イエローさんから体育系なのか定かではない、激しい卓球の指導を受ける 

15時からクラブの卓球練習へ。股関節や座骨の調子が悪いので、悩んだのだが、ちょっとだけでもと、少し遅れて参加。

 

遅れていくと練習する相手を確保できないことがある。

体育館につくと、既にほとんど台は埋まっていた。入口付近に一人だけ練習相手がまだ確保できていないIさんがいた。私はそれまで、数回Iさんと練習をしたことがあるのだが、

「下手な癖にネットすれすれの球なんか打ってくるな!」

と、怒られたり、遊びでダブルスのペアを組まされた時も、「こんなとこに立っててもダメだろ!」と、怒鳴られたりしてひそかに涙ぐんだこともあるので、他の人が来るのを待つことにした。間もなくWさんが来た。女性でとても上手なカットマンの方。

早速練習相手をしてもらおうと、側へ向かうが、直後に見たことのない黄色いウェアのおじさんが現れた。

目が合ってしまったが、気づかない振りをして、Wさんの元へ行き、

「一緒に練習していただけたけますか?」

と、申し込んだ。

台は全て埋まっていたが、いつも私に親切に教えてくれるYさんが、クロスで半面使っていいよと、声をかけてくれた。なので、4人で一台の台でフォア側のコートを使わせて貰った。間もなくYさんは、俺は休むから…と、先ほど私がスルーした黄色いウェアのおじさんと交替し、その方(以後イエローさん)私の隣のバック側で打つことになった。

最初は普通にフォア打ちをしていたが、背後から

「全然ダメだね」

との声が聞こえた。

 

イエローさんだった。

驚いたが、適当にスルーして、練習を続けていると、

「ダメだ!ダメ、ダメ」

と、何度も私に対してのダメ出しが連発された。

その後、Wさんがドライブを打ち、私がカットをする練習をしていると、

「全然、ダメだね、そのカット」

と、何度も何度も言ってくる。そして、

「ちょっと貸してみて」

と、私のラケットを取って、自分が見本を見せ始める。

「慌てすぎなんだよ。もっと待って、打つんだ!」

「上半身、動かしすぎ」

「落ちてくるところを・・・こう!」

再度私が打ち始めると、

「ダメだ、ダメだ!」

と、またラケットを奪い取り、見本を見せる。

確かにとても上手で、言っていることはよくわかる。

 

だが・・・一体この人は誰なのだろう・・・。初対面なのだ。いきなりすぎではないか?と、困惑する。私はこの卓球クラブに出入りするようになって、まだ1年ちょっとなので、会ったことはないが、彼は他の人とは面識がある様子でもあった。

 

その後、練習を取り仕切っているリーダー格の人が、

「交代です~!台を左に一つずつズレてください」

と、号令をかけた。

曜日によって違うのだが、15分置きくらいに、場所をズレてペアを交代する練習をする日だった。だが、1台を4人で使っている場合、一つ場所をズレても、ペアは同じ人のままになる。私の練習相手のペアは次もWさんだった。

イエローさんは隣の台に移動した。

 

よかった・・・と、少しほっとした。

私は台のバックサイドの位置になったので、Wさんとツッツキという下回転でのラリーの練習をすることになった。すると、またもや

「ダメだ!ダメだ!」

の声がする。

隣の台に移動したイエローさんが、自分のラリーの相手をほったらかして、私の元へやってきて、また、見本を見せ始めた。

「右足をすぐ前に出すけど、それダメ!前に出しちゃダメなんだ」

「こう!球から距離をとって、振るないと、インパクトが足りないから、飛ばないんだよ」イエローさんが見本を見せた後、私が再度打ち出すと、

「こうだよ!こう!」

と、いきなり私の左と、右手首を背後から抱きかかえるようにつかんで来た。

 

最近、ご時世もあるし、コロナもあって、人に密着して教える・・・ということ自体が皆無になっていたのだが、いきなりガシっと抱え込まれるように、体をつかまれてびっくりする。

嘘でしょ?ギャグなの、これ?

 

しかし、教えてくれているしなぁ・・・全然頼んでいないけど・・・。

 

予期しない事態に困惑していたのは私だけではなさそうだった。私の相手をしていたWさんもイエローさんの言う通りだとしつつも、表情に困惑の色が浮かんでいた。そして、イエローさんの指摘は、いつも親切に教えてくれるYさんの指導とは真逆だった。Yさんはツッツキの時は、右足を前にするようにと、いつも私に口を酸っぱくするほど言っていたのだった。Yさんからすると、私は右足を前に出さなさすぎるのだが、イエローさんからは右足が前に出すぎ・・・と言われる。Yさんからすると私はまだ右足の出し方がまだ足りないようだったが、アドバイスのおかげで、自分としてはずいぶん右足を前に出せるようになったのは確かなのだ。だが、

「ダメだ、ダメだ!右足前に出すぎ!出すな!」

と、言われ、私の右足が急に動かなくなった。

 

気づくと、私の右足が動かないように、イエローさんが、私の右足を踏みつけていたのだ。

 

手首をガシっとつかまれた時以上の衝撃を受ける。

 

こんな激しい指導、高校の卓球部の時にも受けなかったよ・・・。

しかし、困惑しすぎて、不快を通り越して、面白くなってしまった。

その光景を、少し離れたところで、Yさんが困惑したように見ていた。

 

イエローさんの指導が白熱してきたので、イエローさんのラリーの相手は、他の相手を見つけて練習を始めてしまった。やばい・・・いよいよ、専属コーチみたいじゃないか・・・。

すると、そこへ少し癖が強いので、皆が練習相手をするのをやや敬遠しているSさんが遅れて体育館へやって来た。

Sさんはすぐにイエローさんに気付いて、近づいてきた。

「今、指導してらっしゃるみたいですけど、私、相手がいないんで、お相手してくださいませんか?」

Sさんは、強い口調でイエローさんに詰め寄っている。

だが、イエローさんは

「指導っていうか・・・ちょっとだけ見てるだけだよ」

と、言って、なかなか私の傍から離れようとしない。

「私相手じゃ嫌かもしれませんが、初心者の私の相手もお願いできませんか?」

と、Sさん。

Sさんは、ものすごく上手で海外の試合の審判などもしているという噂で、全然初心者などではない。だが、なぜか、やたら減り下るところがあり、私に対しても『お上手ですよね、私下手なんですけど、お相手していただけます?』と、言いつつ、『バック、ミドル、フォアの順番でコースをきっちりと振ってくれませんか』と、私にとっては難しい注文を付けて来たり、スマッシュを打ち込んできては『私は、今、打とうと思ったわけじゃなくて、回転がおかしい球をなんとか打ち返してこうなっただけなんです。よくあの人はすぐ打ち込んでくるって言われるけど、全然そんな気持ちで練習してはいないですから、そこのところわかってくださいね』と、暗にこちらが下手なせいと分からせつつ、こちらとするとどちらでもいいことを理解してもらおうとするような所があるのだった。

 

私に対しては「ダメだ、ダメだ!」「この足、動かすな!」などと足を踏んできたりするイエローさんが、Sさん相手にはタジタジと言った感じになり、二人は隣の台で練習を始めた。

私は解放されたのだが、次の交代に乗じて、イエローさんはしばらく姿をくらましてしまった。

その後、

「あの方、私と練習するの嫌みたいで、どっか行っちゃったんです」

と、Sさんは、他の方と練習していた私のところにやってきて、3人で打つことになった。

後にSさんは、私に

「いろいろな方が、あなたのところに教えに来るから大変ですよね~~。年取った男の人って、自分には教える権利があるんだって思い込んでる節があって、本当、困りますよね~~~~!あの方、うまいかもしれないけど、あんな古いタイプの卓球を教えられても、迷惑だっていうの。今は卓球も進化してるし、球もラバーの性能も変わってるのにね~~~~!」

と、イエローさんだけではなく、教え好きな人、特に男性に対して、本音というか不満をぶちまけて来た。

ここに同調すると、私が教え好きな人に迷惑している・・・と、いろいろな人に言われそうだったり、何か危険な気がしたので、曖昧にほほ笑む程度にに留めておいた。

その後、最初に自分の練習している台に入れてくれた後に、イエローさんと交替したYさん(いつも親切に教えてくれる方)からも

「俺が、あの台に呼んじゃったから、かえって悪かったね~。あの人はうまいんだけど、古い型なんだよね~、あとさ、右足前にしちゃだめだって言われたけど、あれは違うからね。右足は前にしないとだめだよ。そこだけは、絶対だからね」

と、言われ

Wさんからも

「いろいろおじさんたちに言われて、大変だね。私もいろいろ言うけどさ、全部聞かなくていいからね。全部聞いてたら大変だから。自分に合うなってやつだけ聞けばいいからね」

と、言われた。

 

家に帰って旦那さんに

「普通にレッスン料払ったら凄い高いところ、ただで教えてくれるから、ラッキーと思って、聞いてるけど、みんなバラバラなこと言うから、ちょっと大変なんだよね。ありがたいんだけどね~」

と、話すと

「教え好きな人にとっては、カモなんだろうね~。そのSさんのところには、誰も教えに行かないんでしょ?」

と、言われる。

考えてみると、子供の頃から頼んでもいないのに、やたらアドバイスをしてくる人が周囲にやってきて、ニコニコ話を聞いていると、いつの間にかいろいろ指図されるようになって、段々としんどくなって来たころに、言うことを聞かないと怒られたりする・・・ということがしばしばあった。

でも、最近は、そこまでのことはない。

いつの間にか、危険な人からは、指図をされたりする前に、逃げたり距離を置いたり、「ハイハイ」と言ってはいるが、聞いていないな・・・コイツと思われるようないい加減な聞き方ができるようになったのかもしれない。

 

だから、時折、イエローさんのような人に遭遇はしてしまうが、カモだと思われていたとしても、それは幸運だと思っている。

でも、次回イエローさんと遭遇したら、ちょっと考えようとは思う。

|

荷造りしているのを姿を見るだけで具合が悪くなる!

