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コピーで心労

盛り沢山な一日。

荻窪四面道の「石橋亭」でアコーディオンの発表会。
今回はいつもとは違い、TYAM(東京ヤングアコーディオンメイツ)の人を招いての合同発表会。アコーディオン会では有名な小川経子先生も来ていた。
皆かなり上達していた。
練習不足なため、新しい曲は一曲しか出来ず前回の曲を混ぜて弾く。
「黒いオルフェ」「アディオス・ノニーノ」「オブリビオン」の三曲。
前回は二日酔いで辛かったが、余計な緊張が無く演奏に入り込めた。
しかし、今回はベストコンディション。
最後の曲でやっと集中。少々乱暴だったかもしれない。
小川先生の息子さんがピアノとセッションで演奏。女子十二楽房の曲などもあり驚く。

演奏後懇談会。
私の隣には見学していた男の子。聞くとこれから習いはじめるという。
演奏を聞いている時、常に指が動いていた。
今年四月から学生さん。
「どこの大学?」と定番の質問。「東京大学です」と言うではないか。
「産能大学です」ぐらいの返事を予想していたので、理解するのに時間がかかる。
「おお!凄いね!」と、腰を浮かせてしまう。ここで失言。
「僕我流で色々弾いてました。『群衆』とか」と彼が言うと、師匠の牧田ゆき先生が私に「群衆だって」とのたまう。
群衆・・群衆・・。確かに知っている曲名だ。持っているCDに入っていた記憶もある。
だが、とっさに思い浮かばなかった。
「群衆ってどんな曲でしたっけ?」と先生に尋ねる。
「ほら、私のCDの」と言われ青ざめる。
そうであった。先生が去年出したCDで弾いていた。冷や汗をかく。
しかし、何となくこの東大の男の子はきっと上手いだろうと思った。
頭の良い人は楽器の筋も良い。大体の事で効率の良い方法を見つけ出すのも早い。
音楽には文系部分、理系部分があると思っていた。
私は文系部分でしか音楽が出来ない。
理系部分が備わっている人は楽器の構造やコードの仕組みを把握する事に、喜びを見いだしたりする。
彼は「僕は語学が好きでイタリア語講座を観てたら、cobaさんが出ててアコーディン格好いいなって思ったんです」「アコーディオン弾きたくて、東京出てこようと思って受験した」などと、頭の良い人のナチュラルぶりを遺憾なく発揮していた。

その後アコーディオンに関する様々な著書を出している渡辺芳也さんが、コレクションの楽器を触らせてくれる。
ソプラーニの可愛い赤の楽器だ。デザインも音も可愛い。
皆でいじらせてもらった。
見学に来ていた慶応のアコーディオンサークルの男の子が弾く。
結構変わったコードを押さえたり耳コピーでアレンジしたりしていて、皆驚く。
その時ふと東大の彼を見た。弾きたくてうずうずしている顏だった。
その時、やはり彼は上手に違いないと確信。
「僕もいいですか?」と、弾き始めた。上手いと予想していたより上手かった。
私の弾いた「黒いオルフェ」も、遥かに凝ったアレンジで弾く。
一年半我流で弾いていたというが、三年半やっている私より全然上手でアレンジのセンスもいい。自分の事を年月の割には弾ける方かも、と思っていたが自惚れだった事が判明。
今の二十歳前後には才能豊かな人材が豊富な気がする。
帰宅途中何度も電車を乗り間違え、結局タクシーに乗る。

帰宅後大慌てで仮チラシの原稿を作成。
「はえぎわ」に折り込ませてもらうオリジナルなバージョン。
宇宙レコード用に作ったチラシが五百枚余っている。最早どこに折り込む事も出来ない。
その教訓もあり、どこに折り込んでも良い定番バージョンも作成。
急いで三軒茶屋のキャロットタワーへ行く。
昼はアコーディオンを担ぎ、夕方は2500枚のコピー用紙。背が縮みそうだ。
疲れて二子玉川まで乗り過ごす。
予約時間に遅れ2500枚コピー出来るのか心配だった。
汗だくになり、紙をセットしたりコピーのセットに手間取っていると、ピンクのシャツの男性が近づいてきた。
ゆっくり機械を見ている。市民活動支援コーナーのスタッフだろうか。
するとコピー機の隣の機械について「これは何ですかね?」と尋ねてきた。
「さあ・・・?」
「これ、プリンターですよ。こんなに大きくて何をプリントするんですかね?」
「?ポスターとかじゃないですか?」
「凄いですよね。(じっくり機械に書いてある説明を読む)ああ、そうですよ。写真などって書いてある」
「はあ・・。」

コピーが紙詰まりを起こす。
ピンクシャツの男性(以後ピンク)を置き去りにして係の人を呼びに行く。
時間が無くて焦る。係の人の調整で何とかコピー機の調子が上がってきた。
凄い勢いでコピーされて行く。
ほっとしたのもつかの間。

「これ、凄い早いですね。最新機種かな」
「そうですね」
「カラーコピーは出来るんですかね?」
「さあ、知りません」
「出来るのかな?」
「・・・出来ないと思います」
「うちの会社にも勧めようかな。でもうちでは精々100枚位しかコピーしないもんな~。」

そんな中1000枚すり終える。
今度は別のバージョンをセット。しばらく手間取る。ミスコピーを数枚。
その度ピンクが「あれ?どうしちゃったんだろう」「困りましたね」とさえずる。
「大丈夫です」と連呼する私。ようやく軌道に乗る。紙をまとめ忙しさをアピール。

「このチラシ読んでもいいですか?」
「えっ!ああ・・」
「音楽劇ですか?」
「違います」
「宝船・・新井起きる・・(チラシの内容を声に出して読み始める)」
本を読もうとしたが「ヴォイステクニックの真実」という題名に、ピンクが会話運びをするヒントを得てしまう恐れを感じ、断念。
「大変ですね。手伝いますよ」
「いいです」
「あ、プジョー!カッコいい」

私は最近PEUJEOTと書いてある手提げを愛用していた。

「鞄だけです」
「僕もね、プジョー乗ってたんです。あとサーフ」

その後細かい車の番号などを連呼されたが意味不明。

「あと、ジャガーのってるんです」
「・・・ジャガー・・。凄い・・で・・す・・ね・・」
「親の持ち物ですよ」

コピーが終了。20時58分だった。21時に営業終了。ぎりぎりだった所要時間1時間。
いつか立ち去るだろうと思っていたが、その間ぴったりそばにいた。
明らかに背を向けて話しかけるなオーラを飛ばす事に全精力を注いだというのに。
受付で手続きをしていると係の方に「お一人で来たんですよね?あの方はご一緒の人では無かったの?」と問われた。
「違います。知らない人です。ここの方では無いのですか?」
「違うわ。何か変だと思ったんだけど。困ったら、言いに来て下さいね」
早く言いに行けば良かった。焦っている時に無駄な心労。
10分位寿命が縮んだ気がする。ピンクの寿命も縮めてやりたい。
だが、そのために再び関わるのは勘弁だ。
支援コーナーを出てエスカレータに乗ろうとすると下の階にピンクの姿。
帰り道まで付きあう元気は残っていない。しばらく隠れた。

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