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バリ最後の日

4/18その1バリ最後の日。
もうバリで夜を過ごす事は無いのだ。
異常な発疹が出来ようとも、もっとここに残りたかった。ため息混じりの朝。
時間が無いというのに、のろのろしてしまう。
とりあえずスミニャックに向って歩き始めた。
クタが原宿ならスミニャックは代官山といった感じらしい。
原宿も代官山もよく分からないので、自信は無い。
気になる店が会ったら申告して入る。
ユピコ(ユキゾウ、ウピミ)がひょいと入ったバッグの店は問屋さんだった。
値切るのが申し訳ない程、元値が安い。
それでも値切ってみたら、小さいポーチが日本円にして100円程になってしまった。
炎天下目をギョロつかせて買い物に行く。
我々の中ではいつしか買い物は狩と呼ばれるようになっていた。
ルピー紙幣を矢と呼ぶ。
円をルピーに換金しすぎると、日本に帰ってからどうしようもない。
小まめにちょこちょこ換金するため、常に矢が不足。
ノムミ(ノムコ、ノムコム)だけは国際銀行のATMから降ろす事が出来たので、
一々換金所でスリルに満ちた両替をするより、小まめに矢の補充が出来た。
私とユピコは矢が無いのに、つい鼻息荒く狩をしてしまってはノムミに矢を借りていた。
いつもは人からお金を借りる時は多少卑屈になるものだ。
だが、我々は狩をするのが偉い事かのように「矢を持て!」と、胸をはる始末。
買い物を決定するには必ずユピチェックが入る。
多少でも問題があれば、ユピコが難癖をつける。
その難癖で購買意欲が無くなるならば、それで良し。
それでも欲しいなら、好きにしろという事だ。
私もユピチェックにより、白いワンピを狩るのを止めた。
ノムミはワンピを試着してターンしながら出てきて店員に笑われていた。
そこにユピチェック。
「これはね、ここの金色の部分が以外と派手で着なくなるよ。あと、花の柄が大きい。
もっと小さければ普段も着やすいんだけど。これよりむしろこっちのワンピの方が着ると思うよ。」
だが、ノムミは意志を貫いた。そのワンピを購入。
ユピコもそれだけの気持ちがあるなら良し!と満足気。

狩りをするにも諦めるにも我々は必ず言い訳を必要とした。

「あれ、そんなに合わせやすくないかもしれないけど、ちょっとした時に着れるし
意外と便利かと思うんだ~」
「凄い良かったんだけど、東京帰ったら着ない気がするんだよね、
あ、でも着るかな~。でも着ないよね~。あと、ちょっと微妙に縫製が甘いよね~。
ここだから可愛く見えるだけかなって・・・。」

炎天下の中の狩りで我々の頭はおかしくなって行った。
大体酷い話だ。
普段、デパートに行って可愛い服を観ても「こんな高いもん買えるか」と、歯牙にもかけないのだ。
自分の手の届く範囲の値段になっていると、こうも冷静さを失うのか。
「物欲ってあまり無いから・・・」などと言っていられたのは、単に貧乏だっただけなのだろうか。
さくっと買い物を終らせ、ご馳走を食べに行こうと言っていたのだが、その時間は無くなる。
物欲の奴隷と化した自分に辟易しつつ、他の二人も一緒だと安心もする。
冷静になるために何度かお茶をした。
2軒目で会議もした。私が書記。
我々がこの旅で買ったものを申告していくと言うもの。
それによるとノムミはワンピース3枚、ユピコはサンダル3足と、明らかに過剰なカ所がある。
「だって私は足が大きいからサイズがある時に買った方がいいんだもん」
ユピコがそういうと、
皆「そりゃそうだ」と、言い分を認めてしまう。

「あれ、よく買い物してると思うユウカピエロがこんなに少ないなんて」
「そうだよ、もっと買ってるよ」
確かに、パンツ、スカート、ワンピ、シャツ、バッグ、靴、の中で一番買っているのはサンダル2足だ。シャツも買っていない。
二人に怪しまれ白状する。
「ごめんブラジャーは3着買ったけど、この表にブラジャーの枠設けてなかったから」
表にブラジャーという枠を書き足す。
サンダル3足買っているユピコも
「あ、私まだワンピの枠が開いてるわ。それとタンクトップも」
などとありもしない枠を言い始める。
それによって帽子の枠、小さいバッグの枠などが増え、我々はまだ買っていいのだと結論をつけた。
2人が前に買い物をしてお勧めだという「BIASA」というお店にはこの日2度も行った。
そこは商品全て微妙にジャスミンの香りが漂っている。
女性の為のドレスを素敵な男性が選んでいた。狩に出なくても服を貰える人もいるのね……。