プン助の荷造り。

明日からプン助は修学旅行。

旅行の保護者説明会で貰った書類には

「荷造りから旅行は始まっています。必ずお子さん自身に荷造りをさせてください」

と、書いてあった。

最もだとは思った。だが、プン助は小学生になって以来、時間割でさえ自分でやれたことがない。

最初のうちは親がつきっきりで、支度を手伝っていたが、連絡帳に持ち物を書いてこないので、推測で入れたりしていた。

次第に、「これはいる?」と聞いたりするだけで、癇癪を起すようになり、こちらが折角入れても、「重い!」と、出したりするようになってしまった。

そして、ここ1、2年のほぼ最後の30分くらいしか登校しないようになってからは、身一つでも登校すればいいだろう・・・といった状態になっている。

大好きなお友達に、誘われた遠出でも、荷造りが無理だから迷惑をかける・・・という理由で断わることもある。

ただでさえ、修学旅行には

「行きたくないなぁ・・・家にいたら、ずっと休んでいられるのに」

と、気が乗っていない様子。

「行ってみたら案外楽しいかもしれないよ」

と、行く気持ちになるようにこちらも努力をしているが、当日になってすっぽかす可能性も高い。

荷造りなんて、夢のまた夢。

しかし・・・おそらく遺伝なのだが、実は私も超絶荷造りが苦手なのだ。

私の場合、プン助よりは嫌なことも我慢してやる性質なので、幼いころより、忘れ物はたくさんしていたが、一応自分で時間割や荷造りはやっていた。

だが、稽古場などでも、いつも帰り支度に異常に時間がかかり、どんな現場でも、いつも一番最後になってしまう。

旅行の前日はほぼ一日中荷造りをしているのに、必ず忘れ物をしてしまう。

そして、荷造りはいつもとても苦痛。

誰でも荷造りは苦痛だと思いながら、頑張っているのだと思っていたが、そうではない人間がいることを最近知った。

荷造り超絶苦手な私の娘のニンタマは「荷造りって楽しいよね~」と、いつもルンルンしながら、支度をしているのだ。

あんな苦痛な作業を好きな人間がいるなんて…!しかも、私の娘が・・・!と、大層驚いたのだが、それならば・・・と、最近は私の旅支度などはニンタマに手伝ってもらっている。

「そんなに服はいらないよ」

「歯ブラシとかはこういう場所に入れた方がいいよ」

「これ、もう少し小さく入れられるよ」

「〇〇日間だったら、服は〇着あれば大丈夫」

と、的確なアドバイスをしてくれる。そんなわけでも、

「プン助の荷造りするんだけどさぁ、ニンタマ手伝ってくれない?」

と、お願いすることにした。

ちなみに、本来なら二人とも学校にいるはずの午前10時頃から支度を始めた。プン助はただの学校嫌い。ニンタマは、学校嫌いもありつつ一応起立性調節障害で調子が悪い…ということで家にいたのだった。

「プン助、長ズボン、これでいい?」

「敷物はこれに入れておくからね」

「お風呂はこのカバンに入れて、汚れた服はここに入れてるビニールに入れるんだよ」

私とニンタマがプン助に質問したり、確認をするのだが、プン助はゴロゴロ転がるばかりで、ほとんど返事をしない。たまに口を開くかと思うと、

「絶対その服は着ない」

「あ~!行きたくない!」

みたいなことばかり。

 

以前、空手を習っていた時の合宿では、着替えを何着も入れていたのに、一度も着替えていなかったり、スキー合宿でも予備のマスクを沢山いれていたのに、三日間同じマスクをつけていたり、自分の持ち物を全然把握できていなかったので、すべてわかるようにジップロックに入れて、マジックで「パジャマ」「マスク」「下着」「お風呂セット」などと、書いていると

「荷造りしている姿をみるだけで、具合がわるくなる!」「マジックでそんなの書かないでよ!」

と、プン助は怒り始めてしまう。

「だって書かないとわかんないでしょ?」

「わかるよ!」

「だって、空手の時だって全然着替えなかったし、スキー合宿でもずっと同じマスクしてたりしてたじゃん!」

「なかったから!」

「あったよ!入れてたよ!」

「マジで?!あったの?ないと思ってた…」

ちなみに、その当時も全部わかるようにマジックで書いていた。

きまり悪そうな顔をしつつも、

「でも、マジックで書かないでよ~~~~!そんなの書かれたら、僕が支度したように見えないじゃん~~~~!」

 

私もニンタマも絶句をした。

 

「え?・・・もしかして、自分で支度をしたって思われたいの?」

「当たり前でしょ!人に支度してもらったと思われるの嫌だよ、僕!」

 

支度の為に靴下一枚、引き出しから出したりもしていなかったというのに・・・。

 

そうか・・・毎日、最後の30分くらいしか登校しないし、時間割をまともに持って行ったこともないので、そういうことは超越しているのかと思っていたのだが、そういう気持ちは残っていたのか・・・。

 

「いやぁ・・・でも、多分誰も、プン助が荷造りするとは思ってないよ。先生だって、一応荷造りは自分でって言ってるけど、荷造りが無理で来られないよりは、手伝ってもらっても来てくれた方がいいって思ってるって。大丈夫だよ~~~、そんな見栄張らなくても大丈夫だって」

「僕だって見栄くらい張りたいんだよ」

「まあ、そういう気持ちは大事だけどさ、この荷造りが自分でできると思われたら、今、遅刻しても忘れ物しても登校してるだけで、頑張ってるって思ってもらえてるのが、時間割もできるだろって思われちゃったりして、大変だよ?」

 

本来なら、自分でちゃんとやれ…というべきなのかもしれないが、家族そろってよくわからないアドバイスをしてしまう。

 

私が、出した荷物をニンタマがきれいにパッキングしたので、荷物は整然として美しい。

「頼んでもないのに、ニンタマの野郎が勝手にやりやがって…!」

と、毒づくプン助。

「そんなこと言わないでよ。ママがニンタマにお願いしたんだもん」

「私はね、お前の手伝いをしたんじゃないんだよ!ママが困ってるからママの手伝いをしたんだよ!」

「このズル休み野郎!」

「お前だってそうだろ!」

 

なんと、平和じゃない家なのだろう・・・、疲れる。

プン助が協力的じゃないので、荷造りは12時近くまでかかったが、私一人だったら、終わらなかっただろう。登校しないことは気になるが、ニンタマが家にいてくれてすごく助かった。

あとはプン助が無事に修学旅行へ行くことを祈るだけだ。

明日は7時に学校集合。

そんなに早く起きられるのだろうか?そして、やっぱ休む…と言いだすかもしれない。

そうなると、荷造りを手伝ったことが無駄になり、親である私のメンタルにも影響を及ぼすのだろうな…。

そうなっても、なるべくイライラしないで、淡々と過ごしたい。

できるかな…。というか、やっぱり修学旅行には行って欲しい。

参加しないで、「つまらない」と言うよりは、参加してから「つまらない」と言う人間でいて欲しいし、欲を言えば、少しでも「楽しかった」と思ってほしかったりする。

 

| | コメント (0)

53歳のヒヨッコ選手、卓球の試合に出て、あれこれ思う

卓球の試合。

朝8時45分にとある総合体育体育館へ。年代別の卓球の試合があったのだ。

昨年の6月に52歳にして、初めて試合に出て、かれこれ1年近くになる。年代別の試合も近隣の市がちょこちょこやっているので、三回目になる。

そうなると、

「あ、この前のめっちゃ強い人だ」

「掛け声がすごい人だ」

「悔しがり方がすごい人だ」

「試合中、セットとセットの間、ラケットを台に置いておかなければならないのに、私が手に持ったまま台を離れてしまったことを、本当はルール違反だからダメなのよ・・・と、注意をしながら教えてくれた人だ」

などと、なんとなく覚えている人が増えてきた。

 

試合が始まる前、同じ卓球チームの60代のお姉さま方と練習をした。ラリーが全然続かず、私が下手なせいで、相手の人の練習にならないのでは…と申し訳ない気持ちになったのだが、以前も、その申し訳なさを引きずって焦りまくって負けるメンタルのまま試合に臨んでしまったことを思い出し、ラリーが続かないのはおそらく私のせいなのだが、私のせいだけではないのだ!と、自己暗示をかけるべく頑張った。

 

私の出場する50代の選手は四十数名いて、4名ずつ11のブロックに分けられていた。ブロックごとに総当たりで試合をして、1位から4位を決め、1位と2位は上位リーグ、3位と4位は下位リーグとして、リーグ戦を行う運びらしい。

 

まずは、自分のブロックで最下位にならないことが目標。

50代の試合には三台の卓球台が振り当てられているのだが、11ブロックの全順位を決める試合を3台で行うだけでも、かなり時間がかかるなと気が遠くなった。

 

