退院後の総括…そして、アルコールへの欲求

退院日。

 

昨年個室に入院していた時、隣の病室のおじいさんが昼は静かなのだが、夜になると一晩中ナースコールを鳴らし続ける人だった。

毎度の事らしく看護師さんも全く来ない。

痺れを切らしたおじいさんは

「おーい!誰か来てくれ~!」

と、叫び続け、やっと来た看護師さんが、おじいさんに「うるさいよ!皆寝てるんだからね」と、怒る声が聞こえる・・・という日々だった。

数時間置きにおじいさんの痰を吸う処置の音が聞こえたり、誰か来てくれ~、苦しいよ~というおじいさんの声がずっと聞こえてきて、その気持ちがシンクロして来るのか、自分にも形容しがたい恐怖が襲ってきて、トラウマになりそうな数日間だった。

 

あのおじいさんはきっと社会的にまあまあの地位にいて、家でも思い通りに生きて来たタイプの人だったのではないだろうか。

そんな人にも、老いや病は当然のようにやって来て、癇癪を起しても、思い通りにならない事態に直面し、耐えられずにナースコールをしたり、大声を出したりしていたのでは?と、勝手に推測していた。

 

そんな体験の為か、去年は病棟に蔓延る老いや死の気配にすっかり当てられてしまっていた。

だから、今年の入院手術が近づいてくると、手術自体よりも再びあの空間に滞在することを恐ろしく感じていた。

でも、今回は何故か、以前ほど恐怖を感じなかった。

 

なんとなく、個室よりも大部屋の方がそういう患者さんを間近に感じて、シンクロしてしまい、きついのではないだろうか?と思っていたのだが、今回はむしろ安心感さえあった。

今回隣のベッドに入院しているご婦人と、昨年のおじいさんとどちらの方が状態が悪いのかはわからない。

ご婦人は明らかにオムツで、しゃべることもせず、テレビを観ている時も、観ているのかもわからない虚ろな目つき。時折ベッドの手すりに、縋るようにしがみ付いている。人に自分の恐怖や痛みをまき散らすワケでもなく、色々なことを諦めて静かに耐えている感じ。

 

大部屋であっても、昨年のおじいさんみたいな人が隣であったら、やはり怖くて眠れなかっただろう。あのおじいさんも、大部屋だったらあんなに騒がなかったかもしれない。個室だから、寂しすぎて騒いだのかもしれない。そもそも、家族が普段の様子で、個室じゃなきゃ無理・・・と判断したのかもしれないし、本人が他人と一緒なんて嫌だ・・・ということでの個室だったのかもしれない。

 

個室とか大部屋とかいう問題でもなく、偶々周囲の患者さんが、静かに自分の不調と向き合う人達だったのと、私自身がケガをした直後よりも回復していたので、蔓延っている“気”にやられなかっただけなのかもしれない。

 

鎖骨以外にも色々不調はあるので、また入院、手術ということもあるかもしれないが、次回は迷うことなく、大部屋にしようと思った。

 

術後の経過も問題なく、すんなり退院できることになった。

パソコンやら本やら、重いもの持ち込んでいたので、稽古に行く前の旦那さんに荷物だけ、引き取りに来て貰い、ほぼ手ぶらで家へ帰ることが出来た。

 

家から徒歩10分程の病院なので、楽勝・・・と思っていたが、歩いてみると、一歩踏み出す度の振動が鎖骨に響いて、脂汗が滲むほど。

 

荷物を持って帰って貰ってなかったら、地獄だったな・・・。

 

一二週間くらいで、抜糸してたら、すぐに卓球だってできるはず・・・と思っていたが、自分があまりにも能天気だったことに気付いた。

 

取り出した鎖骨を支えてくれていたプレートを見せてもらったが、頑丈でとても頼りになる感じだった。一年間鎖骨にネジ留めしていたので、気楽に腕立て伏せなどやれていたが、あの支えがない生身の鎖骨には、プレートを止める為に入れていたネジの穴もいくつか空いているはずだ。ネジ穴がふさがるまでは、腕立て伏せなんてもっての外だし、重い荷物も厳禁だろう。

一年間骨にくっついていたので、少し骨や肉とも一体化していたはずで、剥がす時にもスッと抜けるものでもないだろう。周りの肉や骨に無理な力もかかったはずで、やはりその周辺はドーンとダメージを受けている。

 

良質なたんぱく質やカルシウム摂取を心がけ、早く動かせるようになりたい・・・。

 

そう思っていたのに、寝る前に冷蔵庫にあるビールを見てしまうと、飲みたくてたまらなくなってしまう。

アルコールは炎症がある時には厳禁・・・と分かっているのに、

 

「一杯くらいいいいんじゃない?」「痛みに耐えた自分にお疲れ様って意味で飲んじゃおっかな」

 

という誘惑の声が聞こえて来る。

 

冷蔵庫に手を伸ばしビールを取りかけるが、すぐその上にあったジンジャーエールに目標を切り替え、急いでプシュッと缶を開ける。

空けちゃったら、もうこれを飲むしかない。

 

これを飲んだら、お腹がタポタポになって、ビールを飲みたい気持ちも収まるだろう…。あーあ、ビール飲みたかったな・・・と、思いつつも、空けてしまったジンジャーエールを飲んでいたら、何故だかちゃんと打ち上げのビール気分になって来た。

 

どうやら、缶をプシュって開ける行為自体にも、何某かの効果があったらしい。

そして、微量ながらショウガの成分のせいか、体がカっとなる効果もある。体がアルコールとちょっと勘違いしてしまうような味わいもある。

 

このジンジャーエールは160ミリリットルのミニ缶で、近所のスーパーでは47円で売っている。発泡酒よりも安い上に、量も適量だ。

しばらくこのジンジャーエールを冷蔵庫に常備して欠かさないようにしよう。

 

250ミリリットルのビールに手を伸ばさずに、とりあえず一週間過ごせますように・・・。

 

そして願わくば、特別なイベントや人と会う時以外に、習慣的にビールを欲する気持ちも消え失せてくれますように・・・。

 

それにしても、退院した後の子供達の態度はあっさりしたものだった。

 

私だけが、会いたかったよ~~~!と、体を離しながらもハグをしたり、頬ずりをしたりしていたが、子供らは、じゃれついて来た犬をかまってやる・・・くらいの対応しかしてくれなかった。

 

「ママがいなくて寂しくはなかったかい?それとも、いなくて好き勝手できてよかったりした?」

 

と、聞いてみる。

 

「う~ん、両方かな」

 

まあ、そんなもんだろう。

寂しがられ過ぎても困るし、順調に育っていることを喜ぶことにするか…。

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手術と絶食と枯れ枝のようなおばあさん そして、バナナ

手術日。

0時から食事禁止、6時から飲み物禁止ということだった。

前日の夕食が18時だったので、既に10時くらいにはお腹がグーグー鳴っていた。

こんなことなら、オヤツでも買っておけばよかったと思いつつ、自販機でナタデココ入りドリンクやココアというカロリー高めの飲み物を買い空腹を紛らわしていた。

 

朝の5時59分まで、麦茶をガブ飲み。

6時から点滴開始。身体に管が入るのはいかんせん不快だ。

前回の手術では尿道カテーテルを入れていたが、今回はカテーテル入れるのだろうか・・・?

そんな事を思っていると、看護師さんが、斜め向かいの患者さんに「尿道に管、入ってますからね、5日間、頑張れる?」

 

などと聞いていた。

「はい、頑張ります」

マジか・・・。

 

前回は半日程度だったが、抜いてもらった時は心底ホッとした。

あれを5日も!

 

点滴だけならば、歩き回ることは出来るが、カテーテルが入っていたら歩き回ることもできないのでは?

そう言えば、何人かの患者さんの元に、看護師さんが来ては「リハビリ頑張ろうね~」

と、ベッドの上で声をかけて何やら運動をしたり、数を数えている。何日も動き回れない人が沢山いるのだ。

 

そんな事を思いながら、PTAの議事録の見直しをしたり、読書をしたりしているうちに予定より1時間くらい早く手術を受けられることになった。

 

前回は手術室へ行くまで、怖くてたまらなかった。

二度と目覚めなかったらどうしよう・・・逆に手術中、痛さで目が覚めたらどうしよう・・・?

