父との対話
近所のスーパーでつまみになるものを買う。
電子レンジも無い。油も無い。調味料も無い。普段何を食べているのだろう。
基本的に料理してはいない感じだ。
料理をしない人、というのが昔から理解出来ない。
特別凝らなくても適当に食べられるモノは作れる。
レトルトや外食で身体や脳が形成されていくと、障害を来して、余計作れない様になるのかもしれない。
別に普段作らなくても良いのだが、作れない人と言うのはそれだけで不利だ。
生命線を他人に委ねているようなものだ。
恐らくロクなモノを食していない父は、そのせいかヘンテコな事ばかり言っていた。
人の話を聞く力が昔から無かった。
以前野田秀樹さんのワークショップに参加した事があったのだが、その話をすると何故か
「大竹しのぶは裸を見せたがっている。性を売り物にして金を稼ぐ女性がいるから世の中は悪くなる。フロイトも女は裸を見せたくて仕方がないと言っていた。友香ちゃんもフロイト読んだ方がいいよ。文章を書くのに参考になる」
などと、返してくるのだ。
西川峰子の家が昔洪水で流された事を、大変だね、などと言っても
「あの人は脱いでいる。裸を売り物に・・・・」
と、なるのだ。
こういう事を言われると、何が目的なのか分からない。
なるべく反論しないでやりすごしたいのだが、つい
「スタイルの良い人は綺麗な体見せたいのは仕方無いのじゃない?」
「裸になるのは買う人がいて、なってくれと頼む人がいるのだから別に脱いだ人は悪くない」
果てには
「フロイトは脳梅毒だったらしいよ」
と、嘘まで言いたくなってしまう。
すると激昂して
「あんたに色々教えてやろうとしてるのに、もういいよ!」
と、声を荒げてしまう。
どう対処して良いかマニュアルがあれば良いのだが。困惑する。
しかし、昔父が縄で縛られた女性のヌード写真を隠し持っていたのを知っている。
それを言うと
「嫌で仕方なかったんだけど、お母さんが見たいから持ってこい持ってこいってうるさくてさ。パパはそんなものちっとも面白くないさ」
と、自分はそんなモノに一切関心が無いと強調していた。
多少変態じみた本だったが、エロ本位持っていてもそれほど悪いとは思わない。
頑なに否定する方が所謂「心の闇」とやらを感じてしまう。
はたまた、適当に
「浮気は出来る器の人だったらやってもいい。器じゃない奴が物欲しげにそっちに行こうすると低い人格が露呈する。」
などと言うと、激しく感心して
「あんた、そういうテーマで文をかけばいいよ。皆にそういう事を教えて広めた方がいい。そういう芝居を書きなよ」
などと言う。
おそらくこの場合の浮気は男性がするものであって、女性がする場合を微塵も考慮してないのだ。
また、このような私の主張は普通誰でも思い当たるような事だ。
特別変わった意見でも無い。
人より自分が様々な事に気付いて卓越しているから、教えてあげようなどという感覚は無い。むしろ逆だ。
私はざれ言を言いたくて仕方が無い類いの人間なので、申し訳ないけれど言わせて下さい、というスタンスだ。もしも同じように感じてくれる人がいたら、御の字なのだ。
父は世間の人に教えなければいけない事が沢山あるらしく、お金を払って載せてもらう雑誌にせっせと論文を書いている。
私が父から教えられたのは、世の中にはどんなに言葉をつくして話しても通じない人がいる、という事だけだ。
それは人生にとって結構収穫かもしれない。
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