今まで、大概の試合には強い人もいるが、とりあえず経験してみたい・・・という私のようなヒヨッコ選手も数名紛れ込んでいる印象があった。なので、運が良ければ、私ど同レベルのヒヨッコ選手と対戦して、一回くらい勝てたらいいな・・・という淡い期待もあった。

だが、皆の練習している姿を見る限り、私のように体に軸がない感じにふひゃふにゃしたり、球を追いかけては追いつかずに、バタバタしたりしている選手は見当たらない。これは困ったことになった・・・。

だが、一人だけ、先月の年代別の試合で目撃したちょっと特殊な選手がいた。彼女は岩のようにドカっと立っていて、ほぼ動かない。サーブも、フォア、ミドル、バックと出す位置は変えるけど、一種類のサーブしか出さない。大概の選手は、ツッツキという下回転のレシーブを使ったりするのだが、彼女はツッツキもしない。ちょっとだけ曲がるけれど、上でも下でもない強めな打球ですべてを返球する。一見下手に見えるのだが、彼女のサーブのレシーブも、意外と癖があって返し辛そうなのだ。

「私が唯一勝てる可能性があるのは、彼女だけだろう…」

だが、高校時代も、その手の選手にあたって、ボロ負けした記憶がある。勝てそうだと、勝手に思い込んだ挙句に負けてしまい、苦い気持ちになるあのパターン。

どうせ負けるなら、圧倒的に強い相手に負けたい。勝てるかも…という相手に負けるほど、敗北感や悔しさは増し増しになるのだ。

ゼッケンで名前を見て、調べると、彼女は私と同じブロックだった。1試合目Wさん、2試合目Fさん、3試合目が彼女、Kさんだった。

WさんとFさんは、初めてみる顔で、顔だけ見ると、いかにも強そう…というオーラはなかった。あんまり強くないといいな…負けるにしても、1セットくらい取れたらいいな・・・。

そんな気持ちで、1試合目のWさんと臨む。だが、練習のフォア打ちを始めた瞬間に球の圧が強く、自分より段違いに上手いことがわかった。

そして、1セット目。なんと、11―0で取られてしまった。

私が弱すぎるのか、相手が強すぎるのかわからないが、0点で負けたのは初めてで、衝撃を受ける。2セット目と3セット目はなんとか1点ずつとれたが、どちらも相手のスマッシュミス。お話にならない負け方をしてしまった。ここ2週間ほど、自分としては随分練習したのだが・・・。きっとWさんは私の随分頑張った2週間の練習の数倍の練習を10年、20年単位でやってるのだろうなぁ・・・。試合が終わった後、お互いのラケットラケットを合わせて、「ありがとうございました」と、挨拶をする慣わしがあるようなのだが、Wさんの私に対する挨拶は、本当にそこらへんの虫に対するような、決して見下げるわけでもなく、存在としてカウントしてさえいない・・・という感じであった。

 

Fさんとの2試合目も、3-0でストレート負け。だが、こちらは11―6,11―3、11-5という、レベルは違うけれども、最低限、試合の体はなしていた気がした。サーブも、下回転のキレているサーブの後、無回転のロングサーブを出して、ミスを誘う・・・という試みがうまく行った瞬間もあった。それでも、やはり相手のスマッシュミスで得た得点が多かった。でも、ずうずうしいことを言わせてもらえば、自分がこの先頑張って少し強くなるとしたら、手の届く範囲内のような気もした。

 

そして、とうとうKさんとの3試合目になった。前回、Kさんを目撃していたことが、今日のこの試合のために伏線のようにさえ思えて来た。

ここをどう乗り切るかが、今後の卓球人生?いや、今後の人生にもかかわってくるような気もして来た。

実は、この試合の前に、KさんとFさんの試合を見て、その後、KさんとWさんの試合は、審判もやっていた。

Kさんは、Fさん相手には1セット目と2セット目は7点と、私よりも取っていたが、3セット目は2点で、ストレート負けしていた。そして、Wさん相手の試合でもストレート負けではあるものの、1セット目と3セットめは1点、2セット目では2点と、私よりも点を取っているのだった。

Wさんとの試合の最中、彼女は

「こんなのいつもの私じゃない!」

「球が見えてないんだよ!」

「ああ~、まけちゃうよ!やばいよやばいよ!」

と、ぶつぶつ呟いていた。

「いつもの私」という言葉がすごく気になった。

Kさんの「いつもの私」とはどのような状態なのだろう。彼女が私との試合で「いつもの私」になったら、私は負けてしまうのかもしれない。

 

Kさんとの試合の前に、3回フォア打ちの練習をする。やはり、Kさんの球は打ちにくい。普通に打つと、オーバーしてしまう。回転があまりかかっていないのに、勢いが強いので、こちらも余計な回転をかけずに、それなりに強く押し出すように打つか、いいタイミングをとらえて、きちんと下回転をかけて返すのがよいだろう・・・と、戦法を立てた。

ジャンケンで負けて、Kさんが最初にサーブ権を取った。カット(下回転)でレシーブしようとしたが、二本ともレシーブを失敗し、一気に二点取られてしまう。彼女のサーブはやはり返しづらい。私は下回転の短めのサーブを出す。彼女も二本ともネットに引っ掛け、レシーブミスをした。次の彼女のサーブもカットをしようとしたが、失敗したので、次は普通にはじくように打ってみると入った。だが、彼女も打ち返してくる。なんだかよくわからないラリーがだらだら続くようになった。強く打つとKさんは、結構な確率で打ち返してくるので、中途半端な強さでラリーを続けるほうが、私の得点になることがわかった。1セット目は11―8でなんとか私が取ることができた。

大体彼女の傾向が分かったつもりになり、次はもっと点を押さえて取ろうと思ったのだが、2セット目は、7-11で私は負けてしまった。やばい・・・このまま、負けてしまうパターンになってしまうかもしれない。冷静になって考えてみると、私は勝ち急ごうとして、いつの間にかだらだらラリーを続ける戦法をやめてしまっていた。そして、打たれたら、こちらも躍起になって打ち返していた。焦った気持ちのまま打ち返していたせいか、いつもだったら入るような球も全然返せなくなっていた。ここは、根気よくゆるい球を丁寧に返してだらだらラリーを続けようと、再度心に決めた。最初はKさんがリードしていたが、丁寧に緩い球を返し続けたら、彼女の方が焦って打ち込んでミスをするようになった。それでも、こちらがリードすると、彼女は追い上げてきた。3セット目はなんとか絶対に負けたくない!勝ちたい…という思いだけで、11―9で逃げ切るように3セット目を取ることができた。4セット目も油断できない・・・と、思っていたが、彼女は急に勝つ気がなくなったのか、ここはあっさり11―5で取れたのだった。

でも、勝利を喜ぶ気持ちには全然なれなかった。負けなくてよかった・・・という思いだけだった。よくわからないのだけれど、卓球だけではなく、あの局面で踏ん張れるかどうか・・・が、人生全般に関わっているような気がしたのだった。そこで踏ん張れない自分に会わないですんで、本当に良かった。

Kさんも「いつもの私」になれずに意気消沈しているかもしれないが、私にとっては、なぜなのか、理由は全くわからないが、今後の自分の存続に関わる局面になってしまっていた。

「助かった・・・」

下位リーグは、時間短縮のため、2セット先取した方が勝ち・・・というルールで進み、アッという間にストレート負けをした。相手のTさんは、その前に別のAさんという選手と対戦してぼろ負けするのを見ていた選手だった。Aさんとは、私も昨年の10月に一度試合をしたことがあった。本当に強い選手で、私はどのゲームも1、2点しか取ることができなかった。当時の印象では、近隣の市の50代の中では1,2位を争う強さだと思っていた。そのAさんにぼろ負けしていたTさんではあったが、明らかに私よりベテランなのはわかった。それでも、1セット目では4点しかとれなかったのが、2セット目では9点も取れた。自分としてはまあ、健闘したのではないだろうか。

 

そして、Tさんに勝って上位リーグに進んだAさんは、リーグの一戦目で私が今日一番最初に試合をしたWさんと対戦していた。そして、Wさんにストレート負けをしたのだった。Wさん、最初は全然強そうに見えなかったのだが、私が最強と思っていたAさんより、圧倒的に強かったのだ。後で結果発表を見て知ったのだが、Wさんは50代女子の部門で優勝していたのだった。

「そりゃ・・・0点とか1点とかしか取れないわけだよな・・・」

 

試合後、Wさんと挨拶をした時のことを再度思い出した。目の前にいるのに、一切視界にはいっていないかのような表情だった。

なるほど・・・戦国の世なら、武将が足軽の死体を見るような感じだったのだろう。

10月に試合をしたWさんは、挨拶の時には目を合わせてとりあえずは微笑んでくれたのだが・・・。

 

自分の試合を待っている間、他の選手の試合で飛んできた球を拾って渡すことが多々あるのだが、そういう時に、凄く丁寧にお礼を言う選手と、とりあえずお礼だけは言ってるけど、大分心無い選手と、お礼をいうどころか、こちらを見もしないで球だけ無言で受け取る選手がいる。

絶対とは言えないが、見もしないで無言で球を受け取る選手は、大体すごく強い。

礼儀のある無しではなく、それだけ集中しているのだろう。

私など、お礼を言うなと言われても、言わないことに耐えられずぺこぺこ頭を下げてしまう人間なので、逆に一切お礼など言わない人の方が清々しくてカッコいいようにも思えてしまった。本当に強かったり力があったら、とりあえずいい人に思われようとすることに余計なエネルギーを使わなくなれるのかもしれない・・・なんてことを考えた。

