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おしゃべりな家系

父とフランス料理を食べに行く。
新宿西口の「パリ4区」に予約をとっていた。
この店はとてもおいしいのに、いつも空いている。
予約を入れなくても全く問題なさそうだ。店には閉店まで私たちしかいなかった。
何故こんなに不人気なのだろう。もしかしかして、私がおいしいと思っているだけで、大した事ないのだろうか?
 
食事をとりながら、エレファント・マンと同じ病気について、父に色々質問する。
体中にどんどんコブのようなものが出来る病気だ。
父は形成外科医なのだが、この病気の手術を何度もしたらしい。
頭部に出来たコブを切除したら、脳とつながっていて激しい出血をしてしまい、足の皮膚から移植をして事無きを得た事もあったという。
エレファント・マンは異様な外見をしているが、とても美しい心を持っていた。
私はそこにうさん臭さを感じたのだが、どうやら心根が綺麗なのはこの病気の特質らしい。
何故そのような質問をしたかというと、父の会話は大体3パターンくらいの演説で成り立っている。
初めて聞くときはまだいいのだが、今迄、100回以上同じ演説をされてきたので、違う話で盛り上がろうと思ったのだ。
今日は様々な病例について尋ね、演説を封じるつもりであった。
しかし、気がつくと結局演説を始められてしまった。
父の頭の中には私にも興味深い情報が沢山つまっているはずなのに、父が演説したいこととは違うのだ。一度演説が始まったら、もう止められない。
こういう時美味しいものを食べているのは、幾分慰めになる。
そのためのフランス料理なのだ。
演説に疲れ、一息入れようと厠へ行く。
気を取り直して、席へ向かうと、私がいないのに父が演説しているではないか。
驚いて、相手を見てみると、店員さんだった。
田中角栄が生きていたら、というテーマについて語っていた。
そのうち、話は女性論になっていった。
男性が弱った国は皆弱体化している、女性はなんでも男と平等平等と騒ぐけれど、人間は自然じゃなければいけない、男性を頼りにしなければ国は滅ぶ、といった事を生き生きと語っていた。
店員さんはいい話を聞きました、と言っていたが、仕事中に迷惑だったのではないだろうか。父がよく店員さん相手に演説をするのを忘れていた。
私も同じ思想の一味だと思われたに違いない。
しかし、食事がおいしかったので良しとしよう。

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