途中で目が覚めない方がいいに決まっているのだが、意識の無い間に行われることを考えると、耐えがたい気持ちになったり・・・。

なので、今回は一切なにも考えないことにしよう、想像もしないようにしよう・・・と、決めていた。

 

想像しない、考えない、無心・・・無心・・・。

 

手術台へ横たわってからも、笑顔を心がけ、ただただ深く息を吸ったり吐いたり。

 

「何、緊張してんの?」

 

私がスーハ―しているのをみて、麻酔科の先生が笑っていた。

 

緊張しないようにスーハ―しているのだが、まあ緊張して見えるだろうな・・・というか、やはり十分緊張している。

 

マスクを口に当てられ、点滴に薬剤を投与され始めた。

 

ああ、去年もこんな匂いだったな・・・。

 

「まだ眠くはならないよ。点滴冷たいのが入る感じがして、ちょっとしみるかもしれないけど・・・」

 

ああ、去年もこんなこと言われたな・・・そんなにしみないけどな・・・ちょっとぼんやりして来たかな?まだ・・・意識はあるなぁ・・・うん、意識は、まだある・・・。

 

そこから、一切何の意識も思考も途切れた。

 

凄く遠くから、呼ばれたような気がして目が覚めた時には、手術室だったのか、入院している部屋へ運ばれている最中だったのか、もはや思い出せない。

 

声を出そうとすると、少し声が出し辛いので、先ほどまで口の中に管が入っていたのだな・・・と、思うが、そんな記憶もない。

 

昨年の麻酔は中々冷めず、意識はあるのにしゃべれず指もうごかせず、数時間体が麻痺しているような感覚があり、それが苦痛だったのだが、今回その事を伝えたら、薬を少し変えて貰えた。

それが吉と出るかはわからないと言われていたが、今回は目が覚めた直後から指も動かせたし、話すこともできた。

 

良かった・・・。

 

お腹減ったな。晩御飯食べてもいい状態なくらい元気だと思うのだけど、ダメなんだろうな・・・。今日は食事なしと言われていたし・・・

そんなことを思っていると、

 

「回復もいい感じだし、バナナくらいなら食べてもいいんじゃない」

みたいな看護師さんの声が聞こえた。

 

やった!バナナ!全然食べられる。むしろ食べたい!

 

 

看護師さんやスタッフさんがいなくなった後、スマホで好きなYouTubeちゃんねるを開いて、イヤホンで聞く。

ちゃんと聞こうと思うのだが、いつの間にか意識が事切れた。

 

そして夕食の時間。

 

同室の他の患者さんには、夕食が配られている。

私にバナナは配られるのだろうか?

 

バナナ、バナナ・・・と、心躍らせていたが、誰も私のところへバナナを持ってきたりはしなかった。

 

あれは、あの声は夢だったのだろうか?

 

看護師さんが、何度も、体温、血圧、血中酸素を計りに来た。

その度に

「大丈夫ですか?痛くないですか?」

と、聞かれた。

 

「全然痛くないです」

 

本当にびっくりする程痛くなかった。

 

痛くない・・・というか、患部に関しては全く感覚がなかった。歯科で麻酔が効いているかのように無感覚。

 

数時間経っても、全く感覚がないので、次第にこのままずっと、鎖骨周辺が無感覚だったらどうしよう?と不安になった。

でも就寝時間くらいから、次第にジンジン痛み始めた。

 

痛いのは嫌だったが、感覚が蘇って来て、ちょっと安心した。

 

それにしても、隣の患者さん、とても心配だ。

恐らく80歳は優に超え、もしかすると90歳近いかもしれない女性なのだが、いつ見ても、枯れ木のような佇まいで、殆ど口を利かない。

話しているのかもしれないが、聞こえない音量なのかもしれない。

 

「食べないとダメだよ」「ご飯が嫌だったんだね。お菓子なら、食べるって聞いたよ」「ほら、食べないと・・・。ウェハースなら食べられるんじゃないの?」「ゼリーとジュース、どっちだったら、食べられるの?どっちもダメ?まだゼリーの方がいい?じゃあ食べないと!」「食べて元気にならないと、ここから出らないんだよ」「頑張ろう!」「頑張って、食べて!」「お腹減らないの?」

 

などという看護師さんの声ばかりが聞こえる。

仕事だし、そう言うしかないのも理解できるけれど、最早食べる体力、気力が無いのだろうな…。

ここから出たいとも思っていないのかもしれない。

普通に、寝ているだけでも大変なのかもしれない。

 

就寝後、

「プー・・・プー…ポ・・・ポ・・・ポ・・・ポ―・・・」

みたいな息の破裂音が聞こえて来た。

 

不審に思って聞き耳を立てると、隣の患者さんだった。

 

「ポ・・・ポ~、プ…プ・・・プ…プ…」

なんだかわからないが、苦しそうではない。

隣の患者さんの口から聞こえて来た初めての音声だった。

なんとなく、生まれて数か月の赤ちゃんが、自分の手をひらひらさせてじっと眺めたり、自分から発する音が面白くて、何度も声を上げたりして、試しているような・・・そんな時の雰囲気を感じた。

 

誰かに何かを急かされたり、指示されるのは嫌だけれど、誰にも何も言われていない時には、ちゃんと自分の体に関心を持って、自分なりに自分の体で色々試しているのかもしれない。

 

破裂音はしばらく続き、私もなんとなく安堵して、そのまま眠りについた。

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いざ、入院…!

今日から二泊三日で昨年骨折した右鎖骨のプレートを除去する手術の為に入院。

午前中には、市役所へ行き限度額認定証を取りに行く。手術入院がいくらになるのか、わからないが、取っておくにこしたことはない。

 

そして、入院準備の荷造り。

荷造りはとても苦手。

楽しい旅であっても気乗りがしない。いわんや、手術入院をや…と思ったのだが、全く楽しみじゃない上、誰にも会わないので、入れるものが少なくて楽だった。楽しみじゃない時の方が荷造りは楽なのかもしれない。

ちょっと発見。

 

それが終わったら、PTA通信の配布に学校へ行かなければ・・・と、思っていたら、他の役員さんから、他の用事で学校へ行ったので配布しておきました・・・とのことだった。

 

「うわぁ、なんていい人達なんだろう」

 

ちょっと感動。

 

そう言えば、先日作業中に

 

「PTAの作業だけでも滅茶滅茶忙しくて大変なのに、働いている人ってどうしてるんだろうって思うよ~」

 

と、話していたお二人だった。

それを聞いた時には、マジか・・・働いていない人でも大変なことを引き受けてしまったのか!ヤバイ!どうしよう・・・と思ったが、こんな風にさらりと親切なことをしてくれるなんて・・・。優しいなぁ・・・。

 

クラスへの配布以外に、他校への配布作業もあったので、結局学校へ行ったのだが、作業の量が減った分、とても楽だった。

 

いざ、入院。

 

大部屋に入院するのは、小学校1年生の時以来初めて。

先に入院した人達に挨拶したり、おりゃべりに付き合わなければならなくて、持ち込んだ仕事もできない状態になるのでは?と、心配していたが、そんなことは全くなかった。というか挨拶する隙もなかった。

それはそれでちょっと残念?

 

コロナのせいか、昼間からカーテンで仕切られているので、ほぼ漫画喫茶の個室にいるような感覚。

昨年は、コロナが怖くて個室にしたのだが、今は、入院手術する人は皆PCR検査を受けているとのこと。

しかもラッキーなことに、私のベッドは窓際だった。

カーテンのみに仕切られているよりも、解放感があった。

意外といいなぁ・・・大部屋。

完璧に孤立している個室よりも居心地いいかも。

 

ただ、夜中に3回くらい向いのベッドの人のナースコールで、看護師さんが間違えて私の所に駆け込んでくる・・・という事態があり、それには驚いた。

 

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私が触れると調子を崩す機械たち…PTA活動はまだ始まったばかりだけど、息切れ

午前中、病院でPCR検査。

31日から、昨年骨折した鎖骨のプレートを抜く為の手術をするのだが、入院、手術する為には検査を受ける必要があるとのこと。

PCR検査だけだと思っていたら、血液検査、尿検査、心電図測定など他にも沢山の検査があった。午後から、PTA通信の印刷配布作業があるので、間に合うかヒヤヒヤしたが、ギリギリ間に合った。

14時に、手伝ってくれる他の役員の人が来てくれることになっていたので、私は13時に入って、印刷の準備をすることにした。

会長が校正し終わった原稿はPTA室のパソコンに入っているとのことだったので出力して、製版くらいまではしておきたかった。

だが、PTA室へ入ると、テーブルに既に出力した原稿が置いてあった。

会長が出力しておいてくれたようだ。

助かった。ひと手間減った。

よし、これを製版しよう!