 

それにしても試合は練習よりも、動くわけではないのに、かなり疲れる。

ここ2週間、真面目に練習をしたせいで、股関節や座骨の調子が悪くなっていたのだが、帰りは普通に歩くのもままならなくなっていた。足を引きずりながら帰る。

来週は、少しメンテナンスをしよう。強くなることより、やり続けられる体でいることが、やはり一番だ。

| | コメント (0)

不登校の館

昨日、プン助の担任の先生から、電話があった。

「明日、3時間目くらいから登校するように言ってほしいのですが…」

とのこと。

聞けば、5時間目には年に一度のスポーツテスト。6時間目には修学旅行の班決めがあるとのこと。スポーツテストは1,2年の時はひどいものだったが、3年生くらいから活発になり、目に見えて能力が向上していた。それがうれしくて楽しみにしていたのだが、5年時は全く登校せず、結果はすべて斜線。6年時ではなんとかテストくらいは受けて欲しいなと思っていた。修学旅行は6月後半にある。だが、今の様子を見ていると、旅行も行かないのではないか・・・という気もしている。

「プン君は3時間目から登校すると約束はしてくれたのですが、それが無理でも5時間目のスポーツテスト、それも無理なら6時間目からだけでも登校してほしいんです。それも無理だとなったら、6時間目、班決めだけでもオンラインで参加してほしいので、ご協力お願いします」

「…わかりました。なるべく給食からだけでも行くように、伝えます」

そう言ったものの、全く自信はなかった。ご協力できるものならば、したいのだが・・・。

 

朝、5時に起きた時点でプン助は起きてゲームをやっていた。ゲームと動画の時間併せては一日3時間までプン助と旦那さんが決めていたのだが、早起きした場合は7時までの間は、その3時間にカウントしない…という変則的なルールが生まれていた。前はそれで早起きができるようになったのだが、だからと言って登校するわけではないので、ここ最近、結局7時になると二度寝をするというおかしな事態になっていた。二度寝は無し!と、いうルールも加わったのだが、「今のは二度寝じゃない、目をつぶっていただけだ」「いや二度寝だ!」という不毛な口論もセットで起き、疲れ果てて二度寝も8時半までは許容する…というダブルスタンダードな状況に陥っている。当然遅刻は当たり前のことで、給食前に登校したら、「頑張ったな」みたいな感じなのだ。

 

そんなプン助を日々みていたことと関係あるのか、昨年まで一人だけ早寝早起きをして、きちんと登校していたニンタマが、今年の1月くらいから、熱がある、ふらふらする・・・と、学校を休み始め、いろいろ調べた結果、起立性調節障害と診断される。

ニンタマが、普通に登校していたので、それまで、どんなにプン助が休んでも遅刻しても、それはプン助個人の特性・・・と思っていられたのだが、起立性調節障害と診断を受けようとも、ニンタマまでもが、休むようになってしまうと、やはり親に問題があるのではないだろうか・・・と、いう気分にもなって来た。

 

昨年度から、小学校も中学校も親がスマホアプリで、体温を毎日入力し、遅刻や欠席もアプリに入力することになっている。ニンタマが寝込んでいても、体温を測って、今日は登校できそうか、遅刻の感じなのか、欠席するのか、8時頃までに確認しなければならない。

「行けるかわからない」

と、言われると、なんて入力をしていいのか、とても困る。ニンタマの欄には、遅刻と入力をして、

「今日も頭がふらふらしているようで、起きられないようです。行けたら行くと言っていますが、欠席になるかもしれません。すみません」

といった文面を、毎日微妙にアレンジして、送信する。

プン助の欄には

「朝、起きていたのですが、まだ行く気力がわかないようです。すみません」

「昨晩、なかなか寝なかったので、今、どんなに起こしても起きる気配がありません。遅刻になります。すみません」

「今も、押し入れにこもって声掛けしても、返事をしないので、多分遅刻になるかと思います。すみません」

みたいな内容を、ローテーションで送信。

淡々と送信していたつもりだったのだが、毎日確実に「すみません」という謝罪を二件入力し、ほぼ毎日、担任の先生から、電話がかかってきて、「すみません」を繰り返していると、思った以上に、すり減るようだ。

「すみません」を「こんにちは」と、同じつもりで言えばいいのだ!と、切り替えたり、いい匂いのアロマオイルの匂いでリフレッシュしたりが欠かせない。

 

仕事をするときなど、不登校の館から脱出して、明るい気持ちで取り組んだりするのだが、先生からの電話で、5時間目までには登校させねば…というミッションができてしまい、今日は逃げるわけにもいかない。

 

30分置きに、プン助に

「先生と約束したんでしょ?」

「給食は食べるんだよ」

「スポーツテストの結果、ママ楽しみなんだけどな」

「たまには、給食くらい食べたら?」

などと、声掛けするが、ほとんど無視をされる。

次第にこちらも苛立って来て、

「なんで無視するの?」

「返事くらいしてよ、いくらなんでも失礼だよ」

「給食費払ってんだから、昼は給食食ってくれよ」

「そうやって、約束をやぶって、信頼を失い続ける人生を、自ら選択しているわけだね、君は」

「無視すんじゃねーよ!腹立つなぁ、もう!」

「そんなに一緒に住んでいる人をないがしろにするんだったら、もう無理だからさ、15歳までは面倒みてやるけど、あとはこの家出て一人でなんとかしろよ!もう、知らねーからな」

と、徐々に激しい言葉になって行ってしまう。

不登校の館から脱出するのは、自分がこの状態になるのが、嫌だということもあるのだった。同じ空間に居続けると、見たことのない鬼のような新キャラの自分が出てきてしまうのだ。

プン助は、時折、うなり声を上げる。ああ、先生から無理なミッションを授けられてしまったせいで、仕事は捗らないは、鬼キャラが出てくるは、プン助もますます意固地になってしまうは、悪循環になってしまったじゃねーか。もしかすると、私が脱出した方が、プン助の精神状態も悪化せずに、登校できたのかもしれない。

そんなこんなで、結局、昼になってしまう。

私が、奥の部屋にこもっていると、プン助とニンタマは楽し気に、昼食を勝手に作って食べている。覗いてみると、ニンタマは制服を着ている。

ニンタマの遅刻の連絡を入れた後、実際に登校したことは殆どないので、「登校する気になったんだ」と、少しだけ明るい気持ちになる。

だが、13時直前に急に、お腹を押さえて私のことろにやってきて、

「やっぱりお腹が痛いから、欠席にする」

と、報告に来た。

本来なら「大丈夫?」と、心配するべきなのだが、先ほどまでプン助ときゃいきゃいはしゃいでいた声が聞こえていたので、痛そうな顔つきまで、わざとらしく見えてしまう。

「あ、そう・・・。で、なに?」

と、不機嫌な対応になってしまう。

その勢いで、プン助に「スポーツテスト、行きなよ!先生と約束したんでしょ?約束したのに、行かないかったらウソつきになっちゃうよ!」

と、きつい口調で注意しに行ってしまう。

「先生は、そう言ってるけど、約束はしてないよ。それに僕は、元々スポーツテストあんまどうでもよかった」

というではないか。

 

カーっと頭に血が上る。だったら、なんで、昨日、そんな約束はしてない、僕は行きたくない!って言わないのだ!昨日じゃなくてもいい。今朝5時から13時過ぎまでの間、一言もそんなこと言わなかったではないか!

ギャーっと叫びたくなる。だが、冷静な自分もいた。

そうだった・・・昨日、先生から電話がかかって来た時点で、こうなることはわかっていたではないか・・・。本当は、こうしかなりえないことを、わかっていたではないか・・・。私がどんなに良い言い方をしたり、良い対応をしたとしても、(全くできてはいないが)プン助の中で、これは決まっていることが、私はどこかでわかっていたではないか・・・。プン助は一度だって、前向きな返事はしなかった。行かないのはわかっていた。私はただ、威圧したり、プレッシャーをかけたりして、「行く」という言質をとって、言うことを聞かせようとして、失敗しただけなのだ。

・・・徒労感。

 

「修学旅行も、行きたくないの?」

黙っているプン助。

修学旅行とか、運動会とかを楽しんで参加してほしい・・・というのは、ただの親のわがままなようにも思えてきた。自分がそこそこ楽しんで良い思い出があるような行事に参加しないのは、凄い損失のように思っているだけでそうではないのかもしれない。修学旅行を楽しまなかったり、拒否をする子がいたって、別に構わないのだ。それが困るとしたら、他の親たちと話すときに、全く話がかみ合わず、孤立感を覚えるというだけのことだ。ならば、孤立感を覚える場所に参加しなければいいだけのことだ。

そう思いながらもイライラが収まらない。

「こんなことなら、ママ、外に仕事しに行けばよかった。プン助のせいで、全然仕事がはかどらなかったよ」

言わなければいい余計なこととわかりつつも吐き出さずにはおられない。

「人のせいにしてるけど、それはママの個人の問題でしょ!」

正論を返され、ますます頭に来る。

すごすご奥の部屋に逃げ帰る。

スポーツテストのある5時間目が終わり、どうせ6時間目も、もう無理だろうと、オンラインでつなげようとするが、「6時間目にはいくから」とタブレットを抱え込んで、私に触らせないようにするプン助。