ホテルへ帰って、荷造り。
そしてビールを持って皆でホテルのプールへ。
この旅行でプールの楽しさが分かった。
ジムでただ泳いでいるのは退屈だった。
だが、ただプールにつかっておしゃべりしたり潜ったりしているのはとても心地よい。
15分位しか時間が無かったので、何も焦ってプールに入らずのんびりしても良かったのだ。
我々はのんびりするのが下手くそらしい。どうしても盛りだくさんにしてしまう。
慌ただしくチェックアウト。
ガイドのアルナワさんが迎えに来る。

これまで悉くツアーの進めるコースを断ってきた。
だが、これだけは必須というプラザバリへ。
ここで夕食をとり、1時間程時間を過ごさなければならない。
バリ最後の食事。だが、一番不味かった。
私のチャーハンはまだ普通だったが、ユピコのラーメンは汁がお湯なのだ。
醤油を入れて工夫していた。
その後免税店を覗き、ノムミはエステ。私とユピコは足ツボマッサージ。
何度かそういう症状に陥ったのだが、お金の桁が違い過ぎてどう払って良いかまるで分からなくなる。
最終日でこの有り様。ユピコに財布を渡して払ってもらう。

アルナワさんとはングラ・ライ空港の入り口でお別れ。
大して親密になった訳では無いが、きっと二度と会う事も無い。
余ったルピーの処理もあって、チップも弾んでしまう。
搭乗までの待ち時間で最後のお土産など購入。
中途半端なルピーを処理する事もできず、日本円で買い物。
おつりが無いらしく店員さんが空港中走り回って、小銭をかき集めに行ってしまった。
ノムミとユピコが早くしろとじれた顏で私を見ている。
最後まで優雅さに欠ける。
帰らなければならない事に腹を立てながら飛行機に乗り込む。
離陸して街の明かりが小さくなって行くのを、ユピコと顏を見合わせ嘆く。
ちょいとハゲ気味なのに何故か気になる添乗員がいた。
自分が100人いたら1人はあの人とつきあいたいと寝言を言っているうちにジャカルタに着く。
ここで乗り換え。バスで移動。
その時ノムミがあの人どう?と囁いた。
視線の先を辿ると、背の高い恐ろしいハンサムがいた。思わず笑ってしまう。
「あれは駄目だわ」
でき過ぎなのだ。
巻き毛で顏半分隠れている。
白いシャツに黒いズボン。
片手にはペーパーバック。アランと呼ぶ事にした。
アランが、高校生の時に家にホームステイしてる外国人だったら、間違いなくのぼせてしまうだろう。
ユピコにもアランを見せると笑っていた。
ハンサム過ぎると笑えるという経験は初めてだった。

ジャカルタから日本までの飛行機は異常に冷房が効いていた。
日本からバリはそうでも無かった。南国でのサービスは冷やす事らしい。
ユピコと私は元々寒がりなので冷房対策は万全。
だが、普段寒さなんてへっちゃらな感じのノムミがぶるぶる震えていた。
これではサービスだか攻撃だかわからない。
バリから遠ざかる道中は身も心もヘビーだった。
成田で歩く歩道に乗らずに歩いているアランを見かける。
彼の姿が見えなくなった時何故か、この旅は終ったと実感した。

4/18その2東京は寒かった。
ノムミは駅のホームでスーツケースを開け、着るものを捜していた。
バリは確実に楽しかった。だが、その楽しさの半分は3人の合宿生活だ。
東京ではよくお酒を飲む私たちだが、旅ではあまり飲まなかった。
一番飲んだ日で4杯だ。
一緒にいるためには居酒屋で飲む事が必要だったりする。
だが、外から帰っても一緒だ。飲まなくても充分楽しいのだ。
今まで何が辛くてあんなに飲んでいたのだろう。
なんとかお金持ちになって同じ老人ホームで暮らしたいものだ。

4/18その3
ジャカルタ空港で旅の終わりを嘆くユピコ、放心状態のノムミ

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