ところが、製版した途端、エラーが出てしまう。

画面の指示に従うように、トレーを開けたり中に巻き付いているインクまみれの薄い紙を引っ張り出したりしているウチに、手は真っ黒になってしまった。

普段は小汚い服を着ているのだが、PTAらしく・・・ということで着て来てしまった白シャツにもインクが付いてしまった。

色々努力をしてみたものの、何度製版しても半分は印刷されなかったり、印刷にムラが出たり・・・。

最初から調子が悪かったのは確かだが、なんとなく私が触ったせいでどんどん機械の調子が悪くなっているようにも思えた。

そうこうするうちに、手伝ってくれる他の役員の方々がやって来た。

「これ、業者に電話しよう!」

 

ということになり、リコーに電話をかけ、一時間後位に来てもらえることになった。

その間、不安定ながらも、印刷濃度を一番濃くしたりしながら、騙し騙し製版をして、作業を進めた。

やっと業者の人が来て機械を見てれたのだが、どこもおかしくない…と言われてしまう。

その業者さんが製版すると、何の問題もなく綺麗に製版できてしまったのだ。

 

「バカな・・・!」

 

と、驚きつつも直ったのなら、それはそれでよかった。

「僕、何もしてませんよ」

と、業者さん。

 

それでも直ったのならよかった。

 

だが、私が再び新しい原稿を製版すると、また色ムラだらけになってしまう。

 

「やっぱりおかしいです!ほら!」

 

と、何故か勝ち誇ったように業者さんに見せる。首をかしげる業者さん。

再び業者さんが、製版すると、またもやクリアーに製版されている。

 

「これね・・・ロールにインクが染みてないこともあって、そういう時は何度か製版すると、大丈夫だったりしますよ」

 

だが、私が触れる前は、そんなことをしないでもクリアーに製版されていたのだ。

私も、今まで何度も製版していて、その時は何の問題も起きたことはなかった。

 

ただ、今日の配布印刷業務は、私の仕切りで4人も手伝いの人を呼んで、8ページにわたる印刷物を800部印刷するという、プレッシャーに満ちたミッションだった。

 

失敗したら時間を調整して来てくれた人へも迷惑をかけてしまう。

 

そのプレッシャーにドキドキしながら、印刷機に触った途端のエラー&印刷機の不調。

 

何かの呪いのような気がする。

 

業者さんは、来た手前何か手伝わなければ・・・という感じで謎に、製版、印刷作業を小一時間手伝っている。

 

こちらはなんとなかなりそうだ。今度は紙折り機だ。

 

先に紙折り機を使って作業をしていた人と交替して、私も紙折り機の使い方を教えて貰いに行く。

だが・・・私が行った途端、紙折り機の調子も悪くなったのだった。

 

何枚紙を置いても紙をカウントしてくれなくなった。

試行錯誤の末、印刷していない紙で印刷した紙を挟んで紙折り機を作動させたら、やっとカウントしてくれた。

印刷してある紙は滑りやすいのかもしれない・・・という結果に落ち着いたのだが、これだって私が来る前には起きなかった現象だ。

 

私のせいなのでは?

よくわからないが、私は機械の神様に呪われているのかもしれない。

 

皆は、今のところ、私のせいで印刷機や紙折り機が不調になったとは思っていないらしい。だが、このような事が度々続くと、

 

あれ?この人が触るといつも、機械の調子が悪くなるな・・・・

 

と、バレてしまうかもしれない。

 

バレるもバレないも、全て私の気のせいなのかもしれないのだが、最早既成事実のように思えてしまい、後ろめたい気持ちでいっぱいになる。

 

なんとか紙折り作業も終え、今度は折り込み作業だ。

 

当たり前ながら、業者さんはもう帰っていた。

 

後から、折り込み作業に参加する。

既に効率のいい塩梅でローテーションが出来上がっていた。

スペース的にも私が入り込むと邪魔な感じ。

だが、一人だけダラダラ怠けている訳にもいかない。

しかも、一応この作業の一番の責任者は私だ。

 

何とか端っこに紛れ込み作業に加わる。

皆は楽し気に会話をしている。

 

私も、会話に加わってみたい。

 

そう思う者の、会話の内容がさっぱりわからない。

 

「●●さんが、こう言ってね~」「あはは、言いそう」「で、私もびっくりして、◎◎さんに言ったんだけど、あの人ってそうだよね~って話になって・・・」

 

皆が知っているらしい◎◎さんも●●さんもわからない。

話が合わない・・・というより、転校生みたいな感じで、同じ共通認識がない感じだ。

 

一人で黙々と作業していると気を遣わせそうだし、薄ら笑いを浮かべる努力をするが、マスクをしているので、薄ら笑いには何の意味もないことに気付き、やめる。

 

習いごと事情の話になり、金のかからない習いごとは送り迎えやお手伝いが大変で、金のかかる習い事はそういうのが無い分楽・・・という話になり、そうなのか・・・!と、マメ知識を得た気分になった。

お手伝いには公園や施設の場所取りがあったり、何年もやっている保護者はコーチ達やイベントや発表会に関しても意見を言えるけれども、始めたばかりの人は意見も言えないしコーチ達と口もきけない・・・という保護者カーストらしきものがある習い事の話なども盗み聞きできた。

それは面白かったのだが、皆どんなに近い場所でも習い事の送迎をしているらしい事に仰天した。

明らかに難易度の高い場所や危険そうだと判断した時は、送迎しているし、危ないと思った時にどうすればいいか・・・という話はしていたが、そんなマメなことは全くやっていない。ウチの杜撰さがバレてしまったら、呆れられてしまうかもしれない。黙っておこう。

 

会話の流れで誰かが来週私が鎖骨のプレート除去手術をすることに触れ、

 

「そもそも何で怪我したんですか?」

 

と、聞かれたので、初めて盗み聞きから、会話に参加する立場へ格上げされた気持ちになり、緊張したしながらもおずおずと答えた。

「ああ、スキーで・・・」

 

「ああ、スキーなんだ」

 

なんとなく、皆のテンションが下がっているように感じた。

 

あくまでも私の想像だけれど、やむを得ない事故なら仕方がないけれど、このご時世に好き好んで頼まれてもいないスポーツをやって怪我したんだ・・・それじゃああんまり同情できないな・・・という感じの気配を感じた。

 

そこで止めておけばよかったのだが、自分でもよくわからない衝動に駆られて続けてしまった。

 

「いやぁ~、霧も凄い中、アイスバーンで・・・ホントは私なんかよりも子供達の方がよっぽどスキー上手なんですけど、『ママ、怖い~~』なんて言われちゃって、いいとこ見せたくて張り切っちゃったんですよ~!『大丈夫だよ!ママについておいで!』って、颯爽と滑り出したら、転んじゃって・・・ポキって!。子供たちは、骨折したなんてわからないから、蹲ってる私に『ママ、頑張れ~~~』って声かけるんだけど、骨折れちゃってるからね~~~」

 

そこまで言い終わって、何かの違和感を感じて続けるのを止めた。

なんか変だな。私が今まで仲良くして来た人達は、こういう話をしている途中に、もうちょっと何某か食い気味に反応をしてくれていた。

そして、最終的には社交辞令かもしれないが、笑ってくれていた。

でも、今回は違う。

何か違う。

なんだろう・・・これ。

 

もしや・・・ドン引きのされている気配?

 

シーンと静まり返っている役員の方達の中、かろうじて一人の人が、反応してくれた。

 

「それって・・・子供トラウマ・・・」

 

 

確かにそうかもしれない・・・。

 

瞬時にこの話を聞かされた立場に思いを馳せてみた。

楽しいスキーをしていた最中、「ついて来な」と、言っていた母親が転んで骨折。ショックかもしれない。話として聞くと、そんな気もする。

でも、あの時の子供達の様子を考えると、そんな大げさなものでもなかった。

こちらがもっと心配してくれよ・・・という程、能天気な感じだった。

あと数時間滑れたはずなのに、残念。面倒くさいなぁとは思ったと思うが、トラウマ・・・という程ではなく、食べられると思っていたケーキが食べられなくて残念・・・程度の感じだった。こちらもそれに関して、失望もしていないし、そんなもんだという認識しかない。

 

だが、これ以上説明するのは得策ではなさそうだった。

説明しても、子供のトラウマに思いもよせず、へらへらしゃべる能天気な親・・・という評価のダメ押しをしてしまうだけだろう。

 

折り込み作業を終え、お手伝いへのお礼を言い、配布作業は一人で出来ます・・・と、プリント類を入れるクラスのポストに向かった。

だが、クラスのポストは他の配布物で満杯で、PTA通信の入る余地はなかった。

月曜日の午後から入院するので、午前中に再度学校へ来て、配布できれば良いのだが・・・。

すると、

 

「入院する日は大変でしょ?配布は無理だったら私達やっておきますよ」

 

と、皆さん、優しく声をかけてくれた。

今まで仲良くしてきた人達と種類は違うようだけれど、皆とてもいい人達なのだった。

仲良くなれたらなれた、なれなかったらなれないで、いいのだ。

焦らずに、腐らずに、とりあえず嫌われないように頑張ろう。

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ウチの荒ぶる神プン助②

ニンタマとのんびり過ごしていると、奥の部屋のドアがバタン!と、鳴った。

 

プン助、起きた?

 

ドン、ドタドタドタ!・・・バーン!