いつものように最後の15分くらいの登校をするのでは、班決めに参加できない。今すぐ行くか、オンラインでつなぐかしないと・・・と、説得するが、唸り声でこちらを威嚇するプン助。嫌になって、奥の部屋で作業をしていると、担任の先生から電話。

「説得していますが、学校行くと言いながら、なかなか行く気にならないようで・・・」と、へどもど言い訳をすると、プン助に替わってほしいと言われる。

先生「プン君、今から決めるから、すぐに来るか、オンラインで参加するかどっち?」

プン助「(聞こえないくらいの小声で)行く」

私「行くって言ってます」

先生「どのくらいで来られる?10分で来られるなら待つけど」

小さくうなずくプン助。

私「10分で行ける?」

プン助「(小声で)行くって…」

先生「どうする、プン君」

私「行くそうです」

先生「じゃあ、待ってるから、すぐ来てね」

電話が切れても、しばらくプン助は寝転がっている。先生がすぐ来てねと言っているのに、寝転がっている姿に気が狂いそうになる。

だが、まもなく

「ああもう~~~~~!!!」

と、叫び、プン助は面倒くさそうにランドセルを背負って、登校したのだった。

 

仕事がはかどらなかったが、15時から体育館で卓球場が解放されていて、人と約束をしていたので、体育館へ行く。全然卓球の気分ではなかったが、やはり体を動かす効果はすごい。

くさくさした気分は洗い流され、すっかり良い気分になり、帰宅した。

 

プン助はとうに下校して、遊びに行っていたが、旦那さんが、

「ああ、やっぱ、学校つまんなった!最悪だよ~~~!」

と、怒鳴りながら戻って来たそうだ。

 

夜、聞いてみると、

「面白くないのはいつものことだけど、ママが嫌なことばかり言うから、学校でも、誰とも話す気分になれなくて、ずっと気分が悪かったんだ!ママのせいだからね」

とのことだった。

「本当?ママはプン助のせいで、一日気分悪かったけど、卓球やったら、気分よくなったよ。プン助も、ママのせいで気分悪かったり、学校でつまんなかったら、友達と話したりして気分よくすればよかったじゃん」

と、言うと、

「ママは、そういうので気分よくなるかもしれないけど、僕はならないの、

一緒にしないでよ」

とのことだった。

 

いちいちごもっともなことを言うプン助に今日もタジタジだった。

|

ある春のレアな日

今日から、一応春。

 

昨日、期末テストが終わった。

 

1月末から、ほとんど学校を休んでいたニンタマは期末テストだけは受ける・・・と先週の金曜日から三日間登校した。

テストの翌日の今日、どうなるのかな?と、様子を見ていた。

一応、着替えて準備をして登校するつもりのようだが、今までも玄関まで行って、「お腹痛い」「ふらふらする」と言いだすこともあるので、まだわからない。

私が渡した体温計では、36度8分だったが、「別の体温計がいい」と、別の体温計を持ってしばらく姿を消した。そして、37度2分と表示された別の体温計を黙って私に見せた。

「行かなくていいよ」

と、言って欲しいのかもしれない。でも、黙っていた。

その後、玄関から出ようとする前に、2回ほどお腹を押さえて苦しそうな顔をして、何かを言いかけてはやめ、登校した。

 

「大丈夫」「しんどいなら、休んでいいよ」

などと、声をかけるべきだったのだろうか?

 

しかし、学年末テストの三日間、普通に登校したことで、ずっと休んでいた後より、違和感なく教室に入りやすくはなっているだろう。

休み続けてしまったことで、行きづらくなっているのであれば、今日はキツく感じても行けるタイミングで登校した方が気持ち的に楽になるかもしれない。

でも、本当に登校が無理なのであれば、行かない方がいい。

 

背中を押したほうがいいのか、止めてあげたほうがいいのかは、まだよくわからないが、本人が模索して学校との関わり方を決めていくしかないのだろう。

無理強いせずに背中を押す…のが良いのだろうが、なかなか難しい。

 

ニンタマが登校した後、家にはまだ寝ているプン助がいた。

常に遅刻が常態化しているプン助だが、水曜日は大好きな通級教室がある日。

毎日、通級だったら毎日行くのに!と、言うほど楽しみにしているのだが、昨晩、親が寝た後もしばらく起きていたプン助は中々起きられない。

 

何度起こしても、起きなかったのに、目が覚めた途端、「なんで起こしてくれなかったの!」と、切れ気味。

「パン食べる?」

「カレー食べる?」

と、面倒を見てあげている旦那さんに、罰を与えるかのように

「いらない!」

「食べない!」

と、怒鳴るのだった。

 

通級の連絡ノートに

「プン助君、タブレット持ってきてね」

と、書いてあった。

学校から支給されたタブレットは基本、毎日持参しなければならないのだが、ここ最近プン助は重いと言って、持っていかなくなっていた。当然、タブレット経由で出されている宿題なども無視している。

「いつも5,6時間目からしか行かないからって言っても、タブレットないと困らないの?」

と、聞いても

「困らない!」

と答えるだけ。

おそらく授業をまともに受ける気はないのだろう。こうなると何を言っても無駄なので、こちらもそれ以上言わなかったが、連絡ノートに書いてあった以上、持たせない訳にもいかない。

 

「通級の先生がノートに書いていたんだから、通級で使うのかもよ」

「違う、通級で使うわけないじゃん。多分担任の〇〇先生が、『私が言っても持ってこないので、通級の先生の方から言ってください』って頼んだんだよ、絶対」

なんと、鋭いのだろう。

私も薄々そうかな・・・と思ってはいたが。

 

「そうかもしれないけど、Y先生(通級の先生)が、わざわざ書いてるんだから、プン助がもっていかなかったら、Y先生が悲しむしさ、持っていきなよ~」

などと、苦し紛れの説得をすると、プン助はニヤニヤ笑って、

「かなしい~~~」

 

と、裏声で歌い始めた。

 

思わず吹き出しつつも、プン助の目を盗んでランドセルにタブレットを忍び込ませておいた。

だが、玄関から出ようとした瞬間、プン助は立ち止まりランドセルを開けて、

「重い!」

と、タブレットを出してしまう。

 

「お願い、持って行ってよ」

「やだ!」

「Y先生が、ノートに書いてるのに、持ってこなかったら、それはプン助の失敗じゃなくて、ママの落ち度だって思われる!ママがダメママだって思われるの嫌だから、ママの為にも持って行ってよ~~お願いお願い」

プン助に正論は効かないので、情に訴える方法しか思い浮かばない。

「やだ~!!!」

「ママのせいになるの嫌なの~!ママのお願い聞いてよ~!」

「やだ~~!」

などともめていると、旦那さんが

「お母さんかわいそうだろ!持って行ってやれよ!」

と、参戦してくれた。

本当はそこじゃないのだが、旦那さんが来てくれて、助かった。

「だって重いんだもん」

「じゃあ、他のもの出せ。お前どうせ、筆箱とかつかわないんだろ!筆箱出せばいいじゃん」

旦那さんが、筆箱を出す。

「筆箱は通級で使う」

プン助は慌てて、筆箱をランドセルに戻した。

「じゃあ、他のもの出せよ!」

旦那さんは、算数や漢字の教科書やドリルやノートをドサドサ出して、タブレットと筆箱だけをランドセルに入れた。

旦那さん、なんて大胆なんだ…。

「ほら、軽くなっただろ!」

「……」

プン助はまだ不満気で何か言いたげだったが、諦めて玄関から出て行った。

 

一件落着…と言った感じに、渋い笑顔を浮かべている旦那さん。

 

よくわからないが、とりあえず一心地ついた。

 

「数年前まで、子供が学校に行ってしばらく家にいないって言うのが、当たり前だったけどさぁ、二人とも登校してるのって、久しぶりだね」

「そうだね」

「すっごいレアじゃん、今日」

「本当だね」

 

などと言い合い、二人ともPCに向かってお仕事タイムに入った。

久々に平和だ。

子供が普通に登校するって、子供の為じゃなくて、親の為なんだなぁと実感した。

そう思うと、少し申し訳ない気持ちになったが、今度いつあるかわからないレアな日かもしれないので、申し訳ないとか思う無駄に時間に費やすのはやめようと思った。

|

土砂降りの中卓球へ…

雨の中、卓球へ行く。運動不足のニンタマが、散歩のついでに体育館へついてきた。

 

卓球をするわけでもない娘を連れて行く…というのは、ちょっと恥ずかしいけれど、何かウキウキもする。

「うちの娘なんです~」

「中一なんです~」

「13歳なんです~」

「私よりも大きくて~」

と、誰にも聞かれもしないのに、べらべら話してしまう。

 

プライベートの話など殆どしたことがない人達に、いきなりそんな話をされても困るだろうとはわかりつつも、止められない。

 

「大きいですね」「何歳ですか?」「高校生くらい?」などと、聞かれることを想定して、聞かれる前から、べらべら話してしまうので、皆さんはもうコメントをすることもできず、

「あ~」

「大きい・・・ですよね」

と、言う事しかできないのも無理はない。

 

そんなことにぼやぼやしていたら、一緒に練習する相手や台の確保も遅れてしまい、しばらくただ壁際で、練習できる人が来るまで待つ。

 

今日が初めてという、韓国から来た方と練習をすることが決まった途端、いつも練習しているAさんが来た。

 

