かるようになってきた。
久々に単純に面白い芝居を観た。
笑いのセンスとやらが匂ってくると面白くても多少興ざめてしまう。
そういう我を感じさせないので、純粋に楽しかった。
千葉さん、村岡さんが素晴らしいのは分かっていたが、ここ最近前よりどんどん大物感が漂ってきた気がする。
二人とも人としても大物だ。それが自然に現れていた。

本日もノムミ、ユピコの3人で飲む。
芝居の度に出演者と飲みに行くという文化にも飽きてきた。
自分が出演している時も飲みたいと思うのは、公演日程の3分の1程度。
疲れているときにお客さんが察して帰ってくれたりすると、ありがたい時も多々ある。
こんな事を言うとお酒ちゃんらしくないと思われてしまうのだろうか。

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