と、激しい音を立てながら、プン助がリビングへ入って来た。

 

「ママ、ひどい!」

 

ニンタマの予想が当たった。起きて来ちゃった・・・。

鬼の形相・・・。

ヤバい、これはアカン奴だ・・・。

寝起きの時の最悪のパターン。

 

そうだった。疲れて寝落ちした後に目を覚ますと、スッキリして機嫌が良くなるどころか、悪霊に憑りつかれたように、不機嫌で周囲に当たり散らすことが多々あったのだ。

幼少時から今まで、何度もその事態にぶちのめされて来た。

何故、忘れていたのだろう・・・。

 

「起こしてくれなかった!!!ママ、ひどい~~~!」

「いや、気持ちよさそうに寝てたからさ・・・」

「ひどい!!!もう、こんな時間だよ!!!」

 

21時だった。

 

一時間半寝ていたことになる。

 

「もう、何もできないよ~~~~~~」

「そ、そんなことないよ!今からだって動画観たり宿題やったりできるって。一時間半寝ちゃったってことは、いつもより一時間半遅く寝ても大丈夫ってことだし」

「何もできない、やりたいこと一杯あったのに~~~~!」

「だからできるって…」

 

プン助の顔はいつの間にか涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。

あまりの剣幕に、何故か言い訳がましくなるダメ親の私。

 

「大丈夫だよ、プン助。どうしたい?今、どうしたい?」

何故か、私よりも母親らしい感じで優しくプン助を宥めるニンタマ。

だが、プン助の泣き声はどんどん大きくなる。

「水飲むか!プン助」

 

こういう時には水を飲ませるのが一番だ。

 

いつもは「水持ってきて~」と、言われても、「自分でいれなさい!」
と、却下するのだが、大物俳優の付き人のようにそそくさと、水を持ってきてやる。

だが、中々飲もうとしない。仕方が無いので、プン助の口にコップを運んでやる。

 

と、一口二口飲んだ後、咽てゴボゴボと吐きだした。

飲ませてやった途端に拭くことになり、何かと忙しい。

「よしよし、大丈夫だよ、大丈夫だから」

と、やさしく宥め続けていたニンタマだったが、突然

 

「私風呂入るね」

 

と、いきなり風呂へ向かう。

10時には布団に入るので、確かにこの時点で風呂に入らないといけないのは、わかるが、変わり身早すぎないか?

しかし、どんなことがあっても、生活スタイルを変えないニンタマをちょっと尊敬。

それまで二人で対応していたのに、一人で、プン助に向かうと急に心許ない気持ちになる。

 

 

「ひどいよ~~~、何もできなかった~~~」

 

もう15分くらい同じことを言い続けている。

こちらも段々腹が立って来る。

少しはこっちの話に聞く耳を持ってくれよ。

 

「だから~!今からだってできるって言ってるでしょ?先に1時間半分寝たから、逆に一時間半分、色々できるって思えばいいじゃん!」

 

「もう無理だ~、できない~~~」

「じゃあさ、もう風呂はいっちゃいな。こういう時はさ、さっさと風呂に入るのが一番だよ!気持ちが変わるかもよ?」

「何もできなかった~~~!起してくれなかった~、一杯やりたいことあったのに、何にもできないまま時間が流れていく~~~~」

 

すると、脱衣所からニンタマの声。

 

「もう、早く謝っちゃいなよ!」

「え?」

「だから、早く謝っちゃいなよ!」

 

一瞬、ニンタマが何を言っているのかわからなかった。

一般的には子供が何かをやらかして、親に謝まっちゃいなよ・・・というのが、普通だろう。

でも、ニンタマはそういう意味で言っていないような気がする。文脈的にもそれでは筋が通らない。

 

「え?もしかして、ママがプン助に謝れってことを言ってる?」

「そうだよ。謝っちゃいなよ、ママ」

 

私が?私が何を謝るというのだろう?

起さなかったことをか?

いやいや、夜何もやらずに寝てしまったら起こしてくれ…とか頼まれていないし。

色々やりたいことがあったのかもしれないが、予定や希望を聞いていたわけでもない。

こんなことでひどいひどいと言われるのは、こっちからすると、チンピラに絡まれているようなものだ。

偶々息子だから、仕方ないと思っているが、謝る筋合いではない。

そう言えば、ニンタマは自分が悪くなくても、プン助が怒るとすぐに

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 

と謝り、時にはへらへら笑って土下座をしたりして、逆にプン助に嘘くさいと怒られたりしている。

 

「いやだよ!ママは謝らない。悪くもないのに謝るのはよくないよ」

「だって、こうなったらプン助は謝らないとどうにもなんないよ!さっさと謝っちゃいなよ!」

 

無性に腹が立ってきた。

「絶対に謝らない。あなたはすぐに謝るし、それがあなたの処世術かもしれないけど、ママは違うの。そういう時に謝るのはあなたの勝手だけど、そういう生き方はママはしないの!自分にとって正しいと思ったからって、ママにそれを押し付けないで」

つい強く言い返してしまった。

と、脱衣所から

「わかったよぉぉ・・・」

と、弱々しい声が聞こえて来た。

言い過ぎた・・・。これではニンタマの生き方を否定しちゃてるじゃないか。

傷つけてしまったかもしれない。

これ以上言わないで・・・と言わなかったものの、ちょっと泣きそうな声だった。

苛々は思わぬところに飛び火してしまう。

 

とりあえず、怒りを鎮めよう。誰の怒りだ?プン助の怒りか?私の怒りか?

よくわからない。

 

よくわからないが、困った時はスキンシップだ。

 

身を固くしているプン助を抱き寄せ、なんとかハグの体勢に持ち込んでみる。

 

最初は頑なだったプン助だが、私の胸と腹あたりに顔を埋めるというか、こすりつけ始めた。

抱き着いて来たというより、涙と鼻水とよだれを私の服で拭きたかったようにも思える。

緩いスライム状になった涙と鼻水とよだれはかなりの量だった。

若干気持ち悪いが、そんなことも言っていられない。

とりあえず、背中を撫でて、私もスーハ―スーハ―と深呼吸。

 

「ぼ、僕も、き、機嫌を直したいのに、どうしたらいいか・・・わからない。わからないまま、じ、時間が流れて行くぅぅぅ~~~~」

 

しゃくりあげながら、泣き続けるプン助。

時間が無駄に過ぎていくことに焦りながらも、何もできないことに苛立っているらしい。

やりたいことをする時間がどんどん減っている事だけは分かっているのだろう。

可哀そうに・・・。

でも、私も、どうすればいいのか、わからない。

よく、困っている人にはただ寄り添って共感しろというが、人の気持ちが落ち着くまでじっとしているのも結構しんどい。

退屈だし、他のこともしたくなってしまう。

私の時間もなくなっていく。

いいお母さんはそんなことを思ってはいけないのかもしれないが、私のやりたいことをやる時間も無くなってしまうよ~と、泣きたい気持ちになって行く。

 

プン助の背中も汗でぐちょぐちょだ。

 

体から色々液体を発しているし、興奮して体温も高そうだ。やはり、冷たい水分を与えたほうがいいのではなかろうか・・・。

さっきは水だったから、受け付けなかったのかもしれない。

 

氷入りのレモネードにしよう。

プン助はレモネードが大好きなのだ。日に何度も

「レモネード作って~」

と、言いすぎるので、最近は自分で作れるようにしないと・・・と、日に一度くらいしか作ってやらないことにしていた。

 

「しょうがない。サービスでレモネード作ってあげるよ。飲む?」

 

コクリと頷くプン助。

 

氷をたっぷり入れて持って行く。

ごくごく飲むかと思いきや、おちょぼ口でちびちび飲み始め、氷を口に含んでは、コップに吐き出す・・・という気持ちの悪い飲み方をし始めた。

 

何、この飲み方・・・、唾液がレモネードに入っちゃうじゃない。

 

ドン引きしながら、見ているが、注意はしなかった。

他所のお宅でこんな飲み方したら、出禁になるのでは?と、思うが、今は好きにさせておこう。

 

何分経っただろうか・・・。

 

プン助はずっとおちょぼ口でレモネードを啜り、氷を口に含んでは吐き出す・・・という飲み方を続けていた。

 

「ほら、大分氷小さくなったよ」

 

プン助は僅かに微笑みを浮かべて言った。

若干得意気でもある。

 

何?氷を小さくしたかったの?氷を溶かしながら飲みたいと思っていたの?

 

よくわからないが、何かいい兆しを感じる。

 

「あなたの飲みさしは、誰も飲めないね~」

 

と、私が笑うと、プン助もプっと笑った。

とりあえず、その雰囲気に乗じて並んで座って、押し合いをしたり、じゃれ合ったりしながら、

 

「もう、宿題はいいからさ~、風呂入って寝ちゃおうか」

「寝る前にさ、Amazonプライムで『ぼのぼの』

だけ観たい」

「しょうがないな~」

「ママも一緒に観るんだよ!」

「え~、ママも?しょうがないな~」

 

などと、話していると、風呂から出て来てすっぽんぽんのニンタマが、

なんだこいつら・・・と言う、しらけた顔でこちらを観ていた。

 

ふふん、あなたが風呂に入っている間に、仲直りしちゃったもんね・・・!謝れって言ってたけど、謝らないでも仲直りできちゃいましたよ!