今練習している人達に台の半分を使わせて下さいと頼んで、韓国の人とAさんと私で練習をすることに。

私はハーフで台を使って練習をするのが、とても苦手。ぶつかるのでは?と、怯えすぎて、動き回ることもできず、オタオタしてしまう。

ニンタマにいい所を見せたいのに、これでは

「ママ、下手くそ…ダサ…」

と思われてしまう。

まあ、下手くそでダサいのは事実なので、仕方がないのだが実力よりも上に見せたい気持ちが働いてしまう。

 

そうこうするうつにニンタマは

「つまらないから、帰るね」

と帰ってしまった。

 

ニンタマが来ていることにウキウキしていたが、実力よりも上に見せようという邪念が消えたので、急にのびのびした気持ちにもなった。

 

韓国の人に

「私、ちょっとだけ韓国語勉強したりしてるんです」

と、アピってみるものの、薄い微笑みを浮かべられたのみ。

韓国人だと話した途端に、そんなことを言う日本人には頻繁に会うであろうし、

だからと言って、話すこともないのだ。

雑魚キャラしか話さない薄っぺらいことばかり話すなぁ、私。

 

しかし、いいのだ。雑魚も生きているのだ。

などと思いながら、黙々と練習。

 

すると、ちょっと危ういな…と思っていた股関節がちょっとイヤな感じになって来た。

今週は気温が急に下がった影響もあるのか、週の初め頃、やたらと肩甲骨が固くなってしまい、どんなにストレッチをしても、息苦しい感じが抜けなかった。

そのまま頑張ってストレッチを続けていたら、水曜日頃には肩甲骨はマシになったのだが、腰というか、尻の横が縮こまってどんなに伸ばしても、固さが取れなくなった。

ヤバいと思って、近所のマッサージに行ったが、ほぐれて気持ちが良かったものの、何か股関節のハマりがおかしな感じになってしまったのだった。

騙し騙し動かして良くなることもなるので、あまり気にせずにいたが、転がった球を拾う動きをする度に、ピリッと左の股関節に痛みが走る。

雑に球を拾おうとせずに、ちゃんとスクワットというか四股を踏むように丁寧に腰を落として球を拾うと大丈夫なのだが、ちょっと危うい。

 

その後、別の方と練習。久しぶりに練習に訪れたお友達とそれなりに楽しく練習をやる。

今日はとりあえず、騙し騙し練習をして、戻ってから股関節周りのメンテナンスをしっかりやろうと思っていた。

だが、いつも教えてくれるありがたい先輩が、

「なんでそんなに下手なの?ちょっと見てあげる」

と、練習を見て下さることになってしまう。

見て頂けるのはありがたいのだが、今は心が守りに入ってしまい、アドバイスを前向きに実践することが出来ず、ろくにお礼も言えないまま、言い訳をいいまくって練習を終える。

 

来週の火曜日は遊びでだが、ダブルスの試合なのだ。あまり無理をする訳にもいかない。

 

土砂降りの中、帰宅。

「ママ、思ったより上手だった」

と、ニンタマに言われ、予想外のコメントにホクホクする。

 

なんとしても日曜日、月曜日の間に股関節を治したい。

ダブルスも大事だが、今は稽古中でもある。

ちゃんと直さないと、常に足を引きずった設定のキャラになってしまう。

しかし、いつも良い状態が続くと、もう治った…と思ってしまうのだが、基本的には治るということは無いということを忘れてはいけない。

 

数年前に両臼蓋形成不全という、股関節のハマりが浅い状態であることが判明したが、これは治るものではない。

若い頃は筋肉の支えがあったので、なんとかなっていただけなのだ。

デスクワーク中心の生活になって、筋力が落ちてしまってから、本格的に痛み始めた。

筋力が落ちたことで、反り腰が悪化し、軽い脊椎管狭窄症にもなってしまい、メンテナンスを怠ると、あちこち痛くなってしまう。

 

お仕事や遊びや怠けたい願望に気を取られたり、ちょっとさぼっても、体の調子がよい時期が続くと、すぐに「もう、大丈夫」って思ってしまうのだが、お手入れというかリハビリはちゃんとしないといけない。

 

痛みがひと段落するまでは禁酒だな・・・。

早くよくならないと、飲めないので、飲めるようになるためにも頑張らねば。

しかし、このメンテナンス的な筋トレは本当にやった感のない、面白くない動きばかりなのだ。

根性で沢山動き回ればいいのならば、むしろ楽なのだが、それはむしろ体を痛めてしまう。

つまらなさや地味さに耐えるのは、結構な苦行だったりする。

このつまらなさや地味さの面白さを見出せるようになったら、きっと勝ったも同然なのだ。

だが、一体何に勝つのかは、さっぱりわからない。

 

 

 

|

慣れ親しんだオタオタする人生

稽古前に、早めに家を出て、カフェなどで仕事をする予定だったが、いざ家を出ようとしたら、PCの充電がゼロ。

私が作業をしているテーブルの下がプン助の巣のようになっていて、そこでYouTubeを観たり、漫画を読んだり、なんなら食事までしてしまうのだが、その時プン助の足が私のPCの電源コードに当たって、抜けてしまうということがよくあるのだ。

仕方なく、稽古前ギリギリまで、家で作業。

早めに稽古に行くつもりが、またまたギリギリになってしまう。

稽古場へもうすぐ着く…という時に、今度はプン助の担任の先生から電話。

 

「学校や授業に積極的になれない感じがある中、毎日少しでも登校頑張ってくれてありがとうございます」

先生のお礼がもう、無理やりいい所を拾ってくださってる感じで、本当に申し訳ない。

プン助は、登校をしても算数以外は、殆ど授業に参加していないらしく、時々人の注意を引くために、誰かのシャーペンなどを取っては追いかけっこになっている…とのこと。

「それは、欲しくて取るっていう感じなのですか?それとも、ちょっかいって感じなのですか?」

「ちょっかいですね」

欲しくて取る…というのではないところで、少々安心しつつも、ちょっかいで人のものをとるのも困りものだ。

「生徒達から、何度か報告を受けていて…」

何度も、報告を…。わかってはいたが、本当にクラスの問題児なのだな…。

学校がつまらないのだろうが、退屈さは一人で耐えて欲しいところでもある。

「学習面も、前はドリルとかやって来てくれたのですが、最近はそれも全然やらなくなっていて」

「学校のものが全て嫌みたいなので、家でも別のドリルを渡したりしていたのですが…」

「別のドリルでもいいです。別のドリルを持ってきて学校でやってもいいので、ちょっとずつ学習をして行けないでしょうか?」

え?別のドリル持って行っていいの?先生、どこまで譲歩してくれるのだろうか。しかし、プン助は載ってくれるのだろうか…。

 

気持ちを切りかえて、稽古。

始めての本立ち。

 

この本立ちが一番苦手。相手を見たり、また本を見たりをやると、一体どこを読んでいたのか分からなくなったり、何かとても不自由なのだ。

とっとと、セリフを入れなければならないのだが、うろ覚えで立って迷惑をかけるのも心配で、スタンスが定まらない。早く口から勝手に出るような状態にしたいのだが、最近ちょっと認知に自信がない面もあるので、30代のころのように体に染みる状態になるのか、ちょっと心配。

まあ、心配するくらいならやれよという話だ。

 

作業しようと思ったら、PCの電源が足りず、家でやっていたら、遅刻しそうになり、慌てているところに、先生からの電話、そしてもう少し準備してから臨もうと思っていた稽古でも、オタオタ…。

若い頃は、何かが整えばもう少しちゃんとやれるはず…と思っていたが、もう少し整うことがないままの人生なのだろうなぁ。

一々オタオタしない人間になりたいと思っていた。

でも、もう慣れ親しんだオタオタなので、いつものことだ…とオタオタしながらも、自己嫌悪を引きずらなくなって来た。

これが、いいことなのか悪い事なのかはわからないが、残り時間が少なくなっていく中、無駄に凹むのも効率悪いっていうことなのだろう。

 

|

ものすごい久しぶりの声のお仕事

ずっとやりたいな、ツテがないかな~と思いながら、チャンスがなかったのだが、ものすごい久しぶりに声のお仕事を頂けたのだった。

 

どのくらい久しぶりかというと、今、13歳のニンタマがお腹にいた時にラジオCMのお仕事をしたのが最後だった。

 

自分でヴォイスサンプルなどを作ればよかったのだが、子育て疲れを言い訳にして、エントリーするのも怠っていたので仕方がない。

 

だが、凄い久しぶりな昔舞台でご一緒して、今はかなり大活躍している人になっているお友達から連絡が来て、なんだろう?と思っていたら、そのお友達に事務所の方から、声のお仕事の紹介をしていただけたのだ。

 

不思議なこともあるものだ・・・と思いつつ、声の仕事は大好きだったので、ホクホクしながら、しかし十数年ぶりなので、若干気後れしながらスタジオに向かったのだった。

 

現場には、私が先日今年の夏頃に観たお芝居で素晴らしい演技をされていた素敵な役者さんがいることもわかっていた。

その役者さんは、私の旦那さんの劇団SYOMIN'Sの公演を観に来てくださっていて、お芝居自体を凄い褒めて下さっていたと旦那さんから聞いていたが、その公演も2019年と3年も前のことで、恐らく覚えていらっしゃらないであろう。

 

待合室でその役者さんを発見して、ご挨拶したが、非常に丁寧な対応をしてくださったが、覚えていらっしゃらないと確信した。ちゃんと覚えて頂けるような、印象的な演技をできていないとダメだなぁ、自分。

 

