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銭湯トーク

 財布と携帯と目薬と鍵が入ったポーチを無くした。昨日どこかに置き忘れたようだ。いつもは朝4時半にメイクを開始するのだが、携帯で目覚ましをセット出来なかったので、寝過ごす。ヘアメイクのさっちんに起こしてもらう。まだ酔っていた。ポーチが無くなったこともどうでもいいような気がした。撮影場所に行き次第に正気になって行くにつれて、心配になってきた。大騒ぎをして心あたりを探してもらう。果たしてポーチは出てきた。車や宴会場に忘れたと思っていたが、何故か共同生活をしている民家の近くのバス停にあったそうだ。見つかって良かった。やっぱりお酒は当分飲まないようにしなければ。
 撮影はお寺の境内で行われた。鐘突き場に登り、指で鐘をはじいたりしていたが、思いきり鐘を突きたくてたまらなくなる。西谷さんに「鐘つきたかったけどまずいと思って我慢したんですよ」と、我慢した事を偉そうに自慢した。西谷さんは「それは・・・我慢してください」と、困った顔をしていた。当たり前だ。
 いつもより早い時間に温泉へいく。お婆ちゃん達でおおにぎわいだった。シャワーが一つも空いていないので、湯船のそばで洗髪しようとしたら、一人のおばあさんが「わたしは後でいいから、あんたここつかいなさい」と場所を開けてくれた。丁重にお礼をいい、洗髪をして体を洗っていると、そのおばあさんは自分が湯船のそばに座り体を洗っている。間も無く隣が空いたので、おばあさんを呼び並んでシャワー。お湯から上がって脱衣所へ行くと「こしが痛いのはやっぱり年かねぇ」と別なおばあさんに話しかけられる。「筋肉が落ちると体重を支えられなくて腰が痛くなるそうですよ」と答えるが、「ふううん」と気のない返事。求めていた答えではないらしい。おばあさんのなかでは「年のせい」という答えが出ているようだった。そのおばあさんはなおも話し続ける。
「どうせもうすぐあの世へいくから。でも、なかなかお迎えが来なくて。自殺するのは家族に悪いし。早くあの世へ行きたいのだけど、こればっかりはねぇ。私、しわくちゃになって生きていたくないと思ってたの。」
 返答に困る事しか言わない。私もしわくちゃになった自分の顔をみて生きて行けるのだろうか、といつも思っているのだ。しかし、おばあさんはみんな生きているから、その時にはなんとなく大丈夫になっているのだろうと、安心していた。
「60代で死にたかったの。可愛いまんまで」
「失礼ですがおいくつなんですか?」
「79。もうすぐ80よ」
「ええ、見えない。お若いじゃないですか」
「そう、ありがとう」
 そして唐突に話題は変わる。
「さっき裸で体重計に乗っちゃった。おてんばなの。おてんば代表」
「あら、いいじゃないですか、お元気なのが一番ですよ」
 そこへ、別なおばあさん登場。
「あなた、川上さんとこのお嬢さん?」
「違います」
「あらそう、良く似てる。そのおじょうさんも綺麗なのよ。綺麗な人にしか誰かに似てるなんて言わないわ」
 またしても、綺麗と言われたのは嬉しいが、言っている内容は把握出来なかった。
「もしかして、お嫁入り前?」
「はい」
「27歳?」
「33です」
「あら、そう・・・。でもいいかもしれないね。背もそんな低くないし。そんなに太ってもいないし。自分でも痩せてるほうだと思うでしょ?」
「痩せているほうとは思いませんが、年とって顔がこけたので実際より痩せて思われるようです」
「そう、痩せようとか思っちゃだめよ。テレビとか出てる人はテレビであんだけ細いんだから、実際物凄い細いんだろうね」
「そうですね」
「でも、若い内は頑張ってダイエットしたりするのもいいのかもね」
 素敵そうなおばあさんだったが、痩せて欲しいのか欲しくないのかは分からなかった。
 夜ご飯は、とんちゃんという食べ物を食べた。神岡では豚の内蔵を焼いたりした物をよく食べるらしい。録音担当でシェフの森本さんが、地元の料理を自分なりに工夫した物を出してくれた。辛い味付けのもの、辛くないもの、食べるととけるようなキュウリを煮たもの。うるさい程手を変え品を変え、いかに美味しいかという事だけを訴え続けて、食事。うまくて泣きそう。

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