 

11歳の娘に対して謎にドヤる気持ちが湧いていた。この程度のことで、得意気な気持ちになる自分のレベルの低さに、日々驚くが、とりあえず荒ぶる神を鎮めることは出来た。

よかった。

DV彼氏が暴れた後に彼女とスウィートに過ごすみたいに、私とプン助は傷つけあった心を癒すようにぴったり寄り添って、「ぼのぼの」を観たのだった。

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ウチの荒ぶる神プン助

プン助は泥団子作りにはまっていて、学校から帰ってきてからすぐに遊びに行き、夕方5時過ぎにドロドロになって帰って来る。

 

「ドロドロだからお風呂に入るかシャワー浴びて」

 

常に3回くらい、そう声かけしているが、聞き流される。

 

「今日はどうするの?」

「何が?」

「やるべきことをやったり、やらないならやらないでいいし、好きに過ごしていいけれど、漫然と過ごすより、どう過ごすかだけ決めておかない?」

「どうしよっかなぁ~」

「宿題やらなくても、明日、遅刻してでもやる…とか言わないで普通に学校行ってくれたらいいからさ。そこだけ守って」

「やらないつもりはない」

「じゃあさ、いつやるかだけ決めよ?先に遊びたいなら、遊んでもいいけど、10時には寝てね」

「やってもいいんだけどさぁ」

 

夕食を作りながら、そんなやりとり。

とりあえず、夕食前に宿題などをやる気に無さそうだ。

 

遊びに行く前に宿題をやっておいたら?とか、夕食前に宿題やっておいたら?とか、動画を観たいと言った時に、じゃあその前に宿題とか済ませておけば?という事を言うと、どうしてもやりたくない・・・という気持ちを芽生えさせてしまい、やるやらないで、修羅場を迎えてしまうことが多く、得策でないことは身に染みている。

 

宿題をやらなくても、学校を休んだり、何時間も遅刻をしたりしないで、とりあえず元気に学校へ行っているなら、まあいいか…なのだ。

 

夕ご飯を食べている間、

「ウェットティッシュ頂戴」

と、言って、ウェットティッシュで腕を拭き始めた。

 

「見て、真っ黒」

「うわ、きったねぇ~、風呂入ったほうがいいよ。シャワーでもいいし」

 

プン助は何枚もウェットティッシュを使って、手や足を拭き続けている。

勿体ないなぁ…ウェットティッシュ。しかし、すぐに風呂に入るつもりが無いならば、まだ拭いてくれた方が家は汚れないで済むか…。

 

夕食後、食器を洗ったり片付けをしていると、いつの間にかプン助の姿が見えなくなっていた。

恐らく、奥の部屋で漫画を読むか、YouTubeAmazonプライムを観ているかしているのだろう。

親の前だと宿題やれとか、いつまで観ているのか・・・などと言われる気がするのか、最近押し入れの中だったり、水の入っていないバスタブや、奥の部屋で自分の楽しみに耽っていることが多い。

 

側で何かをせがまれたり、廊下の壁をよじ登っては「凄い?!」と、聞かれたりするよりも、こちらも作業が捗るので、しばらくそのままにしておこう。

 

片付けがひと段落して、プン助を観に行く。

 

寝ていた。

 

ウェットティッシュで拭いたとは言え、まだまだ泥だらけの服と体で、ベッドの中に潜り込んでいた。ああ、布団が・・・。でも、もう手遅れだ。

 

この段階で19時半。

 

どうしよう・・・。

 

起すか、暫く寝かせてやるか・・・。

 

この時間に寝落ちするというのは余程疲れているのだろう。

 

放っておくと中々寝ないので、連日11時近くまで起きている。時には、12時過ぎても目をギラギラさせて眠れない…と大騒ぎをしている。

何も言っていないのに、10時には布団に入るニンタマとは真逆。

 

しかも、朝宿題をやってから動画が観たいので5時に起こして欲しいと言ったりもする。大概起きられないのだが、起こさないと恨み言が凄いので、一応できる範囲で声かけをしている。

 

結果、かなり睡眠不足のはず。睡眠不足だから、機嫌も悪くなって、やれば簡単なこともいやだいやだとごねて、遊ぶ時間も宿題する時間も無くなって行く・・・という悪循環に陥っている。

 

布団が汚れるのは気になるが、ここは寝かせておこう。なんならこのまま朝まで寝るくらいが丁度いいのではないか・・・。

 

宿題をちゃんとやって行くことの方が珍しいのだ。

宿題やってなくてもいいから、まず学校へ来てください・・・と先生にも、大目にみて貰っている。

眠れ・・・荒ぶる神よ、今は、今だけは安らかに眠っておくれ・・・。

 

プン助にあれやれこれやれ・・・を言わないで済むと思うと、こちらもリラックスしてきて、普段便秘がちなのに、数日ぶりに便意を催して来たり。

 

平和だ・・・。この平和はいつぶりだろう・・・。

 

お茶を飲みながら平和に浸っていると、ミュージカルの習い事からニンタマが帰って来た。

 

「あれ?プン助は?」

「寝てるよ。汚いまま」

 

ニンタマは、動物園へ小動物を観に行くようなテンションで、奥の部屋へ行き、寝ているプン助を眺める。

 

「可愛いね・・・」

「本当だね」

 

普段は蹴り合いをしたり、殴り合いをしたり喧嘩ばかりしているのだが、こういう時には可愛くてたまらなくなる様子。それは私も同じ。

平和でリラックスしている時に寝ている我が子を見ている瞬間は、至福の時なのだ。このひと時が味わえるなら、どんな苦労でも厭わない・・・とさえ思ってしまう。

100%気のせいなのだが。ひと時、そんな気持ちになる。

 

まるで強いシャブのような効果。やったことないけど。

 

「プン助って、このまま朝まで寝てると思う?」

「いや、起きるでしょう・・・」

 

マジか・・・。

 

 

保育園時代は、夕食時に寝落ちして、朝まで寝る・・・ということも度々あったが、もう9歳だ。やっぱり起きてしまうかな・・・。

寝ててくれないかな。

荒ぶる神よ・・・!頼む・・・朝まで寝てくれ・・・。寝ていてください・・・

 

続く・・・。

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月曜日、遅刻せずに学校へ行かせるという、夢

ここのところ、プン助は「こどもだってつらいよ」というアニメを、Amazonプライムで観ている。

 

「●●君から、観るようにって宿題出されちゃって…」

 

学校の宿題よりも、友達からの宿題に熱心で、昨晩は「あと、もう一話だけ!」と、寝る時間をオーバーしてまで観ていた。

 

「宿題は朝早くやるから、6時に起こして」

 

6時に起きるには、もっと早く寝ないと無理なのでは?と、思いつつ、翌朝6時に声を掛けた。

 

案の定起きない。

10分置きに声をかけ、6時半にやっと起き上がった。

 

「あれ?なんで6時半なの?」

 

まるでこちらに落ち度があるかのような態度ではあったが、この位ははまだ安全域。

これが6時40分だと、「もう絶対宿題がやれない…!」と、捨て鉢になる可能性が高い。6時半は前向きでいられるか、ギリギリの時間。

 

「ごはん…」

 

食卓の前へドカッと座る昭和のオヤジのようなプン助。

既に起きていて支度をしたり、何か勉強らしきことを始めていたニンタマが、

 

「宿題やるんじゃなかったの?」

 

と、あきれ顔だったが、ここで

「先に宿題やってから」

 

などと言うと、

「ごはん」

「宿題やってから」

「先にごはん食べてから」

「先に宿題」

「ご飯食べたらやるから」

「昨日、アニメ観る時に約束したよね」

 

みたいなやりとりを延々20分くらいやるハメになる危険を感じ、

「じゃあ、さっさと食べちゃいな」

と、朝ごはんを出す。

 

ご飯を食べた後、プン助はニンタマと楽し気におしゃべりしつつも宿題を終えた。

その時点で7時50分。

 

これで、8時前後には学校に行ける!

 

月曜日に遅刻せずに学校へ行けるなんて、久しぶりではなかろうか?!

毎日15分~30分の遅刻が常態化していた。とりわけ月曜日は、鬼門だった。

 

これをきっちりやってから、とか、普通に遅刻をさせないようにという、試みを数年間やって来ていたが、そういうことをさせようとすればするほど、逆効果だとわかって来ていた。

頑張れば頑張る程、親子ともども口論でヘトヘトになり、結局学校へ行く意欲も削いでしまう。

ちょっとの遅刻や忘れ物をガミガミ言わなければ、本人が自分で落としどころを見つけ、遅刻はしてもちょっとの遅刻で済むこともわかって来た。その方が、結果的に効率も良く、家も平和なのだ。

でも、やはり遅刻はしないに越したことはない。

 

今日こそは遅刻をしないで行けるのかも・・・!そして、遅刻をしない気持ちの良さに気付いて、少しずつ遅刻が減るんじゃないかしら?!

そんな眩しい未来が私の前にパーっと広がりつつあった。

 

うまく行く!
うまく行く!
今日はきっとうまく行く!

 

「じゃあ、後は靴下履いて、歯磨いて学校行くだけだね!」

 

久々の幸福感を味わっていると、

 

「ママ~『こどつら~』(こどもだってつらいよの略)」

 

という、声が聞こえて来た。

 

「え?」

「こどつら観たい~~~」

 

今から?なんで今から?学校へ行くタイミングの今???ありえない?!