そして、収録。

その役者さん以外にもプロの声優さんが数人。ディレクターさんともご挨拶。すると、そのディレクターさんが、十数年前にお仕事をご一緒したことがあり、その経緯で今回、人づてに私にお仕事を依頼してくださったことが分かった。

恐らく、あの仕事かな・・・?と、おぼろげには覚えているのだが、当時同じ事務所にいた他の役者数人と一緒に出ていて、他の役者が何をやっていたかはなんとなく思い出せるも、自分が何をやったかが全く思い出せない。

そして、そのディレクターさんは、とても感じが良くて素敵な人だった。こんなに素敵な人なら、絶対覚えているはずなのに・・・と、自分の頭の耄碌ぶりにも驚いた。

しかし、なんとありがたいことだろう。

とはいえ、他の人は皆プロで、私は十数年ぶりなので、最早本当に色々衰えてわからなくなっているはず。しかし、卑屈になっている場合ではない。シレっと堂々とするのだぞ!と自分に言い聞かせる。

 

プロの皆さんの声は凄い。普通に話しているのに、声の情報量が凄く、深みが半端ない。温かみや、十数年一緒に過ごして来た情みたいなものなどが、すーっと伝わる。「凄いなぁ」

と、感心しつつも、自分もなるべくそこに近づけるべく、頑張る。

とはいえ、結局、いわゆるいい声で勝負はできないので、台本に書かれた内容に集中。ディレクターさんは明らかに褒めて伸ばすタイプの方で、委縮しないでのびのび読むことが出来た。

 

休憩中、ご一緒している役者さんに、先日観たお芝居の、あの役が本当に素晴らしかった・・・、その前に観たお芝居も凄く面白かった・・・ことなどをお伝えすると、

「え?お芝居やられてる方なんですか?」

と、聞かれたので、

「はい。宝船という劇団をやってます。でも、夫も劇団『SYOMIN'S』

っていう劇団をやっていて、そこに出たりもしてます」

と、話してみる。

「え?それ、僕観てますよ!あれ、面白かったですね~~~」

「あ、ありがとうございます!」

よかった、観たことはちゃんと覚えて頂けてたんだ!

「えっと、アナタは…それには出てらっしゃらないですよね~」

「あ…出てます。主人公の奥さん役で…あ、でもわからないと思います~」

「あ…大変失礼しました」

「いえいえ、全然!」

と、やはり覚えていらっしゃらなかったのだが、それ以降会話が弾み、休憩あけた後はとても楽しくやれたのだった。

 

収録が終わると、ディレクターさんもクライアントさんも、収録がうまくいったことをとても喜んでいただけた様子で、心底ホッとした。

 

私も、今後お仕事をご一緒した方のことを忘れないようにしなければ。

そして、ご一緒した方にも覚えて頂けるようにしなければ。

覚えていただけてなくても、しゅんとしたり心を閉ざしたりしないで、思い出してもらう努力もせねば…なのだ。

 

今日は、そういう意味では、良くできた方だった。お仕事が楽しかったからだろう。

|

稽古で本読み&雑談

「インディヴィジュアル・ライセンス」稽古。

 

本読み。

有馬さんと環さんは本番間近ということでお休みだったが、参加しているメンバーで本読みの後、それぞれの共通認識を探るべく色々お話をする。

それぞれなんとなく、家族の話などをする。

 

私自身、自分が育った家はかなりイレギュラーで特殊な方だと思っていたが、皆の話を聞いていて、人それぞれにイレギュラーで特殊な育ちをしているのだな…と、実感した。

でも心地良いのは「家族っていいですよね」「やっぱり家庭が一番ですよ」みたいな人が一人もいないことだった。

 

そういうこという人、苦手…。

言われたら、

「そうですよね~」

って絶対答えるけど。

|

卓球の試合に出た!

卓球の市民大会。

朝、9時から集合。

予想では適当に組まされて、負けたら敗退で終わり。

その後、ちょっとした敗者復活戦などがあったりするかもしれない…みたいなイメージだったが、全然違った。

 

参加者がAからLの12チームに振り分けられ、チームごとに団体戦という形をとることになっていた。

1チーム4人のチームと5人のチームがあった。一つの試合が5人の個人戦で、3人以上勝ったチームが勝ち。

4人のチームは、誰かが2回試合をすることになる。

今年は、参加者が多いらしく、12チームを籤引きで二つに分けて、その中で総当たり戦をするという。

私はKチームだった。メンバーはなんとなく顔を知っているという方が二人、初対面の方が一人。

団体戦で殆どよく知らない人と組むことになるとは、思いもよらなかった。

 

その方式に異存はないのだが、困った事情があった。

実は一昨年、入会しないかと言われて、一度入会する流れになっていたとある卓球クラブがあり、練習に参加しようとすると、いつも主宰の人の体調が悪いとか、家族の体調が悪いなどの事情で、その日は無理…と断られていたのだった。そして、一度も練習をさせて貰っていないのに、試合に出る為に登録料を支払う必要があるなどと言われ、不審に思っていたところ、今の卓球クラブに拾って貰った経緯があったのだが、結果的に入らなかったクラブの主宰の人が、今日の大会に来る聞いていたのだ。

仮にその主宰の人をXさんとするが、そのXさんは、色々な人を勧誘してそういうトラブルになっているらしい。私が入会したクラブにも同じような思いをした人が何人もいたのだった。

一昨年、一度入会するお話がありましたが、お断りさせてください…というメールを出したのだが、なんどやめたいと伝えても、

「保留にしましょう」

「とりあえず一旦休会と言う形に」

といった返信が来た。

「保留ではなくやめたい」

「休会ではなく、練習もしていないので入ったつもりもない」

と、返したりしていたのだが、そのまま返信が途絶えたかと思うと、しばらくして、また

「他のクラブに入らないという約束をしてくれたら、やめることも検討します」

「会って話をしてから、他のクラブに入らな約束をとりつけなければ認めない」

みたいな連絡た来たりもして、その都度恐怖を感じていた。

「他のクラブに入るか入らないかはそちらとは無関係のことです」

「会って話をする時間を取るつもりは一切ありません」

と、返信をしても、

「体調が悪い」

「迷惑メールフォルダーに入っていて、気付かなかったけれど、何か返信をしましたか?」

みたいな内容の返信が来たりして、それ以降、こちもXさんのメールをブロックしていた。

そのXさんが来ることは事前に聞いていたが、Xさんは男性だし、そもそも試合で当たると思っていなかったのだ。

だが、当日、試合は団体戦で男女混合だと判明。

 

運よくXさんと同じチームになることは免れた。

だが、Xさんのいるチームと当たる可能性があるのか・・・。

 

というか、個人戦でXさんと当たる可能性もあるではないか?!

当たらなかったとしても、Xさんが出ている試合の審判をする可能性もある。試合に出ると言っても、ルールもまだあまり理解していないのに…。

 

やばい…怖い怖い怖い怖い。

 

12チームを二つに分けて、総当たり戦になると聞いた時、せめて別々なブロックに別れるようにと祈ったのだが、抽選の結果、まんまと同じチームになってしまった。

ガーン!

 

その後の試合予定が発表される。

全部で五回、団体戦をするのだが、その四回戦目にXさんのチームと当たることが判明。

 

団体戦は普通、最初に強い人が来る。私のような下手くそは4番目、5番目になることが多いので、強いXさんとは一緒にはならないのでは?と思ったが、我がKチームのリーダーは公平な方で、ジャンケンでチーム内で1番から4番までの順番を決めた後、最初の試合での1番は次の試合では5番に、2番は次の試合では1番になるように・・・といったローテーションを組んで、強かろうが、弱かろうが平等に出場することになったのだった。私は4番だった。

 

四回戦目で、Xさんと試合で対戦してしまうかもしれないぞ。

 

しかし、別に何も後ろ暗い事はしていないので、当たったとしても、ビビる必要はないではないか…と、何度も自分に言い聞かせるも、ドキドキするやら、不安やらで落ち着かない。

 

まあ、死ぬ訳じゃないし、なんとかなるだろう。

 

とりあえず、四回戦目までは、気にせず粛々と試合をするのだ!

 

一回戦目。Dチームとの試合。

私の対戦相手はよく練習で一緒になる、凄い上手なNさんだった。

「うそ!Nさん相手か…終わった・・・!」

市民大会って、初心者も嬉し恥ずかしって感じで参加する、もっとのどかなものだと思っていた…。

案の定、3ゲームでストレート負け。

だが・・・

13―11、13―11、12―10

という、どれもジュースに持ち込んで負けたのだった。

実は、1セット、2セットは、6-9くらいで勝っていたのだった。自分が9点を取って、「もしかして勝てるかも?」

という気持ちになった後、そこから必ずNさんに持ちなおされての負けだったのだ。

あんな上手なNさんにここまで競るとは思わなかった。

でも、9点まで取ってから、負ける・・・ということに、凄く大きな意味を感じた。

Nさんの方が圧倒的に上手いのだが、これは勝てる可能性があったのだ。その可能性をつぶしたのは、自分なのだな・・・と思った。

 

二回戦目。Aチームとの試合。

 

11-2、11-5、11-6のストレート負け。

対戦相手は10代の男の子。

部活でガンガン頑張っている世代であり、圧倒的な実力差。相手がかけているサーブの回転も何もわからなかった。勝てる見込みは全くなく必然的な負け。

でも、1セットから3セット目まで、得点をちょっとずつ上げられたのでヨシ!

 

三回戦目。Gチームとの試合。

8-11、11-9、9-11、11-6、9-11で、なんと3セット取得して勝ってしまった。

対戦相手は明らかに私よりも上手な人で左利きだった。あーまたうまい人に当たってしまった…と思ったのだが、まさかの勝利。

「嘘でしょ?」

と、全く腑に落ちなかったが、めちゃめちゃ嬉しい。上手な人でも、相性というものがあるようで、相手の人にとって、私はやりにくいタイプだったようだ。

その人は、凄くいい人そうだった。家族や仕事場でもなんとなく嘗められてしまうような印象だった。

 

休憩中、観覧席でまだ試合をしている人達を見ながら、ごはんを食べた。

その時、私が恐怖を感じていたXさんが、最初に試合をしたDチームの中の20代の若者と試合をしてていた。

Xさんはメールでは「足が痛い、膝の手術をしなければならないのだけど…」みたいなことを執拗に書いていたのだが、ものすごい力強い踏み込みで、バンバン打ち込んでいる。卓球講習会みたいな会場で数回練習をしたことはあったのだが、その時は足も引きずっていたし、卓球歴は長いもののそこまで強そうに見えなかった。だが、今日のXさんは凄い。

会場の中でも群を抜く上手さで、凄まじく強い。膝が悪そうには全く見えない俊敏な動き。

しかし、相手の若者(以後Mさん)も、ものすごく強かった。

ついついMさんを応援してしまう。

観覧席は皆その試合に釘付け。

「Xさんも指導者だから、負ける訳にはいかないわよね」

「M君に勝って欲しい~」

そして、接戦ではあったが、Mさんが勝ったのだった。

Xさん、屈辱だろうな・・・。

 

次に対戦する人、可哀想だなぁ・・・。

 

ん?

次に対戦するチームは私のいるKチームだ

さる筋からの情報によると、Xさんのチームは4人なので、Xさんは毎回1番目5番目に出ているという。ウチのチームのようにローテーションで順番を変えていないのだ。

ん?

私は一回戦目の時は4番目だったのだが、次の試合は4回戦目。1番目は私だった。ウチのチームも4人しかいないので、必然的に私は1番目であり5番目でもあるのだ。

 

やばい…。

Xさんと2回も当たってしまう!!!!

怖すぎる。

Kチームのリーダーに事情を説明すると、試合の一回は回避させてあげられるけれど、2回とも回避は難しいそう。

結局私は1番目と4番目の試合に出ることになり、5番目の試合はリーダーの人が変わってくれた。

観念して一度は試合をするしかない。

四回戦目。Lチームとの試合。

とりあえず、それまでの経緯については一言も話さず、初対面のようにふるまう事にした。ちょっと練習をしてから、普通に試合をした。

結果。

11-1、11-1,11-2

のストレート負け。

しかし、かなりラリーは続いた。Xさんも、私の甘い球はスマッシュをしてきたが、下手くそ相手に、意地の悪い凄いサーブを出したりはしなかった。ともすれば11-0で負けそうなところを絶対一点だけでも取ってやると、喰らいついてやっとこさという感じ。ビビって実力以下の試合をした訳ではないので、ここはよく頑張った気がする。

噂では、Xさんが登録料を巡って揉めた相手を捕まえては、長々話をする・・・と聞いていたが、そんな気配もなかった。

 

その後、4番手として、Tさんとも試合。Tさんは、初めての試合に出場した6月には、チームメイトだった人で、70代なのに、ビックリするほど上手で強い人。

勝てる訳ないじゃんと思いつつ、対戦。

11-6,12-10、9-11、11-13、11-6

2セット取ったけれど3セット取られて負けてしまった。

まさか、Tさん相手に、2セットもゲームを取れると思っていなかったのだが、それでも、勝てる道筋がないわけではなかった気がした。

実力差では明らかに負けているのだが、精神状態で勝ちに行くエネルギーが欠けているというか…。

 

五回戦目。Iチームとの試合。

いつも練習を一緒にしているKさんが対戦相手。Kさんは、重いドライブをかけて来るタイプでいつもフォア打ち練習では撃ち負けている。なのだが・・・

3-11、7-11、4-11

で、ストレート勝ちをしてしまった。

我ながら、びっくり。

Kさんはいつも、腰が低くとてもいい人であり、

「カットマンですか~」

「カットマンは皆、やりづらいって思いますよ」

と、よく私に話していた。

本来のKさんは、攻撃力も強く実力は私よりずっと上手なのだ。勝てた理由としては、カットマンへの苦手意識が強すぎて、様子を探るような返し方をしているウチに、Kさんがペースを崩してしまった・・・ということにあるのかもしれない。

 

これで総当たり戦は終わり、試合終了かと思いきや、下位のリーグ戦、上位のリーグ戦もあるとのことで、この後も試合をすることに。

 

六回戦目。Hチームとの試合。

なんと市の卓球連盟の会長さんと対戦することになってしまった。開会の挨拶などをしていた、重鎮の人。

重鎮とはいえ、負けるに決まっていると決めつけず、落ち着いて頑張るしかない。

そして、11-5,11-4、11-5でストレート負け。

でも、会長さんもカットマンだったので、一番長くラリーを続けられた。

「もっと攻撃したほうがいいよ」

と、アドバイスを頂く。

七回戦目。

1回戦目で対戦したDチームと再度当たってしまった。

対戦相手は昼休みに目撃していた、先ほど、Xさん相手に勝ったMさん。

「嘘でしょ~~~~Xさんに勝った人と~~~」

と、ビビりまくる。Mさんは見るからに、動きが普通の人とは違う。上手い人オーラが半端ないのだ。

ところが・・・11-7,11-6、11-6と、ストレート負けではあるが、Xさんとの試合よりは大分点が取れていた。

嬉しい。

 

Xさん相手には11-1、11-2などで負けまくっていたのに。Mさんも非常にいい人そうな雰囲気だった。

 

7試合中、2試合しか勝てなかったのだが、上手だから勝てる訳でもなく、相性やら、色々複合的な理由があるのだなと思った。

 

高校の部活で卓球をやっていた時、自分より弱い相手に負けること、自分より強い相手に勝ててしまうことについて、よく考えていた。

すっかり忘れていたが、最初の一年間は明らかに自分よりも実力的に下手そうな相手にも負けていた。それが、1年間登校時は毎日1時間早く登校して朝練、早弁して昼休みにも昼練・・・という生活をした後、明らかに下手な相手に負けることはなくなった。自分より凄い強い相手には勝てないが、ちょっと上手でちょっと強い相手には、勝てるようになった。多分、試合時のメンタルが鍛えられたのだ。

それでも、ジャンケンのグーチョキパーのように、相性はあって、自分がいつも負けてしまう相手といつも勝てる相手同士が試合をしても、いつも負けてしまう、私にとっては強い相手の方が私にとって弱い相手に負けてしまったりする…ということもある。

 

グダグダ述べてしまったが、試合は面白い。

卓球を再開した頃は、運動が定期的にできればいい、試合みたいに精神が疲れることはしたくない…と思っていて、クラブ内で遊びの試合をやったりするのもちょっと苦手だった。だが、今年6月に初めて試合に出て、今日で二度目。苦手なのは相変わらずだが、ものすごい快感を味わえる瞬間が何度かあった。

強くなりたい・・・。

そういう気持ちがちょっとだけ芽生えてしまった。

 

しかし、仕事が大変な時や、子供問題にヘトヘトな時もあり、この思いを育てていくのは中々難しい。

高校生の頃のように頑張ることは絶対にできない。

 

無理をすると続かない。細々とでいいので、最低限の練習を続けられるといいな。

 

後で聞いたが、指導者などをやっている人は皆試合には、ちょっとだけ出る…というスタンスを取っていた。

Xさんのチームは結局優勝したのだが、一人で全試合2回も出るのは異様なことだったらしい。

確かに私が対戦した市の連盟の会長さんは、ちょっとしか試合に出ていなかった。

私のチームのリーダーさんも、チームの中では一番強い人だったが、一人で何度も出る・・・ということはしていなかった。

「あの人は、全く周りが見えてないのよ。今日の様子を見て、凄い練習をしてきてるな…とは思ったけど、毎回自分が2回も出たら、勝つに決まってるじゃない」

と、周囲の人はドン引きしていた。

 

とはいえ、今日Xさんが来ることを覚悟の上で、試合に出ることにしたのだが、逃げずに参加して良かったなと思った。

一日中、Xさんをそれとなく避け続け、対戦した時も、初対面のようにふるまい、Xさんから、「まだやめたと認めていない」「他のクラブに所属することも認めない」などと言われる隙を見せないように過ごした。例え、声をかけられたとしても、「そんなことを言われる覚えはない」と、対峙する覚悟もしていた。

 

結果何も言われず、ホッとしたものの、もしかするとXさんはこちらのことは最早すっかり忘れていたのかもしれない・・・とも思った。色々な人に声をかけていて、最早記憶にもないか、記憶はあったとしても、最後に直接顔を合わせたのは1年以上前なので、顔など覚えていなかったかもしれない。

 

そうだとしたら、相当の覚悟で試合に臨んだり、一日ハラハラドキドキしていたのはただの無駄だったということだ。

 

私が自意識過剰に大騒ぎしていただけなのかもしれない。

とにもかくにも、怯えず試合に参加して、ちょっと世界が広がった。良かった良かった…ということにしよう。

|

«体操教室体験