 

「ダメ!!!ダメだよ、それは!」

「なんで?」

「なんでって、今、7時50分だよ?せっかく遅刻しないで行けそうなのに、観たら遅刻しちゃうの勿体ないじゃん!」

「観たい~~~」

「帰ってから見ればいいじゃん」

「今、観たい~~~」

「だめ!それは、ダメだよ!そういうのちゃんとしようよ!」

 

このやりとり3回しくらい続く。

 

ダメだ・・・こうなったプン助は、一般的に正しい道理を一切シャットアウトする。

このやりとりは時間と体力を食うだけで不毛。

お互いにとって負け戦にしかならない。

「こどつら」は一本10分くらい。

言い争っているウチに一本観られた・・・ということになってしまう。このままこのやりとりを続けていたら、最悪気持ちをこじらせて、結局学校へ行かないという事態にもなりうることは、経験上わかっていた。学校に行きたくないという動機以外で、休むことになるのもバカらしい。観たら、10分の遅刻になるが、行かないよりは10分の遅刻の方がマシだ。仕方あるまい。

 

 

「いいよ!じゃあ、さっさと観て、その後は行くんだよ」

「やった!」

 

いそいそと「こどつら」を観ているプン助。月曜日に遅刻せずに登校・・・という夢は叶わなかったが、遅刻しつつもなんとなく通い続けている現状を維持できるだけでも、御の字なのかも。

 

あ~あ、大人だってつらいよ。

 

遅刻確定した時点で、こちらものんびりした気持ちで10分間待っていた。「こどつら」のエンディングが聞こえて来た。

 

「終わったね!」

 

と、プン助の元へ行き、スムーズに登校モードへ誘導しに行く。

 

「もう一本!」

 

プン助、満面の笑み。

 

「は?」

「もう一本、観たいな~!」

「え?は?いやいや、これで10分遅刻してんだよ!もう駄目だよ!」

「もう一本!もう一本!」

 

そうなのだ。遅刻前提でアニメを観たいというありえない要求を一つ飲んだのだから、相手もこちらの要求を飲んでくれるだろう…というのは、プン助に対しては甘い予測だったのだ。

ありえない要求を一つ飲んだら、もっともっとと要求してくるのだ。

しまった…!

 

「こいつ、粘れば要求聞くな」

 

と、舐められたのか?観せてやったのは、失敗だったのか?そもそも観せて貰ったという感覚はなく、観られるのが当然で、私がそれを邪魔する敵だと思っているのかもしれない。

 

「だめ!!!!」

 

PCを取り上げると、既にもう手遅れの顔つきをしていた。

 

「わかったよ~行ってくるけど、帰ったらすぐ観るからね~」

 

という言葉は絶対に出てこない顔。

この顔相手にどんな言葉を言っても響かない。それは分かっているのだが、親として未熟な私の口からは、策が無いのに響かないどころか気持ちを頑なにさせる言葉ばかりが飛び出して行く。

 

「一本観たら行くって言ったのに、約束を破ったね!」

「そんなんなら、もうAmazonプライムとか絶対に見せられないよ」

「学校へ行かないってことが、ママへの仕返しになると思っていたら、大間違いだよ!
自分が損するだけなんだからね」

「折角今のクラスで友達いっぱいできて楽しくやっているのに、こんなことばっかりやってたら、また入り辛くなるよ!」

「信頼っていうのは、自分の財産なんだよ!こういう風に信頼を裏切って、自分の財産をなくしていってるのはママじゃない!プン助なんだからね!ママはもう知らないよ!」

 

等々。

 

口からこれらの言葉が飛び出す度に、

「ダメだ、どうしてこんな最悪な言葉しか出て来ないんだろう」

「ドラマで出て来るダメな親の典型みたいだ」

「こんな風に子供を傷つけるようなことを言ってはいけない、これではますます行く気がなくなるし、私が信用を失ってしまう」

 

・・・と、自分に失望して行く。

 

ダメだ。これ以上喋ってしまうと、もっとひどいことを言ってしまう。

 

ソファの上で寝転がっているプン助の近くで、静かに旦那さんが、ごはんを食べている。

 

私は、傍を離れよう。

奥の別室へ行きしばらく頭を冷やすことにした。

旦那さんは、私がワーって怒っている間は、口を挟まない。でも、私がいなくなったら何か言うだろう。それが、吉と出るか凶とでるかはわからないが、感情が高ぶった私がこれ以上何か言うよりはマシなはずだ。

 

別室に行くと、落ち込んで来た。ここの所、こちらがあれやれこれやれという事を言わなくなったこともあり、大分揉め事も減った。プン助自身も精神状態が安定して来たようにも思える。でも、些細なことに揉め事の種があるのは相変わらずだ。

こちらも「あれやれこれやれ」言わなくなったけれども、プン助も「あれやれこれやれ」どころか、関心がないことは一切無視するスキルを身に着けて来ている。

共同生活をする上で最低限のことを言っても、90%は無視する。

楽しいことや関心があること以外に、ちょっとでも何かをするのが、本当に苦痛なのだろう。

しかし、無視されたり反応がないと、プン助はただ無視しているだけなのに、こちらは否定されて気持ちになって、罰するような言葉を脅しに使ったりする状況に陥ってしまう。プン助も嫌に違いないが、自分もどうしてこんなことしか言えないのかと、自分に失望したりショックを受けてしまう。

しかし、考えてみると、私はそんな立派な人間じゃないということは、元々わかっていたことだ。

失望したりショックを受けたりするのは、自分をもっとマシな人間だと思っていたということだろうか?

こんな程度の人間なのだから、立派な人間になろうなどと無駄なあがきはやめて、この性能で、対処していくしかないじゃないか。

ちょっと泣いたりしているウチに、段々気持ちの整理がついて来た。

 

と、リビングで旦那さんの声が聞こえて来た。

 

「何時に学校へ行くんだ?・・・え?8時45分?・・・じゃあ、45分になったら行けよ」

 

どうやら、プン助なりに何か落としどころを見つけたようだ。

しかし、その時点でまだ8時20分くらいだ。45分って・・・遅くないか?

ここで、私がリビングに戻ったりしたら、またプン助も先ほどの口論を思い出して、行く気が失せるかもしれない。

私も嫌味の一つでも言ってしまうだろう。

プン助が行くまでは顔を出さないようにしよう。

 

しかし、電話も何もかもリビングにある。

25分もどうしろっていうんだよ。

 

と、目の前に「あさきゆめみし」があった。

 

「あさきゆめみし」は私が、中学生頃から読んでいた源氏物語の漫画だ。当時はエッチな描写にかなり驚き、子供に読ませるにも時期があるなと思っていたが、先日、ニンタマと子供がどうやってできるかを赤裸々に話したので、解禁しようと購入したものだった。パラパラとめくり、源氏が、柏木に女三宮を寝取られる辺りを熟読。紫の上を悲しませてまで、正妻に迎えた女三宮が、柏木と・・・!と、腹を立てている源氏。寝所に柏木が侵入して来ただけなのに、女三宮にきつく当たる源氏にムカムカしていると、8時45分になったらしく、旦那さんが、プン助を玄関まで送り出しに来た。

 

プン助への腹立ちが、光源氏への腹立ちにスライドし、こちらのほとぼりは覚めていた。いつまでも知らん顔をしているのも大人気ないか・・・と、

私も玄関へ顔を出し、

 

「いってらっしゃい」

と、声を掛けた。

だが、プン助はこちらを見もせずに無言で出かけて行った。

いつもは近所中に響き渡る声で「行ってきます!」と言うのだが・・・。

 

「私が、声かけたから行ってきますって言わなかったかな」

「多分ね」

と、旦那さん。

 

マジか・・・。

 

「そんなことないよ、偶々じゃない?」

 

とか、言ってくれるかと期待していたのだが・・・。

 

まあ、やっぱりそういうことなのか。

 

まあいいや。

多分、帰宅した頃には、プン助もケロっと忘れている。もしくは忘れたフリをしているだろう。

 

そして、「おやつ!!!」と、即座におやつを要求するか、泥団子を作りに家を飛び出すのだろう。

 

 

こちらもなるべく何事もなかったかのように振舞ってみよう。

それが、無策な私にできる、「平穏な一日」へ向けての精一杯だ。

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良かれと思って勇み足…をして疲れました

一昨日、スマホの液晶画面が割れていることに気付いた。

ずっと、表面に張っている透明のカバーが割れているのだと思い込んでいたのだが、よく見ると、カバーの中にパキっとヒビが入っていた。

 

翌日、なんとなくヒビが前日よりも派手になっている気がした。

 

これはヤバイ。

 

ヒビの話をしたらガラスコーティングがいいらしいと、機器に詳しい人から知恵を授かった。

これは早々に、修理をしてコーティングとやらをやろうではないか。

 

しばらくバタバタしそうだったので、近所で修理や、コーティングをしている店をスマホで探す。

 

と、最寄の駅に一件ヒビを修理してくれる店発見。

 

だが、隣の駅には修理もコーティングも請け負っている店があった。

しかも、安い。

 

よし!ここにしよう。

 

今日の10時から開店しているらしい。

 

「もう、雨止むし、17時までは降らないから早めに言ってきた方がいいよ」

 

と、旦那さん。

 

と言うわけで11時に予約をした。

 

 

なんだかんだで、支度に手間取り、歩いて行くにはギリギリの時間になってしまった。

 

慌てて、出発。

 

霧雨だったが、直に止みそうだ。

 

よし、傘はいらんぞ。

 

早足で15分程歩いたあたりから、雨足が強くなってきた。

 

ん?強くなって来たな・・・。

でも、まあ、一時的なものかな。

 

歩くこと数分。

 

あれ?どんどん強くなってきたな。

 

ズボンの腿の所が冷たくなってきた。

 

やばい、パーカーもびしょびしょ。

 

目当てのビルにつくまでにすっかりずぶ濡れ。

 

まあ、いいや。修理やコーティングをしてもらっている間に乾くでしょ。

 

お店は、思ったより小さく、店というより、マンションの一室みたいだった。

インターフォンを鳴らそうとすると、ドアに張ってあった注意書きが目に入る。

 

「インターフォンは馴らさずに、そのままドアをガチャっと開けてお入りください」

 

え?いいの?ガチャって入って・・・。

 

戸惑いながら、ドアを開けようとするが、あかない。

 

あれ?鍵かかってる?

 

営業時間なのに、鍵かかってる?

 

予約の時間になるまで、あと1分だが、予約時間になるまで鍵は開かないのだろうか・・・。

 

 

 

「今日、定休日ですよ」

 

と、いきなり背後から声がした。

 

ビルに出入りしているらしい配達のお兄さんだった。

 

「え?今日予約したんですけど!」

 

と、慌ててメールをチェックしたら、最短で当日に入れらたと思い込んでいた予約は、明日の日付だった。

 

こんなに濡れながら一生懸命やってきたのに・・・。

 

仕方がない。

明日、出直すか・・・。

いや、明日は午後からだが、学校の保護者会があり、私はそこで、前年度のクラス委員として司会進行をして、今年度の役員決めをしなければならない。

 

どちらかというと苦手な仕事が待ち受けている日の11時という微妙な時間に、どのくらい時間がかかるか、よくわからない用事を入れるのは、よろしくない。

 

明日の予約はキャンセルせねば・・・。

 

では、いつ予約できるだろう。

 

だが、ここ当分は予定が詰まっていて無理そうだった。

その間に、液晶画面のヒビが進行してしまったらどうしよう・・・。

 

考えながら、街を彷徨う。

 

この駅には、予約した店の他にも画面の修理をしてくれる店はあったはずだ。

 

ファッションビルの一角に、スマホの修理店を見つけたので、そこへ行くことにした。

画面の修理が、5900円程で、先ほどの店よりも、少し高いしコーティングはやっていない。

 

だが、時間は金より高い。

 

出直して先の日の予定を塞ぐより、多少高くても今日直してしまおうと、目当ての店へ行く。

 

だが、値段が5900円というのは最低料金で、スマホでスワイプしたり、文字を打ったりするのにストレスない画面にするには、12000円以上かかるとのことだった。

 

え?そんなに高いの?

 

ショックを受ける。

 

だが、文字を打つたびに反応しない!と、苛々いするようなことになったら、それはそれでお仕事にも支障を来してしまう。

 

仕方がない、

 

12000円の方にするか・・・。

 

ショックを引きずりながら、時間をつぶすにもスマホもないので、近辺の店で雑貨や、タオルやら、書籍やらを物色する。

 

ただでさえ予定外の散財をするハメになったのだから、絶対何も買うモノか・・・と、思えば思うほど、色々欲しくなってしまうのだった。

 

40分後、スマホを取りに戻る。

 

結局、別の日に出直すのも面倒ということで、コーティングは諦め、この場で、2000円程余計に払って、透明カバーを張って貰った。

 

 

ヒビだらけでみすぼらしいスマホは、見違えるようにキレイになった。

 

でも、色々負けたような、敗北感でいっぱい。

 

 

 

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千円カット行ってみた

ショートカットにして、ひと月以上過ぎた。

ロングヘア時代は、パーマを掛けたいとさえ思わなければ、10数年美容院に行かなくても平気だった。

前髪さえ自分でカットすれば、後は結っていればなんとかなる。

白髪も、ヘナやトリートメントなどでなんとかなる。

 

ただ、髪のボリュームが無くなり、結っても、若い時なら可愛気の一種で押し通せたおくれ毛も、最近ではやつれて見えるようになり、発作的にちょん切る様に肩辺りでジャキジャキ切ってしまった。

あまりにひどい髪型になってしまったので美容院へ行き、カットしてもらい、ついでにイメチェンをと、金髪のメッシュを入れたのだった。

ショートは楽だが、こまめにカットしないと、もたない。

 

だが、美容院は時間がかかる上にお高い。

そんなにこまめに行ってられない。

 

旦那さんが、行っているという千円カットへ行ってみようと、思い立った。

「全体的に2センチくらい切ってください」

と、言えば、そんなにひどい髪型にはならないはずだ。

 

旦那さんに場所を聞く。

 

「あ、千円カットって言ってたけど、この間久しぶりに行ったら、コロナのせいかわかんないけど、千三百円になってたけど、大丈夫?」

 

なんだよ、千円じゃないのかよ・・・と、思いつつも千三百円でも美容院よりは全然安いと、行くことにした。

 

旦那さんが言っていたあたりに、それらしき店を発見。

だが、店の外の看板の値段表示は、「カット 1,650円」となっている。

 

違う店なのか?

 

でも、1650円でも、美容院より大分安い。

旦那さんに電話で、店名を聞くとその店であっていた。

 

「1650円って書いてあるよ」

 

「え?マジで?俺が前にいった時は、1300円だったのに…って言っても、3か月くらい前だけど」

 

一年足らずの間に1,000円から、1,300円になり、更に1,650円になった・・・ていうことか。

 

そうだよね・・・色々やっていけなかったんだろうな。

 

高校生の時、2,000円でカットの美容院に行っていたことを思い出し、これでは美容院とあまり変わらないのでは?と思いつつ、それでも2,000円より、350円安いわけだし、別の店を探すのも面倒だしと、入る決意を固めていると、常連っぽい男性が私の脇を通り抜け店へ入って行った。

 

ヤバい!先を越されてしまった・・・。

 

雨だったからか、他に客はいない様子。

店長っぽい人が、その男性の応対をしている。私が入ると、店の奥から30歳くらいの女性が顔を出したが、すぐに奥へ引っ込んでしまった。

 

先に入った男性のカットをしている店長っぽい人が、

 

「あ、そこのタッチパネルで番号札受け取ってください」

 

と、男性の髪を切りながら言うので、マゴマゴしながらタッチパネルを操作。

 

カット希望、男性美容師がいいか女性美容師がいいか、指名をするか・・・などの項目があった。

指名料は200円らしい。

200円追加したら、1,850円。

誰がいいかもわからないし、指名は無しで入力。

 

と、7番という文字と、QRコードが印字された用紙が出て来た。

 

よくわからないまま壁際へ並べてある椅子に座り、順番を待つ。

 

先ほどの美容師らしき女性は出てこない。

お昼すぎだったので、休憩中なのかもしれない。

 

話している内容から、今カットされている男性は、店長っぽい人をいつも指名していることがわかった。

カット3,000円や、5,000円の店で、200円の指名料を払うのは感覚的に分かるが、1,650円に200円上乗せして指名すると、なんとなく損するような気持ちになる。

ケチろうと思っていない時の200円と、ケチろうと思っている時の200円の差・・・なのだろうか?

3000分の2005000分の200・・・という分母の大きさが、損を少なく錯覚させるのだろうか・・・。

何はともあり、この店長っぽい人は、その損を乗り越えて指名するわけだから、腕は確かなのかもしれない。

 

男性のカットが終わった。

店長っぽい人は、掃除機で散らばった髪の毛を吸い取った後、「7番のお客様」と、私を呼んだ。

 

椅子に座ると、マスクを外すように言われ、替わりに適度な大きさに畳まれたキッチンペーパーをテープで顔に張り付けられた。

 

マスクの紐があると、カットしにくいという面もあるが、マスクが毛だらけになりそのまま帰れなくなるとのことだった。

 

近くで見ると、店長っぽい人の胸元に着けらたバッジには、本当に「店長」と、書かれていた。

 

全体的に2センチくらい切って欲しいと、オーダーしたのだが、

 

「襟足の髪は短いので殆ど切りませんね」

 

と、店長。

 

あまりに当たり前のように言うので、うっかり「はい」と、言いそうになる。

 

「いえ、切ってください」

 

「でも、短いですよ」

 

「大丈夫です。切ってください」

 

「・・・」

 

店長、なんとなく不満気?

 

しかし、切り始めたら迷いなくジャキジャキ切り始めた。

 

場所によっては4センチくらい切っているようにも見えたが、シャギーのつもりなのかな?と、気にしないことにした。

 

短くなり過ぎたとしても、それはそれでいいか。

 

ジャキ!

 

ジャキ!

 

中々切り方が大胆だ。

 

清々しいくらい迷いがない。

 

今日は雨だから、客が少ないらしいが、普段はかなり混むとのこと。

 

このくらい大胆に切らないと、短時間で客はさばけないのだろう。

 

などと思っているウチに、鏡にうつる自分の顔に不安を覚え始めた。

 

一カ月前に美容院でカットされた時とは、明らかに違う髪型っぽい。

 

前下がりのショートボブに軽くシャギーが入った感じを激しく気に入っていたのだが、その前下がりのラインが床に平行なラインになっていて、シャギー感もなく、バツっと直線になっている。

なんだろう・・・自分が中学生頃に流行っていた段カットっぽい。

 

似合わなくはないけれど、前に比べると大分ダサい髪型のような・・・。

 

そして、シャギーが入っていたから、金髪メッシュの部分が自然に馴染んでいたのだが、バツっと切られているので、金髪メッシュもブツ切れみたいな感じで黒い髪との境目がクッキリしている。

まあ、耐えられなくもないが、これが千円カットってやつか(千円じゃないけど)・・・。

 

帰宅後、旦那さんに

 

「やっぱり、ちょっとダサいね~。なるほど、千円カットってこうなのかって思った」

 

と、告げると

 

「あのね~、千円カットは個人差あるんだよ~。指名した?」

「しないよ、初めてだし・・・」

「なんとなく、床屋あがりっぽい人と、行き場をなくした美容師っぽい人とか色々いて、俺のこんな髪(全体的に1・5センチくらいの短さ)でも、なんかいかにもおじさんぽい感じになっちゃう人と、ちょっとおしゃれっぽい感じにしてくれる人とかいるんだよ」

 

そうなのか・・・。じゃあ、あの店長は私にとってはハズレだったってこと?

 

「男の人だった?俺は七三っぽい男の人にあたると、あ~って思う。おばさんとかにあたると、ちょっとおしゃれっぽくなるから、なるべくおばさんにやってもらいたいなって思ってる」

 

おばさんはいなかったけれど、奥に引っ込んだ女性だったら、また違ったのだろうか?あの女性は私のカットが終わるころ、休憩が終わったのか、出てきて次の人の髪をカットし始めた。

 

私のオーダーの仕方もよくなかったのかもしれない。

随分、大胆にバツっと切るなと思った時に、もっとシャギーを入れて欲しいとか、前下がりのボブにして欲しいとか、口にして言うべきだったのだ。

細かい注文は受け付けて貰えないかもしれないが、言うだけは言うべきだったのだ。

 

ショートカットは1,2カ月に一度は切らないともっさりする。

 

染めたりパーマを掛けたいとっておきの時は、美容院に行き、ちょこちょこカットにはまた、千円カット的な店を利用してみよう。

オーダーの仕方を具体的にし、指名はしないまでも男性と女性が選べるなら、次は女性に頼んでみよう。

 

と、ニンタマが学校から帰って来た。

 

「ママ、ダサくない?」

 

と、聞くとキョトンとした様子。

 

「髪、切ったんだよ」

「え?ウソ、全然わかんなかった」

「うそ!短くなったでしょ?」

「ああ・・・言われてみれば」

「ダサいよね」

 

首をかしげるニンタマ。

 

「そう?あんまわかんない」

 

「ほら、こことか、金髪が自然に馴染んでなくてバツって切れてるし」

 

「そうかな?お腹減った~。おやつ」

 

と、洗面台の前で鏡を見ていた私を置き去りにして、台所へ行ってしまった。

 

旦那さんやプン助ならともかく、美容にうるさくなってきた娘なら、私の変化に気付いてくれると思っていたのだが・・・。

 

このダサさに気付いているのは、私だけ・・・ということか。

 

今後も千円カット行き、決定。

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迷えるカットマンへの道

3月末から、参加させて貰っている卓球練習会へ。

 

卓球をする場所を求めてあちこちに出没したり、初心者講習で知り合い、成り行きでナンパしたご婦人と卓球台を解放している日に、練習したりしているうちに、ひょんな事から、その練習会へ呼んで貰えたのだ。

 

練習会を開催している日で来られる時に参加すればいい…という緩い感じなのが、子育て労働者の私にとって、とても好都合。

 

卓球部だった高校時代、下回転をかける守備型のカットマンであったが、今はカットのやり方もすっかり忘れてしまっていた。

だが、過去カットマンだったということで、毎回その日に来ているカットマンの方に紹介されては、ちょこちょこ指導して貰うことになった。

 

参加費は300円で、教えてもらえるなんて…と、凄いお得ではないか!

 

最初に教えてくれた女性は、昔はフォアカットする時は、右足を後ろに下げていたけれど、今は違う。

開いた両足をほぼ平行な体勢で構え、カットする時に少しだけ右足を下げて、すぐに両足平行のスタンスに戻る。肘は下まで延ば仕切らず円を描くように元の位置へ戻す。

 

と教えてくれた。

その私のカットを見て、なんでこんなにぐにゃぐにゃしてるんだろう…、ピョコピョコしすぎているし、力が入りすぎだし、カットする時にそんなに左足をあげたら、体勢が崩れて、次の球に対応できなくなる…と、どう教えたらいいか困惑した様子だった。

 

でも、その後の自主練でなんとなく、その女性の言わんとしたことが分かって来たような気がした。

 

別の日。

軽やかな蝶のようなプレーをする60代くらいのナイスミドルに教えて貰えることになった。

 

前日の女性とは違い、足は両足平行ではダメ。右足は前。

 

昔は、右足を下げてフォアカットを打っていたけれど、そうすると、バックを打とうとした時にすぐに戻れない。でも、右足を後ろに引いていたら、そのままバックカットも出来る。そして、手は下に振るんじゃない。左だ。左に振っても、ちゃんと球には下回転がかかるんだ。

 

と、力説。

 

前日の女性の教えの癖がつき始めていたので、その軽やかな蝶のようなナイスミドルの教えには若干面食らった。

だが、ごまかして自分のやりやすい方法で打とうとすると、すぐにプレーを止められる。

「右足前!」

「手は左!」

これは、ごまかせない。

 

観念して、ナイスミドルの言う通りにやり始めた。

やりにくい…と、最初は思ったのだが、何度かやっているウチに、急にいい球が打てるようになってきた。

 

「あれ?これ、凄いやりやすいかも…!」

 

すると、それまで私のカットを心配していた先輩方も、

 

「おお!いいじゃない!」

「全然違うよ!」

「〇〇さんに教わってよかったね!」

 

と、誉めそやしてくれた。

そうか・・・右足前、手は左ね!

掴んだ…!

この感覚忘れないようにしなきゃ・・・!

 

高校時代と今のカットは大分違うのか・・・でも、今のカットもやれる気がしてきた。

 

そして、今日。

 

前回のナイスミドルと、仲良さそうにプレーをしていたドライブマンの村松利文さん似で花柄のウェアーを着ていた紳士が相手をしてくれた。

 

「あのね、右足前はダメ!右足はちょっと下げるの」

 

開口一番、そういわれ、またまた面食らう。

 

「手、左にやっちゃダメ。下だよ、下」

 

またまたまた面食らう。

 

ナイスミドルの助言と真逆じゃないか・・・。

 

どうせ見えないだろうと、右足前で打つと、すぐに叱責が飛んでくる。

 

「右足は後ろ!」

 

だめだ、バレる・・・。

 

「あのね~、フォアカット、左にふると、横回転かかっちゃうんだ。下手の人相手ならそれでも効くけど、ちゃんと下に振って下回転かけないと、上手い人には勝てないよ!この間、左にって言われてたでしょ?あれ、だめなんだよ。うまくなんない」

 

ナイスミドルと花柄紳士、仲良しに見えたのに、プレーに関しては思う所があったのだろうか…。

 

花柄紳士の言う通りに打とうとしてみるが、すごくやりにくい。そこまでレベル高くならなくていいから打ちやすいようにやりたいな・・・。今は、言う事を聞いておいて、後でナイスミドルに教わったやり方に戻そうかな・・・と思った途端、

 

「あのね、色々な人に教わると思うけど、僕が言ってるコレ、絶対間違ってないから。右足後ろ、手は下!ね!」

 

と、花柄紳士。

 

ああ、どうすればいいんだ・・・。

 

教えて貰えるのは、有難いのだけど、訳わからなくなってきた。

 

旦那さんに、その話を告げると、

 

「全部できるようにして、その相手ごとに、使い分けたら?それができたら、凄いうまくなるんじゃない?」

 

と、笑っていた。

 

でも、まあ、そうだな・・・。

 

今はどのやり方とか考えずに、毎回アドバイスに従っているウチに、なんとなく自分にしっくりくる道が見えてくるのかもしれない。

 

しかし、教えて貰えるのはありがたい…と、思っていたが、考えものだ。

 

カット以外にも、打ち合った相手全員に「ラケットを押すな」「ラケットをもっと押した方がいい」「ラケットを寝かせるな」「ラケット、もっと寝かせて」などと、アドバイスをされまくった。

うーん、ワケわかめだよ。

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